シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル×stage=10

「まだだ――アームズ・エイドの効果発動! 破壊したモンスターの攻撃力分のダメージ、受けてもらうぜ!」

《アームズ・エイド/Armory Arm》 †
シンクロ・効果モンスター
星4/光属性/機械族/攻1800/守1200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとしてモンスターに装備、
または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、
装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。
装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 ダークストームの攻撃力は2700
 そのダメージの原因である衝撃波を一身に受け、治輝は目を細める。

【治輝LP】8000→4600

 その一撃を見て、先の言葉を受けて、砂神は思う。
 目の前の男が言った言葉が、今の一撃が通った理由が、理解できないと。
 それを見た治輝が、小さく呟く。
「砂神――おまえは、ああなりたかったんじゃないか?」
「何を馬鹿な……あのようなプレイングも後先も考えない馬鹿になりたい等と思うわけがない!」
「創志だけじゃない。輝王の――あいつ等の様に、誰かの力になりたかったんじゃないのか?」
「……」
 砂神は、かつての自分を思い出す。
 自身の力を、正しき方向に使おうとしていた時があった。
 自身の力は、この世になってプラスに成り得るのだと、信じていた時があった。
 だが、今の砂神にとって、あれは既に捨て去ったモノに過ぎない。
 それを知ってか知らずか、治輝は言葉を続ける。
「……それは本当は、捨てちゃいけないものだったんじゃないのか?」
「貴様に何がわかる。……いや、貴様ならわかるはずだ!」
 砂神は声を荒げる。
 自らの感情の一部が具現した影。
 それと対峙したのは、貴様のはずなのだと。

「貴様も俺と同類だろうが! プラスになろうと切望しても、マイナスにしか成れず、それ以外の物に成れなくなった不変の値! 貴様は自らの世界で何やら答えを見つけ、悟った振りをしているが……そんな物はまやかしだ!」
「……」
「貴様と俺様はマイナスでしか有り得ないんだよ! 日向にいる奴らにとってはその場に居るだけで罪な、タダの害悪だ!」
 それは果たして、時枝治輝に向けられた言葉なのか。
 砂神は憎悪と呪いを込め、目の前の硝子に叫び続ける。
「邪魔なんだよ……貴様と、俺様のような存在は!」
「……黙って聞いてりゃなんだよその理屈! 俺は治輝の事、そんな風に思ったりしねぇ!」
「言葉では何とでも言える。直に無理が生じる、そういう風に出来ている!」
「そんなの――」
 創志が尚も反論しようとすると、砂神の顔つきがガラリと変わった。
 その髪は垂れ下がり、片目を隠す。だが、その眼光は鋭さを増す。

「俺様は――――僕はそれを、何百、何千回と繰り返してきた! 貴様に、貴方にそれがわかるのか!」

 その言葉の、重み。
 それを言う砂神の表情が、創志の二の句を抑え込む。
「どんなに世界を巡っても、僕が必要とされたのは力だけだった。時枝治輝の言う通り、僕個人を必要をする人はこの世にはいない!」
 砂神は言葉を切る。
 砂神の能力は、その世界に存在する全てを把握する。
 それは自らの捉えた事も例外ではない。
 鮮明に、事細かに詳細に、その時起きた事を映し出せる。
 この世にはいない。
 それは現在の話なのか。
 それとも、過去には存在していたのか。
「求められたのが力だけならば――それを求めて何が悪い? それを極めようとして何が悪い!? これは世界の選択なんだよ!」
 砂神の慟哭が、その場に響き渡る。
 創志が何かを言おうと口を開こうとした、次の瞬間。
 
「そうだな。確かに俺やお前はマイナスだ」

 治輝は呟くように、そう言った。
 信じられない物を見るような目で、創志は驚愕を露にする。
「な、何言ってんだよ治輝。お前やっぱり邪神の……」
「邪神の毒気……か。正直よくわからないんだ。それがなんなのか」
「……」
 輝王はそれを聞き、心中で 「やはり」 と呟く。
 今までの攻防。駆け引き。
 それら全ての行動には、輝王にとって意味があった。
 確かめたかったのはただ一つ。

 時枝治輝が、正気であるかどうか。

「……だから、今のは俺自身の言葉だ」
 そんな輝王に確信を感じさせる言葉を、治輝自身が言い放つ。
 そう、今までの決闘は――決して狂った者が行える物ではなかったのだ。
 輝王はそれを踏まえ、単刀直入に問いかける。

「お前は、俺の知る時枝治輝で間違いないな?」
「……ああ、邪神とかは関係ない」

 輝王が尋ね、治輝は即答する。
 その目をしばらく睨み、輝王は目を逸らす。
「皆本。手札はもう無いのだろう?」
「あ、ああ……ターンエンドだ」
 その事実に、創志は動揺を隠せない。
 今までは、邪神の毒気が払えば、元の治輝に戻ると、そう信じて戦ってきた。
 だが、彼は彼のままだった。
 彼自身の願いが、砂神の殺害なのだとしたら……。
「……余計な事を考えるな。皆本」
「余計な事……? 輝王、お前!」
「……決闘に集中し、決闘を見ろ。お前はそれでいい」
 輝王の意味ありげな言葉を受け、創志は叫ぼうとしていた気概を削がれる。
 だが、言葉の真意まではわからない。
 そのやり取りを見ていた治輝は、ゆっくりとカードをドローする。
「俺のターン、ドロー」

【治輝LP】4600 手札5枚
場:ダークストーム・ドラゴン(戦闘破壊)
伏せカード1枚 アドバンスド・フォース

【輝王】 手札2枚
場:AOJカタストル
エレメント・チェンジ(光属性を指定) 伏せカード1枚 
【創志】 手札0枚
場:Aジェネクス・アクセル
伏せカード1枚 蘇りし魂(使用済) アームズ・エイド(装備対象Aジェネクスアクセル)

【輝王&創志LP】4100 
 
「俺は手札から<調和の宝札>を発動。手札から<ドラグニティ・ファランクス>を捨て、カードを2枚ドローする」

《調和の宝札/Cards of Consonance》 †
通常魔法
手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 治輝は加わった2枚のカードを眺める。
 その内の1枚を入れた経緯を思い出し、自嘲気味に笑う。
「……でも憧れるのは、きっと自由だよな」
 そう呟くと、治輝は1枚のカードを発動させ――次の瞬間。

 廃墟から、音が消えた。