シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

オリジナルstage 【EP-11 サイドM】

《氷結界(ひょうけっかい)の龍(りゅう) グングニール/Gungnir, Dragon of the Ice Barrier》 †

シンクロ・効果モンスター
星7/水属性/ドラゴン族/攻2500/守1700
チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上
手札を2枚まで墓地へ捨て、捨てた数だけ相手フィールド上に存在する
カードを選択して発動する。選択したカードを破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「グングニールの効果発動。手札を2枚捨てて<ワーム・イリダン>と伏せモンスターを破壊する。タービュランス!」

 銀髪の少女の声が響き、氷の屑が相手モンスターに襲い掛かる。
 先程見せた液体トカゲの戦術――リバース効果によるバウンスをグングニールが受けた場合、体勢を立て直すのは困難だ。
 だからこそ愛城は裏モンスターの破壊を指示し、ティトも出し惜しみをせずそれを破壊する。

「そう――誰もがそう考える。なんのこたぁねェ、自然な事なんだよ」

 戒斗は、破壊されたカードを睨み付ける。
 すると

 ティトのターンが、突然『終了』した。

「……ティト、何故ダイレクトアタックをしなかったの? 伏せカードに警戒してるようなら――」
「え? わたしまだ――」

 ティトは不思議そうにフィールドを見渡すが、そんな現象を引き起こすカードは存在しない。
 トカゲはそんな少女を満足そうに見つめると、ゆっくりと口を開ける。



「――そう、自然な事です。少しは頭の回る方がいるみたいですね」


 声が響いた。
 先程までまったく聞こえなかった、凛とした声。
 それは先程まで「クケケケケケ」と鳴いていた、あの液体トカゲの声そのものだった。
 愛城はその声を聞いて、納得のいかなそうな声を出す

「……まさかそれが貴方の本当の声? 見かけと不釣合い過ぎて反吐が出るレベルね」
「褒め言葉と受け取っておきますよ優等生さん」
「え……この声トカゲさんなの」

 ティトは思わず首を傾げる。
 その異常なまでに張りのある声がまさか液状トカゲの物だとは思わなかったのか、状況の把握に時間がかかっているようだ。
 確かにこのような美声が、目の前のグロテスクなトカゲから発せられているモノだと連想するのは難しい。
 液状トカゲはその反応に慣れているようで、小さく肩(のようなもの)を竦めて息を吐いた。
 そして、ティトに視線を寄せながら1枚のカードを手に取る。

「先程貴方に墓地に送られたカードはコレ――<ネコマネ・キング>です」

《ネコマネキング/Neko Mane King》 †

効果モンスター
星1/地属性/獣族/攻   0/守   0
相手ターン中にこのカードが相手の魔法・罠・モンスターの効果によって
墓地に送られた時、相手ターンを終了する。

「な……」
「何故その様なカードを使っているのか……そうお思いでしょうがご容赦を、現に貴方達のように、バレバレの効果破壊を使ってくれる決闘者が多いからですよ、例えば――」
「わかりやすい同一性を見せびらかし、相手にすり込んだりする――か?」

 戒斗は液状トカゲの発言を遮るように、戒斗が口を挟む。
 それを聞いたトカゲは、僅かに目を細めた。

「……ほぅ」
「効果の高いセオリーってモンは、知名度も自然と高くなるモンだ。だからこそセオリー通りに動きたい場面ってのは、最大限に罠を生かせる。テメェもそのクチだろ?」 
「なかなかの洞察力ですね。ですが不可解だ……気付いていたのなら何故仲間に伝えようとしないのですか」
「愚問だなァ、ムカツクからに決まってんだろ」
「永洞……どうやら死にたいようね」
「んな初歩くらい自分で気付けねェのが悪いんだよ。やるってんなら相手になるがなァ」

 愛城は戒斗を睨むが、戒斗は更に愛城を煽る。
 そんな戒斗を、愛城はつまらなそうに一瞥すると、目の前に視線を戻す。
 その視線を受けながらも、液状トカゲはやけに凛々しい顔でドローする。

「ターンを強制終了しただけで何を偉そうに。貴方の状況は何も変わらないのよ?」
「確かに貴方の言う通り、フィールドモンスターはがら空きになってしまいましたね」

 強制的にターンを終了させられたとはいえ、ティトの場には先程召喚した<氷結界の龍グングニール>が存在する。
 あのモンスターがいる限り、伏せモンスターは何の役にも立たないだろう。
 
「――ですが、コレならどうです? 未来融合――フューチャーフュージョンを発動!」

《未来融合(みらいゆうごう)-フューチャー・フュージョン/Future Fusion》 †

永続魔法(制限カード)
自分のエクストラデッキに存在する融合モンスター1体をお互いに確認し、
決められた融合素材モンスターを自分のデッキから墓地へ送る。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に、確認した融合モンスター1体を
融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

