遊戯王オリジナルS prologue-03
「うん、確かにワイがその本の作者って事になってるサクローやけど」
本の作者は、思ったより滅茶苦茶簡単に見つかった。
入るなりいらっしゃいませーと言ってきた店員さんに詰め寄って「この(ふざけた)本の作者知りませんか?」と聞くと、ああそれなら中にいるよと言われて付いていった結果が、今のこの状況である。
事務所――と言うには広すぎる部屋だが、精巧な機械やパソコンが所狭しとスペースを占拠しており、実際の大きさより狭く感じる。
入るなりいらっしゃいませーと言ってきた店員さんに詰め寄って「この(ふざけた)本の作者知りませんか?」と聞くと、ああそれなら中にいるよと言われて付いていった結果が、今のこの状況である。
事務所――と言うには広すぎる部屋だが、精巧な機械やパソコンが所狭しとスペースを占拠しており、実際の大きさより狭く感じる。
「あなたがこの本の作者のサクローさんですか、おはようございます」
そう言って私は作者さんに満面の笑顔を浮かべる。
サクローと名乗った人は分厚いフレームの眼鏡をかけており、体型はどちらかというと細身。
確かにカードショップの店員というよりは「作家」や「発明家」と言われた方がしっくりする容姿だ。
そのサクローさんは黒い回転椅子を無駄に回転させ、急に体をこちらに向ける。
そう言って私は作者さんに満面の笑顔を浮かべる。
サクローと名乗った人は分厚いフレームの眼鏡をかけており、体型はどちらかというと細身。
確かにカードショップの店員というよりは「作家」や「発明家」と言われた方がしっくりする容姿だ。
そのサクローさんは黒い回転椅子を無駄に回転させ、急に体をこちらに向ける。
「何、もしかしてワイのファン!?」
「有り得ません。ちょっとこの本の内容に文句をつけに……」
「ええ、また!?」
「よくあるんですか!?」
どうやら文句を付けに来る客は一人ではなかったようだ。
やっぱりかぁ、等と呟いてるのを見るに、それもかなりの大勢に違いない。
「ワイの作品は独創的やからな。世間は『フザけてる』だの『真面目にやれ』だのと理解しよーとせんが、アンタのよーにわかってくれるファンもいればワイは乗り切れる!」
「いや私ファンじゃないですし!どちらかといえば前者の意見に賛同ですし!」
「なんやそうなんか……」
この人は私の話をきちんと聞いてくれていたのだろうか。
しかし急にしょんぼりとした表情になったサクローさんを見ると、何だか悪い事をした気分になる。
「有り得ません。ちょっとこの本の内容に文句をつけに……」
「ええ、また!?」
「よくあるんですか!?」
どうやら文句を付けに来る客は一人ではなかったようだ。
やっぱりかぁ、等と呟いてるのを見るに、それもかなりの大勢に違いない。
「ワイの作品は独創的やからな。世間は『フザけてる』だの『真面目にやれ』だのと理解しよーとせんが、アンタのよーにわかってくれるファンもいればワイは乗り切れる!」
「いや私ファンじゃないですし!どちらかといえば前者の意見に賛同ですし!」
「なんやそうなんか……」
この人は私の話をきちんと聞いてくれていたのだろうか。
しかし急にしょんぼりとした表情になったサクローさんを見ると、何だか悪い事をした気分になる。
「いや確かにワイの作品はいつも独創的やけれど、その本に関してはワシ一人の責任じゃあらへんで?」
「……? 共同で書いてた人がいるんですか?」
「色々助言してくれた人がいて、ソイツの影響を多分に受けている――と言った方が正しい気はするで」
「助言……名前はなんて言うんですか?」
どうやら、そのありがたい『助言』をした人が諸悪の根源のようだ。
よくわからないが、きっと厄介な人物なんだろう――と私は断定する。
そして、それは確かに
「……? 共同で書いてた人がいるんですか?」
「色々助言してくれた人がいて、ソイツの影響を多分に受けている――と言った方が正しい気はするで」
「助言……名前はなんて言うんですか?」
どうやら、そのありがたい『助言』をした人が諸悪の根源のようだ。
よくわからないが、きっと厄介な人物なんだろう――と私は断定する。
そして、それは確かに
「時枝っていう奴でなぁ、そりゃもう面白い奴で――」
「え……?」
「え……?」
私にとって……凄く厄介な人物である事は、間違いなかった。
遊戯王オリジナルS prologue-03
「まさか、時枝の知り合いだったなんてなぁ……」
「世間って意外と狭いですねー」
「世間って意外と狭いですねー」
あはは、サクローさんと笑い合いながら私は心の中で納得していた。
あのイタズラッ子全開の解答、ふざけた問題。
――確かに、問題のあちらこちらに、なお君が滲み出ていた。
サクローさんは奇妙な偶然に気を良くしたのか、頬を緩ませる。
あのイタズラッ子全開の解答、ふざけた問題。
――確かに、問題のあちらこちらに、なお君が滲み出ていた。
サクローさんは奇妙な偶然に気を良くしたのか、頬を緩ませる。
「アイツには色々世話になったし、色々世話もした仲なんや。時枝の奴、リストバンド付けてた時期あったやろ?」
「……はい、確かに着けてましたね」
「……はい、確かに着けてましたね」
リストバンド。
ペインと戦う為の特製品だ――などと言っていた一品だ。
実際にはそれは、なお君が自分をペインである事を隠す為に言っていた嘘だったが。
(なお君は、どんな気持ちで自分の事を隠していたんだろう……)
ペインはお母さんの仇だ。そして、なお君はそれを知っていた。
私を気遣って、自分の事を話せなかったなお君は、やっぱり優しい人だと思う。
ペインと戦う為の特製品だ――などと言っていた一品だ。
実際にはそれは、なお君が自分をペインである事を隠す為に言っていた嘘だったが。
(なお君は、どんな気持ちで自分の事を隠していたんだろう……)
ペインはお母さんの仇だ。そして、なお君はそれを知っていた。
私を気遣って、自分の事を話せなかったなお君は、やっぱり優しい人だと思う。
そんな風に思い返していると、サクローさんは得意気な表情を浮かべ、言った。
「あれ、ワイが作ったんやで!」
「えっ」
「えっ」
その言葉に、かづなは現実へと意識を引き戻される。
あのリストバンドを作った?この人が?
