シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

オリジナルstage 【EP-10 サイドM】

「クケケケケ、先行!」

 喋った。
 奇声だけじゃなく液状トカゲは喋る事も可能らしい。

タッグデュエルルール(オリジナル)

□フィールド・墓地はシングルと同じく個別だが、以下の事項は行うことができる。
・パートナーのモンスターをリリース、シンクロ素材にすること。
・「自分フィールド上の~」の記述がある効果を使用する際、パートナーのカードを対象に選ぶこと。
・パートナーの伏せカードは通常魔法、通常罠に限り発動する事が可能。
・パートナーへの直接攻撃を、自分のモンスターでかばうこと。
□最初のターン、全てのプレイヤーは攻撃ができない。
□バーンダメージ等は1人を対象にして通常通り処理する。
□召喚条件さえ揃えば、パートナーのEXデッキも使用できる。

「裏側守備セット、魔法罠セット、クケケケケ!」
「……ムカつく喋り方ね。私のターン」

 ピキピキと顔面を強張らせながら、愛城はカードをドローする。
 それを見てのものかはわからないが、液状トカゲはニタニタと笑う。

「永続魔法<神の居城・ヴァルハラ>を発動!」

神の居城-ヴァルハラ

永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「この効果で、手札から<堕天使アスモディウス>を特殊召喚するわ」

堕天使アスモディウス

効果モンスター 
星8/闇属性/天使族/攻3000/守2500
このカードはデッキまたは墓地からの特殊召喚はできない。
1ターンに1度、自分のデッキから天使族モンスター1体を墓地へ送る事ができる。
自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分フィールド上に「アスモトークン」(天使族・闇・星5・攻1800/守1300)1体と、
「ディウストークン」(天使族・闇・星3・攻/守1200)1体を特殊召喚する。
「アスモトークン」はカードの効果では破壊されない。
「ディウストークン」は戦闘では破壊されない。

「効果発動。デッキから天使族を1枚墓地に送り――ターンエンドよ」
「ドロー、裏守備セット! 魔法罠セット! クケケケ!」
「……」

 愛城の宣言もロクに聞かぬまま、液体トカゲのもう一つの頭――トカゲ頭が喋り出し、器用にカードを銜え決闘盤にカードをセットし、ターンをエンドする。
 それを見て、輝王は眉を顰めた。

「――妙だな」
「あァ? 今更バケモンの姿形に突っ込み入れてんじゃねェよ。キリがねぇ」
「そうじゃない。あいつ等のフィールドをよく見てみろ」

 はァ? とでも言いたげな顔で、戒斗は相手のフィールドに目をやる。

【愛城LP4000】 手札4枚
場:堕天使アスモディウス
神の居城ヴァルハラ

【ティトLP4000】 手札5枚
場:なし



【液体トカゲLP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター
伏せカード1枚

【トカゲ頭LP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター
伏せカード1枚

「……へェ、寸分違わねェフィールドだな」
「あいつ等は元は単一の固体だ。同一の思考しかできないのかもしれない。 ――もしくは全く同じデッキ、全く同じ戦術を用いて来る可能性もある。タッグ決闘は互いのデッキをシナジーさせる必要が出てくるが、同一のデッキならその必要もない」
「……偶然って可能性もあるが、こっちはデッキ構成すらよく知らねェモン同士だしなァ。同一のデッキを使われたら、確かに厄介かもしれねェ」

 輝王の考察を聞いた戒斗は心底おかしそうな表情を浮かべ、笑った。
 だがそれは、輝王の言葉の全てに同意したわけではない。
 戒斗は口元を大きく吊り上げる。

「――輝王、この決闘。荒れるかもしれねェぞ」
「……何?」

 輝王が意味ありげな態度の戒斗に訝しげな視線を送るのと、同時。
 ティトがデッキから、静かにカードをドローする。

「わたしはモンスターカードと伏せカードを2枚セットして、ターンエンド」

 タッグ決闘の初ターンは、攻撃ができない。
 自らのモンスターを晒す事によって、相手に情報を与える事は得策ではない。
 だからこそ、ティトも裏側守備表示を選んだ。
 愛城は手の内を晒す事を厭わず、自らの布陣を作る事を選んだが……

自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分フィールド上に「アスモトークン」(天使族・闇・星5・攻1800/守1300)1体と、
「ディウストークン」(天使族・闇・星3・攻/守1200)1体を特殊召喚する。

 アスモディウスには、非常に強力な効果が存在する。
 すぐに破壊されたとしても、窮地に立たされる事は有り得ない。

「クケケケ、ドロー! 反転召喚! <ワームヤガン>! 効果発動!」

ワーム・ヤガン

効果モンスター
星4/光属性/爬虫類族/攻1000/守1800
自分フィールド上に存在するモンスターが「ワーム・ゼクス」1体のみの場合、
自分の墓地に存在するこのカードを
自分フィールド上に裏側守備表示でセットする事ができる。
この効果によって特殊召喚したこのカードは、
フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。
このカードがリバースした時、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を持ち主の手札に戻す。

 だがそれは 『破壊』 限定の耐性だ。
 それ以外の方法を取れる相手ならば、形勢は幾らでも逆転する。

「対象! アスモディウス! クケケケ!」
「チッ、バウンスカードとはね……!」

 <ワーム・ヤガン>が自身に二つ付着しているイソギンチャクを細かく震わせると
 <堕天使アスモディウス>は小さな粉となり、再び愛城の手札へと戻る。
 そして当然、それだけでは終わらない。

