【EXVS小説】エクストリームVS後編【頂きもの】 作・カルマさん
GAデータに影響が出るかもしれないが、仕方ない。アラートが鳴り、軋みが走る機体を起き上がらせてこちらも極限進化を発動させ、機体各部をオレンジ色に発光させる。
「やっぱり本気じゃなかったか!ならここからは俺も本気の本気!全力でいかせてもらうぜぇ!」
「円環戴く希望の極光(ディバインシュート)!」
そこからすぐにヴァリアブル・ライフルから出るビームをアリス・ファンネルで増幅、加速させて放つ。
「ふんす!」
【ゼノン・フェース】は展開した脚部のスラスターをフルに利用してさっきより速い、本当にMSかと思いたくなるような、それほどの超高速で移動し、それを回避する。
「ぶっ壊れろぉぉぉぉぉ!!」
「くそっ!」
その加速から繰り出される【ゼノン・フェース】の回転蹴りを同じ回し蹴りで受け止めた。
「ぐっ……」
(流石格闘進化の極限、同じ蹴りでもこっちの方が損傷が大きいか……でもっ!)
「たとえ、今は届かなくても!」
ぶつかり合った左足がこちらだけ嫌な音をたてて火花を上げ、操作が効かなくなったのはこのさい無視してそのままコンソールを手で素早く操作して飛び退く。
「なっ、これもファンネルか!?」
それと同時にビームを発進させたファンネル・ソードと言ってもいいものを射出させ、ゼノンの装甲を切り刻ませる。
「くっ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!」
「やらせるかっ!呑まれる奔流の絆(ジ・アサルトフォーム)!!」
しばらくはなさるがままだったが、すぐにファンネルをタキオンスライサーで弾き飛ばした【ゼノン・フェース】が両手を前に構えシャイニングバンカー・ユニットから火炎放射を出そうとしたのが見え、こちらもアリス・ファンネルを方陣型に2つ展開し、進化の時よりも更に強烈なビームを発生させて対抗した。
「うおおおおおおおお!!」
「なっ、相殺された!?」
「まだまだ勝負はこれからだぜぇ!!」
ビーム火炎放射の中から【ゼノン・フェース】は何事もなかったかのようにもう一度向かって来たが、無理矢理に火炎放射で耐えたからか相手の【ゼノン・フェース】の各部は煤だらけだし、ファンネルに身を切られてスパークを上げている部分だってある。
(……って、それはこっちも同じか。さっきのビームクロスでかなり機体は悲鳴を上げてるし、左足も動かない。終わりも近いな)
「跳躍するこの願い(インフィニットチェイス)!お願いっ!」
「ぬううぅぅぅぅあああぁぁぁぁ!!!」
そんな事を考えつつ、かと言って一瞬も気を抜かずに機体を操作する。
【アイオス・フェース】のアリス・ファンネルが空間を飛び越え【ゼノン・フェース】の方へ行き、【ゼノン・フェース】の両手から形成された火球が無数の小さなエネルギー弾を【アイオス・フェース】へ放出される。
「そんなものでっ!」
以外にも狙いが甘く、少し機体を動かすだけでそのエネルギー弾は簡単に避けることが出来た。
「チェストオォォォォォォォォォ!!!」
「うっ!」
が、【ゼノン・フェース】の本命はその次、タキオンスライサーを限界以上の出力まで高めたオーバーリミット状態にして大上段に振り下ろす事で、気を取られて反応の遅れた【アイオス・フェース】の左腕を肩から丸ごと切り落とした。
「くぅ……!アリス、ファンネル!」
そして、それとほぼ同時に飛ばしていたアリス・ファンネルが【ゼノン・フェース】の右腕とタキオンスライサー、そして右足のスラスターを撃ち抜いて爆発させる。
「のわっ!?……いい加減、極限の熱さを、受け入れろぉぉぉぉぉぉ!!」
「人の意志から生まれる力は!!」
【ゼノン・フェース】は機体の一部をなくして吹っ切れたのか、これまで以上の速度でこちらへ近づいてくる。
「機体にこれ以上の無理はできない……!」
「獅子奮迅!!」
(速い!まずは、ギリギリまで引きつけて、足を止める!)