あのリストバンドを作った?この人が?
「前は微弱な力しか防げんかったが、今はかなり大きな力も防げるように改良に成功してなぁ」
「かなり大きな力――って」
「かなり大きな力――って」
トクン、と。
自分の心臓が大きく脈打つのを感じた。
現在の世界で、大きな力といえば、それは
私は驚愕の表情を浮かべ、サクローさんを見つめてしまう。
その視線に気付いたのか、得意気な様子でピースをしながら、彼は言った。
自分の心臓が大きく脈打つのを感じた。
現在の世界で、大きな力といえば、それは
私は驚愕の表情を浮かべ、サクローさんを見つめてしまう。
その視線に気付いたのか、得意気な様子でピースをしながら、彼は言った。
「ご名答、ペインの攻撃も防げるシロモンや!」
ペインの力を防げる。
それは一般人でも、私のような力の無い人間でも、ペインと戦えるようになるという事。
私はそれを聞いて、表情を輝かせる。
それは一般人でも、私のような力の無い人間でも、ペインと戦えるようになるという事。
私はそれを聞いて、表情を輝かせる。
「それ、大発明じゃないですか――!」
「そう、大発明なんや!だから時枝に改めて渡そうと思うんてるんやけど……アイツ最近連絡取れなくてなぁ。嬢ちゃんはアイツの居場所知ってるんか?」
「……あ」
「そう、大発明なんや!だから時枝に改めて渡そうと思うんてるんやけど……アイツ最近連絡取れなくてなぁ。嬢ちゃんはアイツの居場所知ってるんか?」
「……あ」
そうか、と思った。
なお君が異世界に旅立ってしまった事は、殆どの人が知らないのだ。
一部の人には留学した事になっているので、私はそうサクローさんに伝えた。
それを聞いたサクローさんは苦笑いを浮かべる。
なお君が異世界に旅立ってしまった事は、殆どの人が知らないのだ。
一部の人には留学した事になっているので、私はそうサクローさんに伝えた。
それを聞いたサクローさんは苦笑いを浮かべる。
「なんやアイツ今この国にいないんかぁ。道理で最後に会った時、様子が変だと思うたわ」
「最後に会ったのって……」
「半年ぐらい前かなぁ。確かツレがいるとか言ってたよーな」
「……多分それ、私です」
「最後に会ったのって……」
「半年ぐらい前かなぁ。確かツレがいるとか言ってたよーな」
「……多分それ、私です」
「なんやそうだったんか……ってー事はアンタ、時枝のコレか?」
「……どうでしょう、まだよくわかんないです」
「ははぁ」
「……どうでしょう、まだよくわかんないです」
「ははぁ」
小指を立てて来るサクローさんに対して、私はあははと苦笑いをする。
そんな私を見て、彼はニヤリと何かを察したような顔をした。
何か勘違いをされたような気がするが、本当にわからないのだから仕方が無い。
サクローさんは私を見つめると、表情を少し引き締めて、言った。
そんな私を見て、彼はニヤリと何かを察したような顔をした。
何か勘違いをされたような気がするが、本当にわからないのだから仕方が無い。
サクローさんは私を見つめると、表情を少し引き締めて、言った。
「でも、それならアンタ辛いやろなぁ」
「はい?」
「半年間もずっと時枝の事待ち続けてるんやろ。――時枝の事思い出すだけで、辛くならへん?」
「……」
「いっそ忘れて、新しく気持ち切り替えた方が、アンタの為かもわからんで」
真剣な表情でそう言われ、私は考える。
そして、部屋の天井を見ながら、言った。
「はい?」
「半年間もずっと時枝の事待ち続けてるんやろ。――時枝の事思い出すだけで、辛くならへん?」
「……」
「いっそ忘れて、新しく気持ち切り替えた方が、アンタの為かもわからんで」
真剣な表情でそう言われ、私は考える。
そして、部屋の天井を見ながら、言った。
「確かに、無意識の内になるべく思い出さないようにしていた方が楽だなって、思う時はあります」
朝起きた時、なお君がいない事に違和感を覚えた。
料理を作る時、間違えて一人分多く料理を作った。
掃除当番表の書き込みが半年間無い事に、寂しさを感じた。
でも
料理を作る時、間違えて一人分多く料理を作った。
掃除当番表の書き込みが半年間無い事に、寂しさを感じた。
でも
「それでも、私はなお君の事を忘れられません」
だって――ここに来てから
階段を登ってから
この部屋に来て、なお君の名前が出た時から
私はここにいないはずの、なお君の事ばかり考えてる。
階段を登ってから
この部屋に来て、なお君の名前が出た時から
私はここにいないはずの、なお君の事ばかり考えてる。
私は小さく笑いながら、そう言った。
すると、サクローさんは真剣な表情を緩ませて
「――気に入った。これ、嬢ちゃんが使ってみるか?」
バン!! と新しいリストバンドを、思い切り手で叩いた。
すると、サクローさんは真剣な表情を緩ませて
「――気に入った。これ、嬢ちゃんが使ってみるか?」
バン!! と新しいリストバンドを、思い切り手で叩いた。