シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナルstage 【EP-08 サイドN】

【治輝LP400】 手札4枚   
場:なし


【神楽屋LP550】 手札2枚
場:ジェムナイト・ルビーズ
蘇り魂 リビングデッドの呼び声

【治輝LP】2350→400

「ドラギオン――!?」
    
 <トライデント・ドラギオン>が消滅させられた事実に驚愕させながら、治輝は痛みに耐える。
 先程の反動に加えて、このダメージ。割と洒落になっていない。
 だがあちらも手加減をしているのだろう、そこまでの激痛は感じなかった。
 しかし状況は不利なのは、何も変わらない。
 治輝は上級シンクロモンスターである<トライデント・ドラギオン>を倒され
 神楽屋の場には上級融合モンスターである<ジェムナイト・ルビーズ>が未だ健在だ。
 しかもあのモンスター……

《ジェムナイト・ルビーズ/Gem-Knight Ruby》 †

融合・効果モンスター
星6/地属性/炎族/攻2500/守1300
「ジェムナイト・ガネット」+「ジェムナイト」と名のついたモンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
「ジェム」と名のついたモンスター1体をリリースして発動する事ができる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで
リリースしたモンスターの攻撃力分アップする。
また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 ご丁寧に貫通効果持ちである。守備に回った瞬間、一撃で粉砕されるだろう。
 だが、攻撃する余裕は欠片もない。
 突破口を見つけられずにいながら、治輝はデッキからカードをドローした。

 すると

「――俺は、ミンゲイドラゴンの効果を、発動」

《ミンゲイドラゴン/Totem Dragon》 †

効果モンスター
星2/地属性/ドラゴン族/攻 400/守 200
ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、
このモンスター1体で2体分のリリースとする事ができる。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 正確に言えば英語版なので<Totem Dragon>
 二体目のミンゲイドラゴンを場に並べ、治輝は一枚のカードを選び取る。
 上級ドラゴンを召喚できれば、ジェムナイトルビーズを倒す事はできるかもしれない。
 だが、治輝の手札に存在するドラゴンは、攻撃向きでないカードばかりだった。

「俺は<ミンゲイドラゴン>をリリースし、モンスターをアドバンスセット」
「守備表示――か」

 それを見て、神楽屋は薄く笑った。
 あれが例え守備力3000以上のモンスターだろうと、ルビーズには攻撃力上昇効果がある。
 あのモンスターに警戒する必要は、どこにもない。

「俺はカードを一枚セットし、ターンエンド」
「どうやら本当に閉幕みたいだな、時枝。悪いがトドメだ――!」
 
 神楽屋にターンが回り、一枚のカードをドローする。
 そしてそのカードを、瞬時に発動した。
 
《思(おも)い出(で)のブランコ/Swing of Memories》 †

通常魔法
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊される。

 そのカードの確認すると、治輝は声を上げる。
「ここで引いてくるのかよ……!」
「どうやら俺のデッキも張り切ってるみたいだな。当然、俺は墓地から<ジェムナイト・クリスタ>を復活させる!」

《ジェムナイト・クリスタ》 †

通常モンスター
星7/地属性/岩石族/攻2450/守1950
クリスタルパワーを最適化し、戦闘力に変えて戦うジェムナイトの上級戦士。
その高い攻撃力で敵を圧倒するぞ。
しかし、その最適化には限界を感じる事も多く、仲間たちとの結束を大切にしている。

「そして<ジェムナイト・ルビーズ>の効果発動! ブレイズ・カット!」

《ジェムナイト・ルビーズ/Gem-Knight Ruby》 †

融合・効果モンスター
星6/地属性/炎族/攻2500/守1300
「ジェムナイト・ガネット」+「ジェムナイト」と名のついたモンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
「ジェム」と名のついたモンスター1体をリリースして発動する事ができる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで
リリースしたモンスターの攻撃力分アップする。
また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 ゴウ! と槍を包む炎が再び激しく燃え上がる。
 先程<トライデント・ドラギオン>屠った、最強の力。
 その攻撃力は再び、4950に上昇する。
 神楽屋は帽子の奥の片目で治輝を見据えると、ルビーズに最後の攻撃命令を下した。

