シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナルstage 【EP-14 サイドN】

 異形の悪魔は神楽屋と治輝を睨み付けた後、場に存在する<ジェムレシス>へと視線を移す。
 まるで本当の生物のような挙動だった。それを見た治輝は苦い顔を作る。

「我は更に最古式念動をハツドウ。キサマの伏せカードを破壊サセテもらおう」
 
《最古式念導(さいこしきねんどう)/Psychokinesis》 †

通常魔法
自分フィールド上にサイキック族モンスターが
表側表示で存在する場合のみ発動する事ができる。
フィールド上のカード1枚を破壊し、
自分は1000ポイントダメージを受ける。

【影LP】8000→7000

 そう言うと<メンタルスフィア・デーモン>の口から黒い球体が発射された。
 狙いは、神楽屋の伏せカード。
 だが中折れ帽子で表情を隠しながら、神楽屋は僅かに笑う。

「ハッ、悪いがハズレだな――速攻魔法、収縮!」

《収縮(しゅうしゅく)/Shrink》 †

速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。

「これで<メンタルスフィア・デーモン>の攻撃力は半減。返り討ちだ!」
「ソノヨウナ小細工は<メンタルスフィア・デーモン>には通用シナイ。効果発動――レジグ・ソウル! ライフを1000払う事で、対象マホウを無効にしハカイする!」
「な……!?」

《メンタルスフィア・デーモン/Thought Ruler Archfiend》 †

シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/サイキック族/攻2700/守2300
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。
サイキック族モンスター1体を対象にする魔法または罠カードが発動された時、
1000ライフポイントを払う事でその発動を無効にし破壊する。

【影LP】7000→6000

 相手の力を奪う事のできる強力な魔法が、異形の悪魔によって弾き返された。
 それを見た神楽屋は焦りを覚える。これではレシスを守る手段がない。
 反射的に治輝を見るが……先程の決闘で治輝は攻撃を防ぐ類のカードを使っていない。
 全く入っていないわけではないと思うが、それでも極少数だろう。

「<メンタルスフィア・デーモン>で<ジェムレシス>を攻撃――レジグ・ヴォルケイノ!」

 異形の悪魔は両手で漆黒の火球を作り出し、それを<ジェムレシス>に向かい……放った。
 直撃し、レシスは跡形もなく消滅する。
 そして
 レシスを破壊した炎の余波――1000ポイントの超過ダメージを、神楽屋はその身に受ける。

【神楽屋LP】4000→3000

「ぐ……がああああああああああ!?」

 絶叫。
 まるで炎で炙った鉄筋を押し付けられたかような熱さと衝撃を、神楽屋はその身に受けた。
 声を堪えきる事などできるはずもない。周囲の温度が一気に上昇し、喉が焼き切れる様な錯覚を覚える。
 その痛みに神楽屋は、たまらず膝を付いた。
 更に<メンタルスフィア・デーモン>の効果が発動し、レシスの攻撃力分のライフを回復させてしまう。

【影LP6000→7700】

「――ッ、罠カード発動。命の綱!」

 ここで、治輝が動いた。
 味方のダメージを守る類のカードでなかったのが悔しかったのか、その表情には焦りと歯痒さを浮かばせている。

《命(いのち)の綱(つな)/Rope of Life》 †

通常罠
自分モンスターが戦闘によって墓地に送られた時に、手札を全て捨てて発動する。
そのモンスターの攻撃力を800ポイントアップさせて、フィールド上に特殊召喚する。

「手札を全て捨て、テルさんの場に破壊された<ジェムレシス>を強化復活させる!」
「この序盤で手札を全て捨てる!?おまえ、また早まった事――」
「いいから任せてくれ! 俺の手札を全て使い――蘇れ、ジェムレシス!」

《ジェムレシス/Gem-Armadillo》 †

効果モンスター
星4/地属性/岩石族/攻1700/守 500
このカードが召喚に成功した時、
自分のデッキから「ジェムナイト」と名のついた
モンスター1体を手札に加える事ができる。

【ジェムレシス】攻1700→攻2500

 何とか体を奮い立たせた神楽屋は、体の悲鳴を抑え込みながら治輝の方に視線を向ける。
 確かに場をガラ空きにする事は避けたいが、強化された<ジェムレシス>であっても<メンタルスフィア・デーモン>は倒せない。
 その場しのぎの為だけに<ジェムレシス>を復活させるのは、利口な手とは到底思えなかった。
 ……だが

「――速攻魔法、超再生能力!」

《超再生能力(ちょうさいせいのうりょく)/Super Rejuvenation》 †

速攻魔法
このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、
このターン自分が手札から捨てたドラゴン族モンスター、
及びこのターン自分が手札・フィールド上からリリースした
ドラゴン族モンスターの枚数分だけ、
自分のデッキからカードをドローする。

 それでも治輝は、その不効率なプレイングをプラスへと変換させる。
 負けに誘う一手を、勝利への道に変える為に。

「手札からステタカードは全てドラゴン族――ナルホド、合計4枚のドローか」
「……おまえって本当、アドと無縁な奴だよな」
「人より少し多くドローできるだけさ。それに――急がないと」

 治輝はそう言い、化け物がカードを一枚伏せ、ターンをエンドすると同時に<超再生能力>の効果で4枚のカードをドローする。
 そして自分のターン、更にカードを1枚引き――治輝はその場で固まった。

「ちょ……」
「ん、どうした」
「そうか、あの時に……って事はあの2人大丈夫か……?」

 ぶつぶつと意味不明な独り言を始めた治輝を見て、神楽屋は訝しげに視線を送る。
 治輝は何か、心配事が増えたような表情を浮かべていた。

「こうなったらヤケだ――! 俺は墓地の<ミンゲイ・ドラゴン>の効果発動!」

《ミンゲイドラゴン/Totem Dragon》 †

効果モンスター
星2/地属性/ドラゴン族/攻 400/守 200
ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、
このモンスター1体で2体分のリリースとする事ができる。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

「ドラゴン族以外のモンスターが墓地に存在しない時、スタンバイフェイズに特殊召喚できる!」
「ホゥ、サキホドのカード効果で1枚墓地に送ってイタカ!」
「そういう事だ。そしてミンゲイ・ドラゴンをリリース!」

 神楽屋はそれを見て安心した。
 一度しか手合わせをしていないとはいえ、この先は大抵予想が付く。
 あのコンボを決めた後は、強力な上級ドラゴン族を召喚してくれるはずだ。

 予想通り、治輝の場を光が覆い、その中に白く美しいドラゴンのシルエットが浮かび上がる。
 先程の対決で使用した<青眼の白夜龍>か、それとも
 そんな風に、神楽屋は出てくるモンスターを注視し見守っていると

「――現れろ、ライトロードドラゴン・グラゴニス!!」
「おいぃ!?」

 出てきたのは最上級ドラゴンではなく
 先程まで2人が乗っていたはずの、棚引く金色のたてがみを持つ――誰かさんの白き龍だった。

【治輝LP4000】 手札4枚   
場:ライトロードドラゴン・グラゴニス

【神楽屋LP3000】 手札4枚
場:ジェムレシス(攻2500)
伏せカード1枚


【影LP7700】 手札3枚
場:メンタルスフィア・デーモン
伏せカード1枚