タキオンスライサーを失い、再びその鉄拳でこちらの機体を粉砕しに足のスラスターを使って超高速接近する【ゼノン・フェース】の足を止めるべく、ヴァリアブル・ライフルを構えて足のスラスターを狙う。
「粉砕っ!」
が、それよりもゼノンの残った左手がヴァリアブル・ライフルを叩き潰して爆散させる方が早い。
(けど、それでいい!)
「切り裂かれるこの想い(セイクリッドソード)!!」
そうなるのは織り込み済みで、こっちの本命はその爆風に紛れてビームを発振したファンネルを射出し、どちらかでいいから足を切り落とすこと。
「くっそおぉぉぉぉ!!」
計らいは上手くいき、【ゼノン・フェース】の左足を切り落とす事に成功した。
「……だがまだだぜぇ!」
が、【ゼノン・フェース】の残った片手でファイヤーバンカーを横薙ぎに振るわれ、こちらのアリス・ファンネルも撃墜される。
(これでアリス・ファンネルは切れ、ヴァリアブル・ライフルももうない、手札は使いきった、後はやれるだけやるんだ!)
「これでもうその高速移動はできまい!」
「これで負けたわけじゃ、ないからなぁ!」
足を切り落とされてバランスを崩したゼノンに止めを刺しに行こうとしたが、エクストリームが悲鳴を上げる。
「こんな時に!?動いてくれ、エクストリーム!」
「チャンスだ!……って、力を出し切った……?」
それは【ゼノン・フェース】の方も同じなようで、お互いの機体がスパークしたまま動かない時間がしばらく続く。
(動けない……ここまで来て!?――――そんな絶望、認めたくない!)
「絶望なんて俺は受け入れない!俺は希望を信じる!!」
「これ以上動かない?そんな、このままじゃ終われる訳……そうだよな、お前も、俺も、エクストリームも、このままじゃ終われないよなぁぁぁぁぁ!!!」
お互いに動かない機体を気合いで動かし、本当の決着の時が来る。
「だあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「極限全力!シャイニングバンカァァァァァァ!!」
【アイオス・フェース】に最後に残った力を振り絞ってビームサーベルを突き出し、【ゼノン・フェース】のシャイニングバンカーとぶつかり合う。
「おおおぉぉぉぉぉぉ!パイルピリオド!!!!」
だが、【ゼノン・フェース】のシャイニングバンカー・ユニットから発生するエネルギーが更に高まり、こっちが押されていく。
「そんな……勝てない……?」
(いや、まだだ!まだ!まだ絶望なんかしない!してたまるか!)
「極限の希望を、くれてやる!!!」
その時、正直何が起こったのか自分でもわからなかった。
選択していなかったはずの射撃進化、【エクリプス・フェース】と格闘進化、【ゼノン・フェース】のユニットまで、【アイオス・フェース】に追加され、【ゼノン・フェース】のパイルピリオドのエネルギーを遥かに上回り、左腕ごと、エクストリームの胴体を貫く。
「えっ……?」
【ゼノン・フェース】のツインアイから光が消え、お互いにもたれかかる様に機体が重なる。
「素晴らしい戦い方でした。今回は負けましたが、経験を積んで、再び挑戦させてもらいます。必ずです……!」
「はははっ、勝ったって実感がないけど、勝ちは勝ち!今は喜ばせてもらおう!……でも今日はもうダイブは終了だな。疲れた――――」
同時に疲労感がどっと押し寄せてきて、シートに深くもたれかかる。
(さすがにこれ以上は無理か。ダイブオフして帰ることにしよう……)
今日はよく眠れそうだ――――
以上、カルマさんからの誕生日プレゼントでした!
以前書かせて頂いた【フルクロスvsダブルオー】のお返し的な意味合いもあったとは思います。見る側としても書く側としても楽しい一時だったので、またこういう風に書き合ってみたいですね。
最近スランプ気味だったですが、それから脱却できた意味でも本当に感謝しています。
ゼノンに追われるアイオスの恐怖感。温存する方陣ファンネルなど、FBプレイヤーなら『あるある』と思う場面も多く、先の事情も含めいいプレゼントをもらえたと思います。
この場を借りて、全力でありがとうございました!