シューティングラーヴェ(はてな)

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遊戯王オリジナルstage 【EP-04 サイドN】

「ッ……まさか序盤にここまでライフを削ってくるなんて……」

 そう言って治輝は苦い顔をしたが、不思議と悪い気分ではない。
 思えばこんな気分で決闘をするのは随分と久し振りだった。
 負ける事が許されない、命のやり取り。
 ここ半年以上治輝が経験してきたのは、そういう類の決闘だった。
 でもこれはあくまで、お互いを信用する為の決闘。

「俺はカードを一枚伏せ、ターンエンド!」
 神楽屋は白夜龍を倒した事に満足気な表情を浮かべ、ターンをエンドする。
 治輝は、今一度自分のしている決闘の事を再認識した。
 今は、今だけは――決闘に『恐れ』なんていう感情を、持ち込まないでいいのだと。

「なら行くぜ。俺のターン!」
 そう思うと、不思議と体が軽くなってきた。




【治輝LP2350】 手札5枚   
場:
伏せカード1枚

【神楽屋LP3550】 手札2枚
場:ジェムナイト・マディラ
蘇り魂 伏せカード一枚

 
 治輝はカードをドローし、そのカードを確認すると笑みを浮かべた。
 このカードなら、マディラに挑む事ができる。
「スタンバイフェイズ。俺は墓地から<ミンゲイドラゴン>を特殊召喚!」

《ミンゲイドラゴン/Totem Dragon》 †

効果モンスター
星2/地属性/ドラゴン族/攻 400/守 200
ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、
このモンスター1体で2体分のリリースとする事ができる。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 ミンゲイドラゴンは場に出てきた途端、また鳴き出そうとする。
 が、即座に治輝はメインフェイズに入り、ミンゲイドラゴンを生贄にする。
 リソナは残念がり、神楽屋はホッと息を撫で下ろし……すぐに表情を硬くする。
 二体生贄のドラゴン族モンスター。
 <ジェムナイト・マディラ>より、攻撃力が高いのは明白だからだ。

「来い、ドラグニティアームズ――」

 治輝が宣言すると、無数の枝が辺り一帯を覆い尽くた。
 生気の感じられないはずの廃墟に、命の管が通っていく。

「レヴァ、テインッ!!」

 枝が侵食していく勢いで、辺りにある柱が小刻みに震え出す。
 次第に細かい枝は一つになる事で大きくなり、その中心から閃光が零れ出る。
 その輝きは剣の形を象り、輝きの中から出現した巨大な竜がそれを握った。

《ドラグニティアームズ-レヴァテイン/Dragunity Arma Leyvaten》 †

効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2600/守1200
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する
「ドラグニティ」と名のついたカードを装備したモンスター1体をゲームから除外し、
手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
「ドラグニティアームズ-レヴァテイン」以外の
自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって墓地へ送られた時、
装備カード扱いとしてこのカードに装備されたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

「コイツは……」
「そっちが剣で来るなら、こっちも剣で勝負だ!」

 治輝がそう言った直後。
 レヴァテインが握っていた剣が、ビルのように巨大な大剣へと刀身を変化させていく。
 その青い大剣は、氷のような透明感を感じさせる。

「レヴァテインの効果で<青氷の白夜龍>を装備し――バトルフェイズ。マディラに攻撃!」

 レヴァテインは治輝の言葉に瞬時に反応し、その大剣を静かに真横に構える。
 この空間全てを刈り取る事ができそうな巨大な大剣が、マディラに襲い掛かった。
 マディラはそれを受け止めるが、ジリジリと押され始める。

「剣の勝負ならこっちに分があるみたいだな、テルさん!」
「――ハッ、確かにソイツは認めるしかねぇみたいだな。だが……!」

 次の瞬間。
 <ジェムナイト・マディラ>の目の前に、光の壁が出現する。
 ガキン、と。
 <ドラグニティアームズ・レヴァテイン>の持つ青い大剣は光の壁に阻まれ、甲高い音を鳴らした。
 光の壁はその衝撃を増幅で跳ね返すように、多数の光を放出させ、治輝の場に降り注ぐ。
 治輝は驚愕の表情を隠せず、神楽屋は帽子を深く被り直しながら、ゆっくりと口を開く。

「その差を埋めるのが決闘者の役割――だろ?」

《聖(せい)なるバリア-ミラーフォース-/Mirror Force》 †

通常罠(制限カード)
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 <聖なるバリア・ミラーフォース>
 デッキに一枚しか入れる事の許されない、最強の攻撃反応罠カード。
 それが発する光の奔流に、並のモンスターは耐える事ができない。
 それは<ドラグニティアームズ・レヴァテイン>も例外でもなく、すぐに光となって四散してしまった。

 治輝は俯き、神楽屋は得意気な表情を見せる。
 だが治輝はすぐに顔を上げると、高々に宣言した。

「ならその役を俺は越えるだけだ。レヴァテインには、隠された効果がある!」
「隠された効果……?」
「このカードが効果で破壊された時、レヴァテインには自らの剣にしたドラゴンをフィールドへと蘇生させる事ができる! ……どうやらこの効果は知らなかったみたいだな、テルさん!」

《ドラグニティアームズ-レヴァテイン/Dragunity Arma Leyvaten》 †

効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2600/守1200
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する
「ドラグニティ」と名のついたカードを装備したモンスター1体をゲームから除外し、
手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
「ドラグニティアームズ-レヴァテイン」以外の
自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって墓地へ送られた時、
装備カード扱いとしてこのカードに装備されたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 レヴァテインが破壊された事によって四散した光が、白夜の大剣に集まっていく。
 その大剣の中に、再び巨大なドラゴンの影が映り込む。
 だが神楽屋はその様子を見ても、その得意気な表情は揺るがない。

「ハッ、確かにソイツは知らない効果だ――本来だったら、迂闊な選択だったかもしれねぇ」
 その様子に、治輝は違和感を覚える。
 パーティカルフュージョンの効果は既に切れていて、マディラの攻撃力は2200。
 再び攻撃力3000の<青氷の白夜龍>を蘇生させるのは、相手にとっては辛いはずだ。
 そう思った治輝は訝しんでいると、神楽屋は帽子の奥から治輝を視線で射抜きつつ、言った。
 
「だが『効果』には変わりない――!」

 そう神楽屋が言い切ると<ジェムナイト・マディラ>は左手を前方に向ける。
 左手が赤く輝き、火の玉が連結することで構成された鎖が発射された。
 目標は、目の前の青い大剣。
 大剣はその炎の鎖に拘束され、中空へと押し上げられる。
 マディラは地面を蹴り、そのまま目標である大剣の目の前に近寄り

 一閃。
 蘇生されるはずだった白夜龍を象った剣は真っ二つに折れ、そのまま空中で消滅してしまった。

「な……!?」
「おまえこそ知らなかったみたいだが、マディラが戦闘を行うとき、相手はダメージステップ終了時まであらゆるカードの効果を発動することはできない――目論見が外れたみたいだな?」

 砕け散った氷の剣の氷片が、神楽屋の上から降り注ぐ。
 だが、神楽屋は自分を守る仕草すら見せずに、相手である治輝から視線を外さない。
 それは彼自身の強さを、証明しているかのようだった。

【治輝LP2350】 手札4枚   
場:
伏せカード1枚

【神楽屋LP3550】 手札2枚
場:ジェムナイト・マディラ
蘇り魂