「対象は<ワーム・ゼロ> このカードは<ワーム>と名の付いたカードなら、何枚でも融合素材にする事ができる!」
「な……!」

《ワーム・ゼロ/Worm Zero》 †

融合・効果モンスター
星10/光属性/爬虫類族/攻   ?/守   0
「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスター×2体以上
このカードの攻撃力は融合素材にしたモンスターの種類×500ポイントになる。
このカードは融合素材にしたモンスターの種類によって以下の効果を得る。
●2種類以上:1ターンに1度、自分の墓地の爬虫類族モンスター1体を
裏側守備表示で特殊召喚できる。
●4種類以上:自分の墓地の爬虫類族モンスター1体をゲームから除外する事で、
フィールド上のモンスター1体を墓地へ送る。
●6種類以上:1ターンに1度、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「――私は、18枚の<ワーム>を墓地に送る!」

 ボトボトボト……と、幾つもの変異生命体達が、乱雑にセメタリーへと落とされていく。
 その光景は異様で、普通の女性なら吐き気を催す程グロテスクなものだった。
 輝王にも余り気分の良い光景には見えず、液状トカゲを睨み付ける。

「意外に紳士だと思っていたが――このような手で二人の戦意を削ごうとするとは。どうやら見込み違いのようだな」
「その認識に間違いはありません。私はトカゲという名の紳士ですからね」
「なるほどな、それじゃァ仕方ねェ」
「……仕方ないのか?」

 愉快そうに口元を吊り上げる戒斗から、輝王は2人の女性陣へと視線を移す。
 あの異種生命体が落下し続ける光景を見た2人が平静でいられるとは思えない。
 ――そう、思ったのだが

「ワーム・ゼロ――出てくるのは2ターン後。出てくると厄介だね、あいしろ」
「そうね。2ターンの間に決着を付けたい所だけど……」
「……」

 どうやら特に問題はないらしい。
 2人とも先程の光景の事を気にもせず、決闘の事だけを考えているようだ。
 輝王はそれを複雑な心境で眺めていると、液状トカゲの声が響く。
 その声の調子は、より敵意を含んだ物へと変わっていく

「2ターン待つ必要はありませんよ。私は――リビングデッドの呼び声を発動!」

《リビングデッドの呼(よ)び声(ごえ)/Call of the Haunted》 †

永続罠(準制限カード)
自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

 この状況で、リビングデッドの呼び声
 それが意味する事は、この場にいる誰もがわかっていた。
 <未来融合>による18枚もの墓地肥やし
 そしてリビングデッドの呼び声は、殆どのモンスターをノーコストで蘇生を可能とする優秀なカード。
 それはつまり、全てのワームを自在に蘇生できるといっても過言ではない。
 
 地響きが聞こえた。
 墓地の20枚の中から選ばれる1枚……その存在感は、召喚される前からその存在を主張する。
 そして生まれる事を許可するかのような柔らかい声で、液状トカゲは宣言した。
 そのモンスターの、名前を


《ワーム・ヴィクトリー/Worm Victory》 †

効果モンスター
星7/光属性/爬虫類族/攻   0/守2500
リバース:「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスター以外の
フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。
このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在する
「ワーム」と名のついた爬虫類族モンスターの数×500ポイントアップする。


 その名前の意味するものは、勝利。
 それを体現するかのように赤黒い物体から幾つもの手が生え、それは一つの形を象って行く。
 勝利の、Ⅴ――
 それは同時に、対戦相手の敗北も揶揄する。
 紳士的な液状トカゲは薄ら笑いを浮かべ、その姿を感慨深く見つめた。

「ワームヴィクトリーの攻撃力は墓地のワームの数を500倍した数値――つまり」
「攻撃力9500……!?」

 輝王の驚愕が、声となって表に出る。
 それは本来なら――普通の決闘では有り得ない数値。
 その数値を可能にしているのは、墓地に存在する様々な姿形をしたワーム達。
 勝利を手にする為には、犠牲は欠かせないのだと……そう物語っているような効果だ。

 愛城は、無言でティトの方に視線を向けた。
 今から狙われるのは、確実にティトが召喚した<氷結界の龍グングニール>だろう
 グングニールの効果は強力だ
 例え攻撃力9500だろうが、その効果を以ってすれば問答無用で破壊する事が可能な……強力無比な効果
 もしティトのターンまでグングニールを守る事ができれば、この脅威は乗り切れる。

「バトル――ワームヴィクトリーで、氷結界の龍グングニールを攻撃」

 だが、その攻撃力を防ぎきるのは――簡単ではなかった。
 ティトは伏せカードを開く。
 ごめんね、と
 自らのモンスターに呟きながら

「罠カード――ガード・ブロック」

《ガード・ブロック/Defense Draw》 †

通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 <ワーム・ヴィクトリー>から幾つもの手が伸び、グングニールを捉える。
 拘束された氷の龍の中央に手が突き刺さり、小さな氷片となって砕け散った。
 ティトにも同様に手が伸びていったが、それは<ガード・ブロック>によって阻まれ、同時にカードを一枚ドローした。

「そうしの服――これ以上よごさせない」
「それはこの私相手に無傷でこの決闘を終わらせると?」

 コクリ、とティトは小さく頷く。
 表情には出ていないが、やはり未だに服を汚された事を怒っているようだ。
 トカゲが紳士になろうが、それは変わらない。

「ではお手並み拝見といきましょうか――私はモンスターをセットし、ターンをエンドします」