シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル episode-09

 巨大な要塞……<スクラップ・ドラゴン>は仮面竜への攻撃を終えると
 治輝の斜め前の上空へと、騒音を響かせながらも位置を変えていく。
 先程の攻撃で大きく吹き飛ばされた治輝は、服に付着した砂埃を手で軽く払った後、かづなの手を借りながら立ち上がり、上空の要塞を鋭く睨んだ。

 確かに人の手には余る相手かもしれない。―――だが、負けるわけにはいかない!

「仮面竜の効果発動!デッキから<ミンゲイドラゴン>を守備表示で特殊召喚する!」
小さい置物のような竜が、デッキから場へと躍り出た。
その容姿に相応しい、獰猛な叫び声が辺りに

「ミ!?」
 次の瞬間、無言で治輝は<ミンゲイドラゴン>の口を塞いだ。
 もはや動揺も何もない。ただひたすらに口を塞ぐ動作が早くなってしまった自分が情けなかった。

「もういいから!誰も鳴き声なんて気にしてないから喋るな!?」
「ミ!!ミ!!」

 だが、計らずも少し緊張は和らいだ。
 隣にいるかづなもその様子を見て安心したのか
 苦笑いを浮かべた後たたっと治輝の少し後方へと走っていく。
 それと同時に決闘盤のビープ音が相手のターンエンドを告げ、治輝は慎重にカードをドローした。
 しかし――これは厄介な相手だ。と治輝は心の中で愚痴る。

《スクラップ・ドラゴン/Scrap Dragon》 †

シンクロ・効果モンスター
星8/地属性/ドラゴン族/攻2800/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分及び相手フィールド上に存在するカードを
1枚ずつ選択して発動する事ができる。
選択したカードを破壊する。
このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、
シンクロモンスター以外の自分の墓地に存在する
「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

「このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、シンクロモンスター以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する、か」

 例え<スクラップ・ドラゴン>の破壊に成功しても、墓地に存在する<スクラップ・ゴーレム>が復活し、再びモンスターを展開されてしまうという事だ。

 ……なら、連続攻撃で倒すしかないか?
 だが、それも上手い手とは言えない。
 <スクラップ・ゴーレム>を凌駕する連続攻撃を叩き出した所で、相手は戦闘無敵効果を持っている<スクラップ・ゴブリン>を壁にしてくる。決定打には……

「……いや、これなら行ける!俺は<ミンゲイドラゴン>をリリース!」

《ミンゲイドラゴン/Totem Dragon》 †

効果モンスター
星2/地属性/ドラゴン族/攻 400/守 200
ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、
このモンスター1体で2体分のリリースとする事ができる。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

アドバンス召喚!<タイラント・ドラゴン>!!」

タイラント・ドラゴン/Tyrant Dragon》 †

効果モンスター
星8/炎属性/ドラゴン族/攻2900/守2500
相手フィールドにモンスターが存在する場合、
このカードはバトルフェイズ中にもう1度だけ攻撃する事ができる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
このカードを対象にする罠カードの効果を無効にし破壊する。
このカードを他のカードの効果によって墓地から特殊召喚する場合、
そのプレイヤーは自分フィールド上に存在する
ドラゴン族モンスター1体をリリースしなければならない。

「ほぅ、ワシの攻撃力を上回るモンスターか!」
「なお君。結局あのフィギュア買ったんだ……」
 かづなは治輝の召喚したモンスターを後ろから眺め、苦笑いのような表情を浮かべた。

「バトルフェイズだ。―――<タイラント・ドラゴン>!アイツを空中要塞から地上要塞に格下げしてやれ!」
「ふん、空中要塞より必ず地上要塞が劣っているとでも言いたげだな!だが歴史上では――」
「いや、それはどうでもいい……」

 治輝の指示で タイラントドラゴンは大きく息を吸い込んだ。
 次の瞬間灼熱の炎を吐き出し、中空にいる<スクラップ・ドラゴン>に直撃し、要塞はガラスのように砕け散っていく。

【声の主LP】4000→3900

「グゥ……!?ワシの効果を発動。墓地から<スクラップ・ゴブリン>を守備表示で特殊召喚する!」
「<スクラップ・ゴーレム>じゃなくてよかったのか?」
「たわけが!そのモンスターの効果を考慮しないとでも思ったのか!」

相手フィールドにモンスターが存在する場合、
このカードはバトルフェイズ中にもう1度だけ攻撃する事ができる。

「成る程、確かにゴーレムを出すよりは賢明かもしれないな」
「その通り、貴様のぬるい戦術なぞ、歴戦を重ねたワシには……」

 治輝はその言葉を聞き「ふぅ……」と溜息を吐く。
「悪い、さっきの台詞、少し間違えた」
「……台詞だと?」

「ゴーレムを――『出していた方が』賢明だったかもしれないな」

 次の瞬間<タイラント・ドラゴン>の攻撃が復活してきたばかりの<スクラップ・ゴブリン>に直撃した。
 そして声の主であるスクラップドラゴンに、激しい痛みが襲ってくる。

【声の主LP】3900→1500

「ガッ……!?小僧、何をしおった!」
「悪いがこのカードを発動したんだ!あと小僧って言うな!」

《竜(りゅう)の逆鱗(げきりん)/Dragon's Rage》 †

永続罠
自分フィールド上に存在するドラゴン族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

「貫通効果か、小僧にしてはやりおる……!」
「……この野郎。カードを1枚伏せてターンエンド!」
「――では、ワシは<スクラップ・ゴブリン>の効果を発動させてもらおう」

《スクラップ・ゴブリン/Scrap Goblin》 †

チューナー(効果モンスター)
星3/地属性/獣戦士族/攻   0/守 500
フィールド上に表側守備表示で存在する
このカードが攻撃対象に選択された場合、
バトルフェイズ終了時にこのカードを破壊する。
このカードが「スクラップ」と名のついた
カードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、
「スクラップ・ゴブリン」以外の自分の墓地に存在する
「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える事ができる。
また、このカードは戦闘では破壊されない。

「<スクラップ・ゴブリン>が、破壊される事で……墓地の<スクラップ・ゴーレム>を回収」
「……?」

 ほんの少し<スクラップ・ドラゴン>の声が震える。
 かづなはそのかすれたような声が、何故だか酷く気になった。

 ……やはり貴様ら人間に負けるわけにはいかない。
 声の主は心の中で、そう呟いた。

【治輝LP2600】 手札3枚
場:<タイラント・ドラゴン>
  伏せカード1枚 <竜の逆鱗>

【声の主LP1500】 手札4枚
場:モンスターなし
  伏せカード1枚