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【EXVS小説】エクストリームVS前篇【頂きもの】

  「もう一機のエクストリーム!?」
 お互い回線を開いていないので聞こえているはずがないのだが、思わずそう言わずにはいられなかった。
 それもそのはず、そこにはex-のエクストリーム以外にあるはずのないエクストリームガンダムが居るのだから。
 「ex-のじゃない?一体誰が乗って……考えても仕方がない、今はGAデータを集めることが優先だ!もう一機のエクストリームの力、学ばせてもらう!」
 「その機体がどこで作られたかはわからないが、俺にはやることがある!もう一機のエクストリームの力、学ばせてもらう!」

 判断より驚きが勝り、両機共に機体一瞬静止する。だが、このままだとお互いのやることに支障が出ると判断したのか、ほぼ同時に機体を相手のエクストリームに向かって加速させる。
 「偽物かもしれないが、相手はエクストリーム。ヴァリアブル・ガンでは効果が薄いかもしれない――ここは、サーベルで行く!」
 「お互い考えることは同じか……なら!」

 エクストリーム相手には出力の低いヴァリアブル・ガンでは効きにくいと思ったのか、相手の機体が背中のビームサーベルを抜き、こっちに迫ってくる。考えることは同じ。だが、考えは違う。
 「そこっ!」
 「うわ、ビームダガーか!だが、それくらいは読んでいる!」

 そう、こっちは腰に付けているビームダガーをバク宙しながら2つ同時にエクストリーム相手に投げつけた。
 が、相手は機体を制動させ機体を横にスライドし、回避しもう一度サーベルを振りかぶろうとしている。
 (避けることは織り込み済み、そして、回避には一瞬隙が出来る!)
 「信じられんほど隙だらけだ!」

 投げると同時にレバーを倒して機体を相手に向かって接近させ、そしてコンソールを操作し、あるプログラムを作動させる。
 ロードタクティクス。読み取ったGAデータを使って相手を自動攻撃する、言わば戦闘AIだ。まだ格闘戦は未熟だから、このくらいは使わせてもらう。
 「なんの!」

 が、それは盾で弾かれる。
 「くっ、もう一度!」
 「させるかっ!」

 もう一度ロードタクティクスを作動させようとしたが、今度は相手のビームサーベルで受け止められる。
 「くっ、この性能、やはり本物のエクストリーム?このままじゃ……」
 「埒があかない!」

 しばらくつばぜり合いが続いたが、完全に均衡して動く気配もない。仕方なく弾かれるようにして後ろに下がった。
 「なら!進化発動!未来を守ろう、アイオス・フェース!」

 そして、相手がもし偽物では出来ないであろう、オールレンジに優れた世界のGAデータを参考にした進化――ファンネル進化、【アイオス・フェース】を発動した。
 胸部、フロントアーマー、リアアーマーに装甲が追加され、シールドの中央が少し展開され、手には平均的な大きさのビームライフル、ヴァリアブル・ライフルが握られている。。
 そして、何より目を引くのが、背中のバックパックから伸びる20枚の翼だろう。これは機動力を上げる効果を発揮すると共に、搭載されている8基のアリス・ファンネルの搭載ラックにもなっている。
 (さあ、これなら闘って分かり合えるかもしれない!……いや、分かり合う!)

 そして、集まったGAデータの影響を受け、搭乗者の性格も平和を追い求める極限の理想家に変化する。
 「あれは進化!?ならば!格闘進化ぁ!天地を引き裂け!ゼノン・フェースゥゥゥゥゥ!!」
 「なっ、【ゼノン・フェース】!?やはり、偽物じゃないのか……」

 それに呼応するように、相手のエクストリームも変化、いや、進化する。
 股間部に装甲が追加され、背中のバックパックが大型化、腰にはex-のエクストリームのタキオン・フェイズを参考に、「常識的に」改造された大型ビームソード、タキオンスライサーが取り付けられ、更に脚部にもスラスターの付いた大型の装甲が追加される。そして、腕部にはプロテクターのようなパーツが取り付けられている。
 【ゼノン・フェース】。このエクストリームにも搭載されている、格闘戦に特化したGAデータを得て進化した形態である。
 「さぁて!ここからが本番だぁ!エクストリームのパイロット!!」

