シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル episode-20

「……へェ、この感覚はおまえの手下か?なかなかの上物使ってんじゃねーか」
「あら、わかる?」
「わかるさ、ああいうのを使う事に関しちゃ……俺は大先輩って奴だしなァ」

 ククッと、暗闇の中で笑い声が響く。
 だが声はすぐに収まり、男は暗闇の中大きく口元吊り上げた。

「で、さっきの話はマジなのか?」
「ああうん、私が隠してたっていうのは本当よ。だから貴方は都合が良かったの」
「そーか」

 暗闇の中で、機械的な音が聞こえた。
 決闘盤が展開した音だ。男は女の声に向かって、これ以上無い程の憎悪を視線に込める。

「ならてめェは凹る!徹底的になァ!」
「貴方にできるかしら?道化師さん!」

 かくして常人では何かを見る事すら許されない視界の中で
 常人を遥かに超えた二人の決闘が開始する――――








遊戯王オリジナル episode-20


「ヒハハハハハ!これが自分の切り札、ライトルーラーです!」

《アルカナフォースEX(エクストラ)-THE LIGHT RULER(ザ・ライト・ルーラー)/Arcana Force Ex - the Light Ruler》 †

効果モンスター
星10/光属性/天使族/攻4000/守4000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に存在するモンスター3体を
墓地へ送った場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い以下の効果を得る。
●表:相手モンスターを戦闘によって破壊し墓地へ送った時、
自分の墓地からカード1枚を選択して手札に加える事ができる。
●裏:このカードを対象にする効果モンスターの効果・魔法・罠カードの
発動を無効にし破壊する。
この効果でカードの発動を無効にする度に、
このカードの攻撃力は1000ポイントダウンする。

「攻撃力4000の天使族モンスター……!?」

 突如出現した巨大な天使型モンスター<THE LIGHT RULER>は佐光の背後に立ち、モノアイのような目を機械的にこちらに向けてくる。
 腕の先にある手はまるでドラゴンのような造形をしていて、それはまるで二つの『何か』を融合させた形のように感じさせた。

「見た所貴方の操るモンスターの攻撃力は3000が精一杯の様子!貴方の力では超えられないでしょう?」
「……」

 治輝は佐光の言葉に内心舌打ちをする。 
 以前の戒斗との戦いでもそうだった。攻撃力4000を超える<幻魔王ラビエル>に対し、俺は一度も攻撃力で上回る事ができていない。
 
「そして<THE LIGHT RULER>の効果は裏を指し示しました」
「……くっ」
「さぁ、あのお方が間違っているというのなら、このモンスターに勝って下さいよ!」

 <THE LIGHT RULER>の効果が裏になった為、頼みの綱の除去も通用しない。
 そしてそもそも俺の手札には、モンスターを除去するカードも、攻撃力を上昇するカードも存在しない。
 ――なら、ドローでカードを引き当てる!

「俺のターン、ドロー!ブランディストックをコストに<調和の宝札>を発動!」

《調和(ちょうわ)の宝札(ほうさつ)/Cards of Consonance》 †

通常魔法
手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「デッキからカードを2枚ドローする!」

 治輝は闇雲にデッキからカードを2枚引き抜く。
 引いたカードは……駄目だ、どれも突破口にはなりそうもない。
 もう、駄目なのか……?



「ふっふっふ、どうやらワシの出番のようじゃな」

 突如、妙に余裕綽々な声が辺りに響き渡った。
 その声はやけに篭っており、何処から聞こえてきているのか、治輝には判断できない。

「スド!?おまえ一体今まで何処に……!」
「小僧が投げ飛ばしたショックで気絶してたんじゃよ!全く年寄りをなんだと……」
「それは後で謝る!何か考えがあるなら聞かせてくれ!」

 あくまで本題をと急かす治輝に、やれやれとスドは無い首を竦める。

「小僧、貴様はドラゴンの扱いは確かに上手い。プロと言ってもいい程じゃ」
「スド!今はそんなお世辞を聞いてる場合じゃ……!」
「だが<ドラグニティ>については違うようじゃな、使い方がなっとらん」
「……へ?」
「<ドラグニティ>の真の力、見たくはないか?」

