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刈らせてもらおう――貴様の頭髪ごと!【遊戯王ZEXAL短編】

遊戯王ゼアル13話ネタバレ注意


「金だ、金を用意しろ! それにヘリもだ!」

 ――この日、ショッピングモールは騒然としていた。
 一人の凶悪犯が客の一部を人質を取り、この場で立て篭もりを始めたのだ。
 現場には銃や警棒を装備した十数人のセキュリティの精鋭いたが、犯人の獲物は鉄バット――迂闊に手出しはできない。
 大勢の客はその様子をスクリーン越しに眺め、ただただ戦々恐々とするばかりだ。

「やっべー……事件じゃん」

 彼、九十九遊馬もその一人。
 クラスメイトの観月小鳥と共にショッピングモールに来ていたら、物の見事に事件とハチ合わせてしまった。
 厄介ごとに小鳥を巻き込みたくないし、ここは関わらない方が身の為なのだが……

 そう頭を悩ませていると、遊馬が首に掛けている鍵が輝き出した。
 小鳥曰く、決闘者の幽霊――アストラルが出てくる予兆だ。
 輝きが収まると、そこには透き通るような青色をした不思議な存在、アストラルが出現する。
 アストラルは出てくるなり犯人の方を見るように、遊馬を促す。

「見ろ、遊馬。あの犯人……髪の色がおかしい」
 アストラルはそう言うと、鋭い目をして犯人に視線を向ける。
 確かに、と遊馬はその言葉を肯定し、スクリーンに映る犯人の髪を眺めた。
 金と藍のツートンカラーで構成された髪の色は、非常識極まりない。

「……ちょっと悪ィ!」
「え、遊馬!」

 小鳥に一言謝り、遊馬は犯人のいる階層に向かい走っていく。
 静止の声が聞こえたが、今は立ち止まるわけにはいかない。
 あのワケのわからない髪の色をした犯人を止める為に、遊馬は走る。
 しかし無我夢中で走り続けた結果、目の前の人に勢い良くぶつかってしまった。

「うあッ!」

 遊馬は尻餅を付き、目の前の人が歩きながらいじっていたデッキが、空中へとばら撒かれてしまう。
 だが、それが地面に付く寸前。

 くきゃん! という謎の音が響いた。

 その音が鳴ると同時に、散らばったカードは空中で静止し――
 同時に周囲の人達も、ピクリとも動かなくなってしまう。

「な、なんだ……?どうなってんだ一体!?」
「時が止まっている!」

 アストラルの発言に、遊馬は驚愕の表情を浮かべる。
(時が止まる……?そんなハクションみたいな事が現実に有り得るのか――!?)
 それに空中のカードをよく見てみると、死者蘇生が二枚ある事に気付く。
 制限カードを二枚も入れるとは、決闘者の風上にも置けない奴だ。

 そう考えを巡らせていると、またもや謎の音が辺りに響いた。

「……口笛?」

 その満足的な音のする方に視線を向けると
 口笛を吹きながら、犯人に歩いていく一人の青年が目に入った。
 犯人とその青年の時は止まっておらず、その事態に犯人は怯える。

「だ、誰だおまえはァ!」
「人の心を淀む影を照らす、眩き光――」

 青年は、漆黒の服を纏っている。
 極めて美麗で、ユニコーンを彷彿とさせる神秘的な声調。
 同時にハッキリとした声で、自らの言葉を続けていく。

「人は俺を――『ナンバーズ・バーバー』と呼ぶ」

 ゾクリ、と。
 周りの温度が急激に下がったような気がした。
 遊馬は悪寒と冷や汗をオーバーレイしたような感覚に囚われ、ピクリとも動けなくなる。
 それは、青年の放つ威圧感が成せる業なのか、それとも。

「ナンバーズ……ババァだと――!?」
 犯人の呻きに近いような声を聞き、遊馬は自分のエクストラデッキを思わず手に取った。
 まさかNo.83のカードと何か関係があるのか……?
 そうこうしている内に青年は前傾姿勢で前方に手を翳し、犯人を威嚇する。

「さぁ決闘だ――貴様の頭皮を曝け出してやる!」
 フォトンチェンジ!
 青年がそう高々と宣言すると――
 漆黒の服は純白の衣装へと変化し、眩い程の光を発した。
 彼の右手には美容師用のハサミが握られ、輝きを隠すようにエプロンが装着される。
 そして花粉対策用の密着型Dゲイザーを装備すると、彼の片目が紅く輝き……ニヤリと口元を吊り上げた。

「さぁ、刈らせてもらおう――貴様の頭髪ごと!」

 決闘!!
 青年と犯人の声が、時の止まったショップの最上階に木霊する。
 隠して彼の
 天上カイトの決闘が、始まった。




 続く




















 次回予告

「ハンターが君の奇抜な髪型を突き止めるのはそう遠くないはず。いや、既に知られているかもしれない」
「なんだお前。俺の髪型は普通だろ」



「これで貴様と俺は離れる事ができない――大人しく散髪させろ!」
 遊馬とカイトが遂に激突!?
 果たして敗者に待ち受ける末路とは―――

次回「ハゲになったら、人の心は死んじゃうんだよ!」

 カットびんぐだぜ俺ー!!

















 ※続きません