シューティングラーヴェ(はてな)

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遊戯王オリジナル prologue-5

「『ナオ君』って呼びたい…って、一体またどうしていきなり」
困惑気味な態度を隠しきれないまま、目を半開きにして答える俺。
「『治輝さん』っていい名前なんですけど、何か母音的に言い辛くて…」

 (母音的!?)
その言葉を聞いて、治輝は困惑した。
最初は普通の女の子かと思ってたけど、実は大いに間違いだったのかもしれない。

 ……ただ、先程失礼な事を聞いてしまったのはこちらの方だ。
無神経に異を唱えるのは憚られるし、何より……少し沈み気味の彼女にとって、いい気晴らしになるかもしれない。

「……わかりたくないけど、わかった。ただ手加減はしないぞ?」
俺個人としても、年下らしき女の子に『君』付けで呼ばれるのは何となく避けたいし……。
大人気なかろうが、ここは全力で行かせてもらおう。

「交渉成立ですね。じゃあ早速闘りましょうか」
「…まだ食器とか洗ってないんだが、先にやらないのか?」
「なら、負けた方は食器洗いもするという事で」
「……」

 どうやら、あちらはやる気満々らしい。にっこりと笑いながら、既に決闘盤を腕に装着している。
何が彼女のモチベーションを上げているのかわからないが、そういう事ならこっちも準備を始めないとといけない。

 まずは腕に付けた『特性リストバンド』を外し、ゆっくりと深呼吸。
目を閉じ、ゆっくりと精神を集中させていく。

「……?」
「…よし、こっちも準備完了だ。いつでもいいぜ?」

 決闘盤を構え、もう一度長く息を吐き出し、デッキを装着。
その時のデッキへの手触りのような物が、やけに懐かしく感じられた。
そんな俺に彼女は違和感を感じたのか、訝しげな顔をしつつも…すぐに気を取り直し、こちらを真っ直ぐに見つめてくる。

「じゃあ、改めてお願いします!」
「ああ、いつでも来い!」

 ――決闘!!
 二人の叫びと同時に――少し変な女の子との決闘が、始まった。