 ふっふっふ、とスドが笑う声が聞こえた。
 妙にむかつく声だが、何処にいるのかわからない以上、グッと堪える。
 治輝は拳をプルプル震わせながら、スドの言葉を待った。

「まずは、そのチューナーを召喚してみせい!さすれば扉は開かれん!」
「ああくそ、どうなっても知らねぇぞ……!俺は<デブリ・ドラゴン>を召喚!」

デブリ・ドラゴン/Debris Dragon》 †

チューナー(効果モンスター)
星4/風属性/ドラゴン族/攻1000/守2000
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する攻撃力500以下のモンスター1体を
攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。
このカードをシンクロ素材とする場合、
ドラゴン族モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。
また、他のシンクロ素材モンスターはレベル4以外のモンスターでなければならない。

「効果で<ドラグニティ・ファランクス>を召喚じゃ!」
「先に言うな!」

《ドラグニティ-ファランクス/Dragunity Phalanx》 †

チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/ドラゴン族/攻 500/守1100
このカードがカードの効果によって
装備カード扱いとして装備されている場合に発動する事ができる。
装備されているこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 二体の小さいドラゴンが、光の中からひょっこりと姿を現す。
 <デブリ・ドラゴン>は目の前の大きな敵を認識すると、一瞬で数m程後退した。
 治輝は無言でデブリドラゴンの首根っこを掴むと、定位置に戻す。
 佐光は一連の様子を眺めていたが、やれやれと首を振った。

「勝てなくなったと判断して頭でもおかしくなったのですか?さっきから独り言をボソボソと……」
「――ほっとけ」

 次の瞬間、スドの声がかづなのと治輝の元で鮮明に再生される。

「お主達、そもそも廃品広場に来たのは何の噂がキッカケだった?」
「今する話なのかそれ……」
「確か『ドラゴンが暴れてる』っていう噂だったような気がします」

 呆れる治輝をよそに、うーんと頭を悩ませた後かづなはそう言った。
 それを聞いたスドは満足そうに、言葉を続ける。

「それについてお主達は、変だとは思わなかったのか?」
「変?」

 治輝は考える。
 『ドラゴンが暴れている』という情報を持って廃品広場に行き、ドラゴンであるスドに出会えた。
 自然過ぎる事はあっても何もおかしくはない……そう思った。
 だが、かづなの考えは違ったらしい。

「変かも、しれないです」
「え?」
「だって、スドちゃんは確かにドラゴンですけど……」
 かづなはそこで一呼吸おいて、指を一本立てた。

「初対面だと、機械族か何かに見えると思うんです」
「あぁ……確かに」

 なるほど、確かにそう考えるとおかしい。
 スドはどうみてもドラゴン族には見えないのに、噂では『ドラゴン』が暴れている!とはっきりとしていた。

「その通りじゃ、その噂の『ドラゴン』とは、ワシの事ではない」

瞬間、カードから光が湧き始めた。
治輝の<ドラグニティ・ファランクス>のカードと、かづなの<神禽王アレクトール>から、淡い緑色の光が零れ始める。

「え……?!なんですかこれ!」
「それがその答えじゃ!さぁ小僧、ワシにその力を見せるがいい!」

 何がなにやらよくわからない展開に、治輝は頭を何度か掻き毟る。
 かづなも色々と付いていけてないようだが、もうどうでもいい。なるようになれだ!

「――何だか知らないがやってやる!レベル2<ドラグニティ・ファランクス>と!」
「れ、レベル6<神禽王アレクトール>をチューニングします!」

 眩い緑の光が重なり、より濃い色へと変化する。
 すると、光は円線を描き、その線の間に、武器のようなものが一本ずつ刺さっていく。
 その武器の名前は、既に墓地に送られていたはずのカードと酷似していた。
 
 ブランディストック
 アキュリス
 パルチザン
 ファランクス

 四つの武器が円に更なる光を与え、中心部に旋風が巻き起こる。
 その旋風を縦に裂くように、何者かが内部から武器を振り下ろす。
 それは大きな翼を広げ、大空を支配している事を物語っていた。
 それは皮膚という名の屈強な鎧を纏い、その風格を誇っていた。


<ドラグニティナイト・バルーチャ>
 それが、そのモンスターの――――龍騎士の名前だった。