シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナルstage 【EP-07 サイドN】

【治輝LP2350】 手札4枚   
場:トライデント・ドラギオン


【神楽屋LP550】 手札2枚
場:
蘇り魂 伏せカード1枚

「くっ……!」

 想像以上の熱量の攻撃だった――そう神楽屋は思った。
 先程の攻撃といい、どうやら時枝はかなりのレベルのサイコ決闘者らしい。
 だが、耐えられないレベルじゃない。
 神楽屋は帽子を抑え、何とかその膨大な熱量の攻撃をやり過ごした。
「正直軽い火傷くらいは覚悟していたが、案外――」
 治輝に向かって、軽口を続けようとした次の瞬間。
 神楽屋は、目を見開いた。

「時枝、お前――大丈夫か?」
 目の前の対戦相手。時枝治輝は疲弊していた。
 ところどころに火傷のような跡があり、呼吸も荒く、今も肩で息をしている。
「だ、大丈夫大丈夫……最近随分やってなかったからさ」

 やってない?
 神楽屋はその言葉の真意を図りかねて、考え込む。
 その様子を見た治輝は笑みを浮かべ、何かを振り払うように叫んだ。

「さぁ、追い詰めたぜテルさん! ターンエンドだ!」
「……よくわからねぇがまだ元気みてぇだな。俺のターン!」

 若干の違和感を覚えつつ、神楽屋はカードを一枚ドローする。
 そのカードを確認し、神楽屋は笑みを浮かべた。

「――ったく、いつもの事だが遅いっての」

 たしなめるような口調で、神楽屋が一人愚痴る。
 そのカードをひとまず手札に残し、一枚のカードを選び取る。

「俺は<闇の量産工場>を発動」

《闇(やみ)の量産工場(りょうさんこうじょう)/Dark Factory of Mass Production》 †

通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター2体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分の手札に加える。

「<ジェムナイト・ガネット>と<ジェムナイト・クリスタ>を手札に戻す」
「二体のジェムを、再び手札に……?」
 治輝は神楽屋の意図がわからず、ただ息を整える事に集中する。
 そして神楽屋は一枚のカードを掲げる。それは、先程ドローしたカード。

「行くぜ、俺は手札から<ジェムナイト・フュージョン>を発動!」

《ジェムナイト・フュージョン/Gem-Knight Fusion》 †

通常魔法
手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって
決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、
「ジェムナイト」と名のついた融合モンスター1体を
融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
また、このカードが墓地に存在する場合、
自分の墓地に存在する「ジェムナイト」と名のついた
モンスター1体をゲームから除外する事で、このカードを手札に加える。

「専用融合カード……?!」
 炎の戦士<ジェムナイト・ガネット>と水晶の戦士<ジェムナイト・クリスタ>の姿が重なる。
「真炎の輝きを焼きつけろ! 融合召喚! <ジェムナイト・ルビーズ>!」

 真紅の炎が、鎧の形を成す。
 深い青色のマントを翻し、紅蓮の槍を天にかざす。
「そろそろ閉幕と行こうぜ、時枝」

 荘厳な空気を纏った<ジェムナイト・ルビーズ>が
 治輝と、治輝が使役する<トライデント・ドラギオン>の前に立ちはだかった。

<ジェムナイト・ルビーズ>
融合・効果モンスター
星6/地属性/炎族/攻2500/守1300
「ジェムナイト・ガネット」+「ジェムナイト」と名のついたモンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
「ジェム」と名のついたモンスター1体をリリースして発動する事ができる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで
リリースしたモンスターの攻撃力分アップする。
また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

「罠カード<リビングデッドの呼び声>を発動。墓地に存在する<ジェムナイト・クリスタ>を特殊召喚する」

《リビングデッドの呼(よ)び声(ごえ)/Call of the Haunted》 †

永続罠(制限カード)
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

 そのカードを見て、治輝は声を上げる。
「そっちもリビデを引いてたのか……なら、さっきのターン」
「ああ、コイツで<トライデント・ドラギオン>の攻撃を軽減する事はできた。だが……」
 神楽屋は含み笑いのような表情を浮かべ、帽子の奥から相手を見つめ、言った。

「そっちが綱を渡るなら、俺も渡るのが流儀かと思ってな」

 それを聞いて、治輝は笑った。
 本当に久し振りに、心から笑う事ができた。

「テルさんも物好きだな。アンタの決闘は、芯が通ってる気がする」
「俺も、とりあえずおまえの決闘は信じられる」
「なら当初の目的は果たした事になる。……ここで終わりにするって手もあるんだぜ?」
「……ハッ、まさか」

 神楽屋が僅かに口元を吊り上げると、場に存在する<ジェムナイトクリスタ>が消えた。
 互いに互いを信用する為の決闘。
 確かに、初めはそれが目的だった。
 だが、一度燃え上がった決闘は――途中では終わらない。

「<ジェムナイト・ルビーズ>の効果発動! 自分フィールド上の<ジェム>と名のついたモンスター1体をリリースすることで、エンドフェイズまでリリースしたモンスターの攻撃力分<ルビーズ>の攻撃力は上昇する! ブレイズ・カット!」

 ゴウ! と槍を包む炎が激しく燃え上がる。
 その炎は、持ち主である紅蓮の騎士を焼くことはない。
 クリスタの力を得た紅蓮の槍は、ただ相手を屠る為に燃え続ける。
 これで<ジェムナイト・ルビーズ>の攻撃力は4950に上昇した。
 対する治輝の<トライデント・ドラギオン>の攻撃力は3000

「バトルフェイズだ――トライデント・ドラギオンとか言ったな。そのモンスターは」
「……?」
「奇遇だな。ならコイツの『トライデント』を受けてみろ――!」

 そう言うと、ルビーズの槍に宿った炎が紅蓮の騎士の周囲で渦巻き、一瞬だけ姿を隠す。
 その一瞬で、<ジェムナイト・ルビーズ>は跳んだ。
 それに呼応するように<トライデント・ドラギオン>は甲高い咆哮を上げ、自らも炎の渦を巻き起こす。

 だが、遅い。

 <ジェムナイト・ルビーズ>は自らの炎の渦と
 <トライデント・ドラギオン>の作り出した炎の渦をも突き破り、加速する。

「ルビーズで<トライデント・ドラギオン>に攻撃……!」
 弾丸と化した紅蓮の騎士が標的に近寄るのに、一秒とかからなかった。
 瞬間、ドラギオンも槍のように鋭い弾丸を、ルビーズに吐き出す。
 それを最小限の動き――半身を傾ける事で避けると、そのまま標的に槍を突き刺した。

「受けな。クリムゾン――トライデント!!」

 槍が、鋼の様に強靭な鱗を貫通する音が聞こえた。
 槍の先端から三本に枝分かれした炎が生まれ、槍を引き抜く。
 すると、周りを包んでいた炎と共に
 <トライデント・ドラギオン>は消滅した。

 槍の名を冠した龍は
 真紅の名を冠した槍を持つ、紅蓮の騎士に
 跡形もなく、消滅させられた。