シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル×stage=08

<A・O・J カタストル/Ally of Justice Catastor> †
シンクロ・効果モンスター
星5/闇属性/機械族/攻2200/守1200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが闇属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、
ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

 ――AOJカタストル。
 闇属性以外のモンスターを効果で破壊してしまう。恐ろしいモンスター。
 しかし、倒す方法は至って単純だ。
 闇属性以外のモンスターで勝てないのなら、闇属性で戦闘を仕掛ければいい。
 それが<AOJカタストル>の特性であり、弱点だ。
 だが、1枚のカードの存在が、その解決法すら飲み込んでいく。

<エレメントチェンジ>
永続罠(オリジナルカード)
発動時に1種類の属性を宣言する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
相手フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した属性になる。

 指定された属性は光。
 例え闇属性の――それも攻撃力2200を超える上級モンスターを呼ぶ事に成功したとしても、あの白銀の兵器と同様の土俵に上がった途端に、その属性は光へと変貌する。
 つまり、輝王の操る今の<A・O・J カタストル>は――
「……無敵、か」
 治輝はデッキの一番上のカードを手に取り――引くのを躊躇った。
 あのカードを攻略する手段。
 それを頭に思い描き、それを現実にする為の鍵を手繰り寄せなくてはいけない。
「俺のターン……ドロー!」
 引き抜いたカードを確認し、治輝は自身の手札と現在の場、手繰り寄せたそれを同時に見比べる。
(これなら――)
 自身の中で呟いた言葉は、決して外には出さない。

「自分フィールド上にモンスターが存在せず、墓地にドラゴン族しか存在しない場合。墓地にいるこのカードを特殊召喚できる。来い――ミンゲイドラゴン!」

《ミンゲイドラゴン/Totem Dragon》 †
効果モンスター
星2/地属性/ドラゴン族/攻 400/守 200
ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、
このモンスター1体で2体分のリリースとする事ができる。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 だからこそ、治輝は堂々と宣言する。
「このカードをリリースし、上級ドラゴンを召喚。現れろ――<ダークストーム・ドラゴン>!」
 自らを黒霧で包んだ、漆黒のドラゴンを。

《ダークストーム・ドラゴン/Darkstorm Dragon》 †
デュアルモンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2700/守2500
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
魔法・罠カード1枚を墓地へ送る事で、
フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

 暗雲――。
 それは、よくないものが天空より降り注ぐ予兆。
 それは、自らに危機が訪れる兆候。
 それは、心を覆い尽くす苦しみや悩み。

 しかしこの竜の名は、暗ではなく闇。
 この竜の名は、雲ではなく嵐。
 凶兆とも取れる暗雲の二文字を、それぞれ昇華した言葉の集合体。
「こ、コイツは……?」
 その妖しさ、底の知れなさを感じ、創志は不気味そうにその竜を見上げる。
 悪魔と称しても違和感のないその風貌が、アレは危険だと認識させる。
 輝王正義も同様に、警戒心を強くする。
「……一見効果の無いモンスターかと思ったが、どうやらそうではないらしい」
 そして輝王がその警戒を高めるという事は、そのモンスターの正体を瞬時に看過するという事でもある。
 創志は輝王に続きを促し、輝王はそれに頷く。
「あのモンスターはデュアルモンスター……次のターン再度召喚する事で、その効果を発現できるようになる。そしてその効果は――<大嵐>と同等の力を持つ」
「<大嵐>!?」

《大嵐/Heavy Storm》 †
通常魔法(制限カード)
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。