「終わりだ。クリムゾン――トライデントォ!」

 ルビーズの槍に宿った炎が紅蓮の騎士の周囲で渦巻き、一瞬だけ姿を隠す。
 その一瞬で、<ジェムナイト・ルビーズ>は跳んだ。

 その瞬間。





「問題だテルさん。ドラゴンにあって、今のジェムナイトにない物……なーんだ?」



 疲れ切った体を振り絞って、治輝はそんな事を言った。
 さすがの神楽屋もその反応は予想していなかったのか、帽子が少しずれてしまう。
「なんなんだいきなり……そういうのは終わってからにしろ」
「いいから答えてくれ。なんだと思う?」
「……ハッ、いいだろう。伊達に探偵気取っちゃいねぇって所を見せてやる。正解は『尻尾』だ!」

 自信満々な表情で、神楽屋はそう答えた。
 
 それと同時に、高空に跳んでいたルビーズが守備モンスターへと襲い掛かる。
 最大の一撃を、叩き込む為に。
 治輝はそれを見ながら、いたずらッ子のように笑った。

「正解は――」
 
 遂に
 紅蓮の槍が、守備モンスターへと突き刺さった。
 攻撃力4950の威力を秘めた、貫通攻撃。
 
 だが、その攻撃は守備モンスターには通らない。

「な――!?」
「ダメージステップ時に罠カードを発動させてもらったぜ。<D2シールド>!」

《D2(ディーツー)シールド/D2 Shield》 †

通常罠
自分フィールド上に表側守備表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの守備力は、元々の守備力を倍にした数値になる。

 それを見た神楽屋は、思わず苦い顔をしてしまう。
「なるほど、守備力を倍に――か。だがそれがどうした?」
「……」
「最強級のステータスを有する<青氷の白夜龍>でも守備力は2500。倍にした所で5000にしかならない。反射ダメージで俺を倒すには――至らないぜ?」
「だな。確かに伝説のカードである<青眼の白龍>やそれの亜種である<青眼の白夜龍>じゃ、テルさんのライフは削りきれない」
「ああ、だが守備力5000は厄介だな。どうやって突破するか……」
 神楽屋が次のターンの事を思案していると、治輝は口元を吊り上げた。

「テルさんが悩むべきなのは次のターンの事じゃない。さっきのクイズの方さ」

 そう言うと、槍が突き刺さった場所から、透き通った皮膚が露出する。
 その皮膚には、傷一つ付いていない。
 むしろ……

「な……?!」
 神楽屋が声を上げた瞬間。
 <ジェムナイト・ルビーズ>が誇る紅蓮の槍の先端に、ピシリと罅が入った。
 50の防御力差ではこうはならない。

「ドラゴンにあって――『今の』ジェムナイトには無いモノ、それは」

 治輝の言葉を引き金に、ゆっくりと一体のドラゴンが姿を現す。
 宝石のような鱗に、鋭利な二本の角。
 今にも割れそうな程透明感のある翼を大きく広げ、その存在を周りに示す。

「――――『ダイヤモンド』の、存在だッ!!!」



《ダイヤモンド・ドラゴン/Hyozanryu》 †

通常モンスター
星7/光属性/ドラゴン族/攻2100/守2800
全身がダイヤモンドでできたドラゴン。まばゆい光で敵の目をくらませる。

「なっ……<ダイヤモンド・ドラゴン>!?」
 神楽屋は予想外のモンスターの登場に、目を大きく見開く。
 そして<ダイヤモンド・ドラゴン>がキラリと強い光を発すると同時に
 ルビーズの誇る紅蓮の槍は、粉々に砕けてしまう。 

「そうだ。そして今のコイツの守備力は――!」

 <D2シールド>の効果で強化され、守備力は二倍になる。
 その数値は5600
 ルビーズの攻撃力は、4950
 そして神楽屋のライフポイントは、残り600

「終わりだテルさん――! シャイニング、リジェクトォ!!!」

 治輝の叫びに続くように。
 粉々に砕けた槍が破片となり、眩い光と共に、神楽屋と<ジェムナイト・ルビーズ>に襲い掛かる。
「……ったく。こんな幕切れアリかよ……クイズも不正解でデュエルにも負けるとなっちゃ、探偵失格だな」
 神楽屋は小さい声で一人愚痴り、帽子を目深に被る。
 だが、不思議と悪い気分ではなかった。

 その極光によって神楽屋の視界は白く染まり――

「――ハッ。眩しいな。ダイヤモンドの輝き、ってのは」
 
 だがどんなに眩しくとも、視線は外さない。
 その眩しい光から、もう二度と目を逸らさない為に。
 かつての自分が手放した欠片を、取り戻す為に。

【神楽屋LP】550→0