 そしてやはり、パイロットもGAデータの影響を受けて性格が熱くなっているのだろうか。相手のエクストリームの構えが若干荒っぽい構えになっている。
 (……俺も、【ゼノン・フェース】の時はあんな感じなのか)

 ふと自分を客観的に見たら、こんな感じなのかと思ってしまい若干苦笑が漏れる。
 「出来ればこれ以上は話し合いで済ませたかったけど、仕方がない!【ゼノン・フェース】の力、学ばせてもらう!」
 「必中!!」

 まずは小手調べと言わんばかりに、地面を走りながら相手のエクストリームから火球が飛ばしてくる。
 「ヴァリアブル・ライフル!」

 進化して強化された機動性を生かしてブーストを吹かして回避し、こちらも牽制にヴァリアブル・ライフルからビームを打ち出す。
 「その程度、欠伸が出るぜぇ!!」

 が、機動性が向上してるのは向こうも同じ。牽制のライフル程度、簡単に当たってくれるはずはない。
 (なら!)
 「アリス・ファンネル!頼んだ!」

 【アイオス・フェース】の背の羽からビット兵器、アリス・ファンネルが2つ射出される。
 「ファンネルだと!?」

 【ゼノン・フェース】のパイロットは驚いたようだが、ファンネルに対応すべく、機体を制動させ、背のバーニアを吹かせて地面から空中へ飛び上がる。
 (アリス・ファンネルに驚いていると言う事は、【アイオス・フェース】の事を知らない?……ますますわからないな)
 「お前には過ぎた機体だ!」

 そのまま【ゼノン・フェース】が紫電を纏ったタキオンスライサーを右手に構え、こっちへ向かって急速に近づいてくる。このままだと1秒もせずになます斬りにされるだろう。が、何もしない。いや、『する必要がない』。
 「わかってないな、その程度じゃ、アリス・ファンネルは振り切れない!」
 「ぐあっ、なっ、どこから撃った……ファンネルがまだ付いてきてる!?」

 理由は簡単。相手が振り切ったと思っていたアリス・ファンネルのビームがが【ゼノン・フェース】の背中に直撃し、大きく体制を崩したから。
 ――アリス・ファンネルは、若干弾数は心もとなく、四方からの攻撃は加えれないが、その代わりに相手をしっかり狙ってくれる。俺にはぴったりの武器だ。
 「まだまだ!アリス・ファンネル!」
 「こんちくしょうがぁ!」

 更に2つのアリス・ファンネルを射出し、畳みかけるようにサーベルを振りかぶる。
 (4つ以上のファンネルを使ってもいいけど、『奥の手』が使えなくなる。ここは堅実に行こう)
 「くらえっ!」
 「くっ……獅子咆哮ぉ!!」

 が、サーベルを振り下ろす前に、今度は【ゼノン・フェース】の手からさっきより更に目の前を覆うような大きい火球が放出された。
 「うあ……けど、機体が耐えているのなら、俺だって耐える!」

 流石にこの至近距離では避けきれずに直撃し、衝撃と熱で機体が一瞬操作を受け付けなくなる。
 (けど、この程度でやられるわけには……!?)
 「いない!?」

 そして、その一瞬の間に、【ゼノン・フェース】はまるで最初からいなかったかのように完全に目の前から消えていた。
 (いつの間に……いや、それより一体どこに……?)
 「アラート……後ろか!」

 直後に鳴ったアラート音の方へ機体を向けると、そこには無重力下にいるかの様に足からバーニアを噴射して機体を滑らせ、既にタキオンスライサーでの攻撃態勢に移った【ゼノン・フェース】の姿があった。
 「だあぁ!!」
 「くっ、アリス・ファンネル!」

 それに対応すべく即座に機体を動かし、アリス・ファンネルを射出する。
 「バレてるぜぇ!これでも食らっとけ!」

 が、【ゼノン・フェース】はそのまま切りつけてこず、小さな玉をこっちの機体に当たらない程度に飛ばしてきた。

 (一体何のつもりだ……?まさか!)