 当然、強力なカードと同じだけの効力を発揮するには代価が必要だ。
 表側の魔法か罠カードを喰らわなければ、ダークストームはその効果を発動できない。
 だが、治輝のフィールドには既に<アドバンスド・フォース>が存在している。
 そして治輝がその効果を発動する真の狙いは――。
「そうか、治輝の奴の狙いは……<エレメント・チェンジ>!」
「珍しく察しがいいな、皆本創志」
「珍しくって何だよ! 馬鹿にしてんのか!」
「<エレメント・チェンジ>が破壊されれば、生粋の闇属性である<ダークストーム・ドラゴン>の攻撃をカタストルでは防げなくなる。 ――恐らく、それが時枝の狙いだろう」
 だが、と輝王は心中で呟く。
 眼前に存在するのは次のターンコストにするであろう<アドバンス・フォース>
 あのカードが存在する事の意味を、輝王は忘れてはいない。
 治輝があのカードを使い、序盤に仕掛けたのは心理戦だ。
 そんな人物が"ダークストーム・ドラゴンを囮にしてくる"可能性が、何故無いと言い切れるのか。
(……それは単なる憂いだ。確証があるわけではない)
 しかし輝王はその可能性を憂いつつも、現状を良しとした。
 ダークストームを囮にする程の何か――それは、輝王正義には見当が付かない。
 <AOJ カタストル>と<エレメント・チェンジ>を同時に攻略し、ダークストームを見せる事で裏を書けるカード。
 今までの治輝が使ったカードに、それに該当するカードは存在しない。
 だからこそ、輝王は現状を見失わない。
 見えないカードを警戒し縮こまるのは愚策でしかない。
 <アドバンスド・フォース>の発動条件が上級モンスターである以上。あれを倒さず守備を固めるのは論外だ。
 どんな罠が待ち受けようとも、これは次のターンに、倒さなければならないカードだと、輝王は確信する。
(だが――)
 輝王は、隣に立つ皆本創志に視線をやる。
 次のターンは<AOJ カタストル>を従えた輝王の物ではなく、フィールドにモンスターが存在しない、皆本創志。
「心配すんなって、カタストルを守る為にも……あのドラゴンは必ず俺が倒してやる!」
「皆本――」
 危惧の念を抱く輝王の心中を知ってか知らずか、創志は迷いなく宣言する。
 その断言とも取れる言葉に、恐らく確信は無いのだと、輝王正義は知っている。
「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」 
 治輝の言葉が響き、創志はデッキを見つめ、慎重に指を添える。
 それは祈るような……同時に挑むような手の動き。
 恐らく皆本創志の手に、現状を打破するカードは無いのだろう。
 だが、輝王正義は知っている。
 この追い詰められた状況において――彼以上に頼りになる決闘者など、存在しないという事を。


【治輝LP】8000 手札4枚
場:ダークストーム・ドラゴン
伏せカード1枚 アドバンスド・フォース

【輝王】 手札2枚
場:AOJカタストル
エレメント・チェンジ(光属性を指定) 伏せカード1枚 
【創志】 手札3枚
場:ジェネクス・コントローラー
伏せカード1枚

【輝王&創志LP】4100

 □□□




 輝王の予測は概ね当たっていたが、全てではない。
(――現状の手札で、ダークストームドラゴンは倒せる)
 だが、それには2つ欠点がある。

 1つ目は現状で最強のモンスターである<AOJ カタストル>を失う事。
 2つ目は時枝治輝に見知ったモンスターを召喚する事は、危険であるという事。

 だからこそ、創志が今求めるのは新たなカード。
 治輝の知り得ない力を、今この場に呼び出す為の1枚。
「俺のターン――ドロー!」
 込める。
 手繰り寄せる。
 今必要な、最善のカードを。
 そう念じ、創志は弧を描くように勢い良くデッキからカードを引いた。
「よし、これで!」
 手札と、今加わったカードを組み合わせ、可能性を吟味する。
 <ダークストーム・ドラゴン>を倒す為の道標を、自らの手札と場を照らし合わせ――
 創志の、顔色が変わる。

「……」
「……どうした? 皆本」

 こちらの様子を窺ってくる輝王に、創志は気まずそうに視線を背ける。
 ドローしたカードを見た瞬間は、これで行けると直感した。
 しかし、今までの経験を踏まえ、ここから繋がる可能性を吟味してみれば――
 
 このターン<ダークストーム・ドラゴン>を打倒するはずの道筋は
 その途中で、物の見事に途絶えてしまっていた。