「<ワーム・ヤガン>リリース! アドバンス召喚<ワームイリダン> クケケケケ!」

ワーム・イリダン

効果モンスター
星5/光属性/爬虫類族/攻2000/守1800
自分フィールド上にカードがセットされる度に、
このカードにワームカウンターを1つ置く。
このカードに乗っているワームカウンターを2つ取り除く事で、
相手フィールド上のカード1枚を破壊する。

 爬虫類というより岩石のような形をしたモンスターが、フィールドに出現する。
 愛城はそのカードを一瞥すると、小さく舌打ちする。

「セットモンスター攻撃! クケケケケケ!」
「……!」

 鈍重な岩石の化け物は、ティトのセットモンスターを踏み潰す。
 セットしてモンスターである<氷結界の守護陣>の守備力は1600――イリダンの攻撃には耐えられない。
 貴重なチューナーを破壊され、場をがら空きにされてしまった。

「カード2枚セット! カウンター、2つセット!」

 その岩のような肌に、緑色の点が内部から浮き上がる。
 そしてそれは瞳の如くギョロリと愛城に視点を動かし、その目からレーザーが発射された。

「カウンター消費 効果発動! <神の居城ヴァルハラ>を破壊。 クケケケケケ!」

 その光線の目標は、愛城の場に存在する<神の居城ヴァルハラ>
 愛城の後部に出現していた玉座に直撃すると、それは粉々に砕け散る。
 <堕天使アスモディウス>は上級モンスターだ。
 ヴァルハラさえ存在しなければ、再び召喚することは難しい。

「ターンエンド、クケケケケ!」
「なるほど、ただの単細胞ってわけではないようね……」

 だが、愛城は言葉とは裏腹に――目の前の液体トカゲに見下すような視線を送る。
 アスモディウスの召喚は難しい為、モンスターを1枚セットし――

「――ターンエンドよ」
「ドロー、クケケケケ!」

 本体と寸分違わぬ動作で、首トカゲは舌を巧みに操りカードをドローする。
 愛城はその一挙一動を見つめる。
 
「ターンエンド、クケケケケ!」

 そしてエンド宣言。
 それを見た愛城は、静かに口を開いた。

「ティト、あれを裏のまま破壊できる?」
「?」

 カードをドローしようとしたティトは、愛城の言葉に反応し、首を傾げる。
 どういうこと? とでも言いたげな表情を浮かべたティトに対し、愛城は言葉を続ける。

「あのセットモンスターは<ワーム・ヤガン>のような、強力なリバース効果モンスターの可能性が高いわ。効果で破壊しなさい」
「どうしてわかるの?」
「相手に共通点が多い。それにタッグ決闘は本来、似たようなデッキを使用した方が有利。あのカードは警戒すべきよ、確証はないけどね」
「わかった」

 ティトは何の躊躇いもなく愛城の言葉を信じ、短く返事をする。
 そしてカードをドローすると、そのカードを召喚した。

「カードを一枚セットして、わたしは――氷結界の武士を召喚」

《氷結界(ひょうけっかい)の武士(もののふ)/Samurai of the Ice Barrier》 †

効果モンスター
星4/水属性/戦士族/攻1800/守1500
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが表側守備表示になった時、
このカードを破壊し、自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「そして<リミットリバース>を発動するよ。来て――氷結界の守護陣!」


氷結界の守護陣

チューナー(効果モンスター)
星3/水属性/水族/攻 200/守1600
自分フィールド上にこのカード以外の
「氷結界」と名のついたモンスターが表側表示で存在する限り、
このカードの守備力以上の攻撃力を持つ
相手モンスターは攻撃宣言をする事ができない。

 氷の甲冑を纏った武士が、正眼に構え出現する。
 更に<リミットリバース>の効果で、氷の宝具で身を固めた狐の姿が現れる。
 輝王はその二体のモンスターを見て、ティトの狙いを察した。

「チューナーモンスター……愛城の指示通り、シンクロモンスターの効果で破壊する気か」
「――へェ、疑いもしねェんだな」
「あの2人は出会って間も無いはずだが、波長が合うのかもしれない。それに――」
「アイツの事じゃねェよ」
「何?」

 呆れ気味に――しかし戒斗は、心底愉快そうな声を出す。
 輝王がその意図を掴みかねていると……
 銀髪の少女の声が、巨大井戸の中に響く

「<氷結界の武士>に<氷結界の守護陣>をチューニング」

 その声の不思議な圧力に、その場の誰もが黙り込む。
 ティトの背後に無数の氷塊が生まれ、氷山を形成する。

「全てを貫く絶氷の槍……シンクロ召喚

 氷山の一角が紅く輝き、砕け散る。
 その美しい光景に、液状トカゲの動きは止まる。
 何かに見惚れているかのように。笑ったまま表情で、身じろぎすらしなくなる。

「輝け、<氷結界の龍グングニール>」

 少女の声に導かれ
 氷の龍はその存在を顕現させた。

【愛城LP4000】 手札4枚
場:伏せカード1枚
【ティトLP4000】 手札3枚
場:氷結界の龍グングニール
リミットリバース(発動済) 伏せカード1枚


【液体トカゲLP4000】 手札2枚
場:ワーム・イリダン
伏せカード3枚
【トカゲ頭LP4000】 手札5枚
場:裏守備モンスター 伏せカード1枚