 その小さな玉が目の前で爆散して電撃を放出し、【ゼノン・フェース】へ向かわせていたアリス・ファンネルを全て撃墜した。
 「爆雷球でアリス・ファンネルを!?」
 「さぁて!これで邪魔なものは消えたぜえ!!」 

 【ゼノン・フェース】がバーニアを吹かせて高速で飛びあがり、その鉄拳を叩きつけようと【アイオス・フェース】に迫ってくる。

 (くっ、やるしかないっ!)
 「やるぞ!アリス・ファンネル!」

 そう簡単にやられるわけにはいかない。こう言うこともあろうかと残しておいた残り4つのアリス・ファンネルを方陣型に展開し、強烈なビームを発生させた。
 この武装は少し溜めがいるし、操作が難しくて至近距離じゃないと上手く狙えない。だからこう言う完全に近づかれて反応出来ない距離になるまでを待っていた。
 そうじゃなければ、【ゼノン・フェース】は簡単に避けてしまっていただろう。
 「ぐはっ……!」
 「馬鹿なぁぁぁぁ!!」

 が、完全には間に合わず、【ゼノン・フェース】もビームによるダメージを負ったが、こちらの機体も拳で地面に叩き落とされ、コクピットに激震が走る。
 
 (機体は、まだ動く、いける!……にしても、今のタイミングで撃ったアリス・ファンネルの直撃を避けるなんて)

 機体を立ち上がらせつつ相手を見ると、咄嗟に直撃を避けたのか【ゼノン・フェース】の左腕から少しブスブスと黒煙があがっているが、まだまだ健在のようだ。
 「俺をここまで熱くさせるなんて、中々ないぜぇ!楽しませてくれた礼だ!俺も本気でやらせてもらう!!極限進化ぁ!」

 すると、気合いを入れるような体勢を取り、【ゼノン・フェース】の姿が更に変わった。
 プロテクターのような装甲が拳を覆うように展開され、更に足、バックパックのスラスターが展開される。
 それだけではなく機体各部からオレンジ色の発光も確認できる。
 極限進化――格闘進化形態から、更に進化をした極限状態の形態である。【ゼノン・フェース】では、シャイニングバンカー・ユニットが展開され、更に格闘能力が強化される。
 「極限進化!?止めろ!こんな、GAに関係ないところで極限進化したエクストリームで戦闘なんてしたらGAに影響が……うわっ!」
 
 相手へのエクストリームへ話をつけようと通信を開こうとしたが、その前に【ゼノン・フェース】が拳をこちらに叩きつけようとしてしていた。
 「くっ、回線を開く事も出来ないなんて……」

 なので、それを飛びのいて回避する事に精いっぱいになり中断せざるを得なかった。
 「避けた!?それでこそだぜぇ!!」 

 (地面が砕けてる……エクストリームと言えど、あれを食らったらただじゃすまないか)
 外れた拳が地面を砕いているのを見て乾いた笑みを浮かべながら、機体を整える。
 「2機とも極限進化したら、GAに影響が……」
 「どうしたぁ!そんなものじゃないだろうお前は!」

 その間に接近してきた【ゼノン・フェース】のビームクロスをビームサーベルの突きで粒子を散らしながら弾――
 「その程度じゃ俺の攻撃は止められないぜぇ!!ドカーン!!」 

 ――こうとしたが、ビームクロスに一方的にこちらのビームサーベルが弾かれ、薙ぎ払いの一撃、返しの二撃、もう一度薙ぎ払って三撃と入って機体が大きく吹き飛ばされる。
 「うわああああ!!」
 「立てよ!その程度で終わったら、拍子抜けだぜぇ!」

 (このままじゃやられる!……やるしかないのか)
 「これは、ファンネル進化の極限!」