シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル×stage=02

「……何故そういう結論になる? 理由を聞こうか、時枝治輝」
 輝王は訝しがるように、治輝に問いを送る。
 それでも、治輝の視線は動かない。
「砂神のした事は、許される事じゃない」
「確かにそうだし、俺もムカついてる! だけどなんでそれが殺すって事になるんだよ!?」
「コイツは七水――、達を危険に合わせた。力を奪い、殺そうとした」
「殺そうとしたからやり返そうってのか!?」
「今回は上手く行ったかもしれない。でも砂神はまた仕掛けてくるかもしれない。その時――上手く行く保証はあるのか?」
「……ッ」
 創志はティト達の事を考え、言葉に詰まる。
 次も上手く行く、と息巻くのは簡単だ。
 だが、その際危険に晒されるのは自分だけではない。
 それを考えれば、治輝の言う事も一理あるのかもしれない。 
「だけど、そんなの――!」
 創志が尚も叫ぼうとするのを、輝王が手で制した。
 更に一つ歩みを進め、廃墟の大地を踏みしめる。
「復讐は、悲劇の連鎖を生む――それをわかっているのか? 時枝」
「そうだな、その通りかもしれない」
 予想に反し、治輝はその言葉を認めた。
「でも」
 それを認めた上で、治輝は振り返る。
 先程まで肩を並べた盟友と、対峙するように。

「仮に"連鎖しない"のなら、何も問題はないだろ?」

 仮面の様な無表情で、治輝は言った。













オリジナル × stage -02


 比良牙は首元に<レヴァテイン>の大剣を突きつけられながら、再びため息を吐く。
「あーあ、これは邪神の毒気にあてられちゃったのかもしれないね」
「……毒気?」
 場の空気にそぐわない、飄々とした声調に若干の苛立ちを含ませながら、創志は比良牙に顔を向ける。
「邪神の毒気って奴さ。それにあてられた人間は感情のバランスが崩れて、心の闇は増大する」
「……随分と気前がいいじゃねぇか。本当なんだろうな?」
「主様のピンチだしね、嘘は言わない。利用できる者は何でも利用させてもらうよ」
「でも、だったらなんで俺や輝王は平気なんだ?」
「君達がそうならないのは耐性というよりも『適正』と言った方が相応しいかもしれない」
「適正? 俺達に?」
「逆だよ。彼に適正があり過ぎたのかもしれない。全く厄介な事をしてくれたよ」
「適正――か」
 輝王は、比良牙の言葉を反芻する。
 仮に邪神に対する適正という物が存在し、治輝にそれがあるのだとすれば――確かに説明はつく。
 しかし、何かピースが足りない様な違和感を覚えた。
 だからこそ、コート姿の青年は処刑人の様な目をした青年に向かい、言い放つ。
「時枝――俺と、決闘をしてもらうぞ」
「……」
「勝ったら砂神を殺す事は諦めろ。それでいいな」
「……仕方ないな、それで納得してもらえるなら」
 治輝は薄く笑いながら、決闘盤を構える。
 輝王は治輝を真っ直ぐと見据え、デッキに手を添える。
「ちょっと待った! 俺もその決闘受けさせてもらうぜ。治輝の目を覚まさせてやる!」
「皆本……」
「それに、こんな形は嫌だったけど――治輝とは一度決闘したかったからな」 
 創志はそう言い、輝王の横に並び立つ。
 動じないその変わらぬ様子を見た輝王は、若干の頼もしさを感じながら、治輝に視線を向けて言い放つ。

「そういう事だ――悪いが、二人同時に相手をしてもらうぞ」
治輝が頷いたのを確認して、輝王は言葉を続ける。
相手にぶつけるのではなく、自らに言い聞かせるように、
「……俺なりに計らせてもらう。時枝治輝という男を」

 
 ■■■


 二人の気迫は本物だった。
 だからこそ、色々な心情が渦巻いていく。
 だからこそ、治輝は頷く事も、言葉を返す事もしなかった。
 ただ決闘盤を構える。
 それが、今の自分にできる全てだと。

「決闘――!」

 三人がそれぞれ何度も口にしてきた言葉が、一つの叫びとして重なる。
 それが木霊するのは砂漠ではなく、廃墟。
 ただ一人の青年だけが創り出す事のできる――ただ一つの風景だった。