シューティングラーヴェ(はてな)

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遊戯王オリジナル prologue-4

「治輝さん、お茶をどうぞ」
「あぁ、ありがとう」

 ペインから私を救ってくれた青年は、私の部屋に付いた後…自分の事を『治輝』<ナオキ>と名乗った。
 本人は呼び捨てでも構わないと言っていたが、何だか落ち着かないのが目に見えているので
 私は治輝さん、と呼ぶようにしている。
 既に食卓を終えた私達は、食後のお茶を楽しんでいた。
 ……正直もっとゆっくりしていたいけど、聞くべき事は聞かないと。

「落ち着いた所で、一つ聞きたい事があります……」
「……だろうな、答えられる範囲なら答えるよ」
 お茶をずずーっと飲んだ後、治輝さんの顔を真っ直ぐ見つめる。

「貴方は何故、ペインの攻撃を耐えられたんですか?」

 サイコ決闘者の末路…ある意味究極態とも言える『ペイン』の攻撃は、並の人間では到底耐えられる物では無い。
 例え低級魔法カード『火の粉』であろうとも、その威力は並の人間の体と、心を壊し尽くせるはずだ。

 でも、彼は<プロミネンス・ドラゴン>2体の効果ダメージを受けても、平然としていた。
 それには何か、理由があるはずだ。
 彼はまた「うーん……」と頭を唸らせた後。

「そうだな。余り教えたくはなかったんだけど……コレのお陰だよ」
 そう言って治輝さんは長袖をめくり、手首を差し出してきた。

 ……手錠?いや違う。金属のリストバンドの様な代物が、手首に巻かれている。
「セキュリティの上層部しか存在を知らない、対ペイン用の秘密兵器さ」
 これさえあれば、ペインとの戦いでのダメージをかなり軽減出来る。
 細かい説明はちんぷんかんぷんだったが、つまりはそういう事らしかった

「……って、治輝さんってもしかしてセキュリティの人なんですか!?」
「違う違う、俺の知り合いが少し特殊でさ。こういう物をたまに手に入れてくれるんだ。」
「す、凄い知り合いですね……」
「あぁ、あの手この手で怪しい代物を勝手に溜め込んでくるような奴でさ……」

 ここで深いため息を吐く治輝さん、その「知り合い」について考えているのだろうか。
 これ以上その人に関して、深く突っ込んで聞いてはいけない気がしたので、息を少し整える。

「しかし、このご時世に一人暮らしか。親御さんは?」

 ……静寂。
 でもこの静けさや雰囲気には、正直もう慣れっこだった。
「両親は、今は遠い所に行っちゃって。もう会えそうにないんです」
 なるべくその時の事を思い出さずに、淡々とそう告げる。

「……悪い、余計な事聞いちゃったな。」
「気にしないでください。私にとってはもう、慣れた事ですから」
「いやでも……やっぱ配慮が足りなかった、すまない」

 うーん、そんなに気にされても困るんだけど……。
 どうしたもんかな、と思ってる内に、すぐに一つの名案が思い浮かぶ。

「じゃあ、私と決闘してくれませんか?」
「……へ?」

 完全に予想外の質問だったのか。治輝さんが間の抜けた声を出してくる。
 そんな彼の様子を見て、少しいたずら心が出てきたのかもしれない。

「私が勝ったら、『ナオ君』って呼ばせてもらいます!」
 今日の出来事から生まれた混乱や戸惑いは何処へやら
 にっこりと微笑みながら、私は彼に―――よくわからない理由で決闘を申し込んでい