シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル episode-64

《ドラグニティナイト-ゲイボルグ/Dragunity Knight - Gae Bulg》 †

シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/ドラゴン族/攻2000/守1100
ドラゴン族チューナー+チューナー以外の鳥獣族モンスター1体以上
このカードが戦闘を行うダメージステップ時に1度だけ、
自分の墓地に存在する鳥獣族モンスター1体を
ゲームから除外して発動する事ができる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
ゲームから除外したそのモンスターの攻撃力分アップする。

《ドラグニティナイト-バルーチャ/Dragunity Knight - Barcha》 †

シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2000/守1200
ドラゴン族チューナー+チューナー以外の鳥獣族モンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する「ドラグニティ」と名のついた
ドラゴン族モンスターを任意の数だけ選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
このカードの攻撃力は、このカードに装備された
「ドラグニティ」と名のついたカードの枚数×300ポイントアップする。

 二体の竜騎士が、お互いを牽制し合い、武器を構え睨み合う中。
 治輝はゲイボルグを見上げながら、かづなに向かって話しかける。
「<ドラグニティナイト・ゲイボルグ>は確かに強力なカードだ。だがその効果は今<神禽王アレクトール>のお陰で封印されている。対してバルーチャは5枚のドラグニティモンスターの力を得て、攻撃力は3500だ」
 治輝は手札の一枚をゲイボルグに向け、今度こそ攻撃を宣言する。
 全てを、終わらせる為に。
「バトルだ。バルーチャでゲイボルグに――」

 攻撃、と。

 主人の指令が場に響いた直後、四本の剣が攻撃対象であるゲイボルグに襲い掛かった。
 それは翼を、尾を、手をそれぞれ縫い付けるように突き刺さり、ゲイボルグは完全にその場に固定される。
 効果の失ったゲイボルグに、それを振り払う力は残されていない。
「終わりだああああああああ!!」
 治輝は全てを振り払うような声を上げ、バルーチャは最後の一本の剣を手にし、振りかぶる。

 だが、次の瞬間。

「な……!?」
 かづなが、縫い付けられたゲイボルグの前に走り寄った。
 手を広げ、庇うような仕草をして、バルーチャの剣撃の前に立ちはだかる。
「バルーチャ、やめ……!」
 治輝は慌てて攻撃を静止するが、遅い。
 一度行ってしまった攻撃宣言は、取り消せない。
「――かづなあああああああああああああ!!」
 治輝は下を向き、叫びが辺りに木霊する。
 集中をロクに行っていない攻撃だ。当たったらかづなは……
 治輝がそう思った、次の瞬間。

 ガキィィィィン!!

 甲高い金属音が轟いた。
 それは人に刃が突き刺さった音でも、人肉を切り裂いた音でもなかった。
 治輝は視線を上げ、状況を確かめようとして……

 眼を、疑った。

「やっとまともに、名前で呼んでくれましたね」

 そう悪戯っぽく笑う彼女の手には、一枚のカードが握られていた。
 治輝のターンはエンドされ、彼女のターンへと移行する。
 その一枚のカードとは




《パワー・フレーム/Power Frame》 †

通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが、
その攻撃力より高い攻撃力を持つモンスターの
攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。
その攻撃を無効にし、このカードを攻撃対象モンスター1体に装備する。
装備モンスターの攻撃力は、
その時の攻撃モンスターと攻撃対象モンスターの攻撃力の差の数値分アップする。


「なお君の気持ち、少しだけわかる気がするんです。」

 <パワーフレーム>を得たゲイボルグが、バルーチャの攻撃を受け止めていた。
 このカードの効果でゲイボルグの攻撃力はバルーチャと同じ3500に上昇し、バトルは終了。
 
「私も同じだったから。ピアノ教室を開きたいって、口癖のように繰り返してたお母さんは、私のせいでいなくなりました」

 <パワーフレーム>の表面を触りながら、かづなは言葉を続けている。
 哀しそうな、何かを思い出すような表情をしながら、こちらで語りかけてくる。
 そんな中、パワーフレームの力の加護を得た銀色の竜騎士が、バルーチャに向かってくる。

「私なんか生まれてこなければよかったって、何度も思いました。なんにもできない自分を思い知らされる度に、その思いは膨れ上がって、抑え切れなくなりそうになって!」
「……」
「でも、今私は生きてます!生きてなお君と出会って、今もまだ生きてるんです!」

 そして効果の呪縛が解き放たれたゲイボルグは、真の力を解放する。
 再び墓地に戻った<神禽王アレクトール>の力を、今再び、全てを貫く力へと昇華させる。
 その、攻撃力は――5900

 かづなが初めて到達した。
 治輝が初めて経験した。
 最高の、攻撃力。

「だから!私は今だけあなたと同じになって――貴方を越えます!」

 銀色の竜騎士が、光の槍でバルーチャを串刺しにする。
 竜騎士同士の、激しい力の衝突の勝者は
 ただ一本の槍を貫き通した、銀色の竜騎士だった。




【治輝LP】1250→0












遊戯王オリジナル episode-64


 治輝は膝を折り、ただ呆然としていた。
 いつの間にか、竜騎士達は光となって消えていた。
 その光粒の奔流の中心から、かづながトコトコと走ってくる。
 その姿はそのまま近寄って来て、目の前で止まる。

「――私の、勝ちです」

 そう言いながら
 彼女は手を、差し伸ばしてきた。
 その手を眺め、治輝は思う。
 ただの幻想かもしれない。
 身勝手な勘違いかもしれない。
 だが、こいつのようになれれば、違った未来が見えるんじゃないだろうか、なんて事を。
 一瞬だけ、治輝は思う。
 そして治輝は小さな声で、震えるような声で、声を振り絞った。

「ああ、俺の負けだ――」

 パシッ、と。

 治輝とかづなの右手と右手が、今度こそ
 本当に強い力で、ハッキリと結ばれた。