シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル×stage=15

【治輝LP】4600 手札3枚
場:F・G・D
伏せカード3枚 アドバンスド・フォース

【輝王】 手札0枚
場:
エレメント・チェンジ(光属性を指定) ウィキッド・リボーン(使用済) 伏せカード3枚 
【創志】 手札0枚
場:<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>
蘇りし魂(使用済) 幻惑の巻物(対象クレアシオン、光指定) 

【輝王&創志LP】2700 

【治輝LP】4600→3800
 
 
 白銀の機龍に胴体を貫かれた<F・G・D>は、身じろぎ一つせずに四散する。
 その結果に不満を抱く事なく、運命だと受け入れるかのように。
 治輝は目を瞬きせずに、消えていった邪龍の最後を見届けた。
 創志は強敵を倒した事で歓喜に震えるも……治輝のライフを見て困惑する。
「……なんであんなにライフが残ってるんだ?」
「罠カード<ダメージ・ダイエット>の効果だろう。リミッター解除を発動する寸前、時枝が発動していた」

《ダメージ・ダイエット/Damage Diet》 †
通常罠
このターン自分が受ける全てのダメージは半分になる。
また、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
そのターン自分が受ける効果ダメージは半分になる。

 輝王がそう言うと、治輝は目を細め輝王の伏せカードへ視線を送る。
 彼は創志の<リミッター解除>に対し、何か別のカードを発動しようとしていた。
 だが<ダメージ・ダイエット>の存在を確認するや否や、その動きを硬直させたのだ。
「そうか……でも<F・G・D>は倒したんだ。俺達の力で!」
「そうだな。だがこのままでは<リミッター解除>の効果で<A・ジェネクス・クレアシオン>は破壊される。時枝の手札が健在の今、それは避けるべきだろう」
 輝王がそう言うと、傷だらけの<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>の周辺の空間が歪み、その姿を消した。
 発動したカードは<亜空間物質転送装置>

<亜空間物質転送装置>
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
このターンのエンドフェイズ時までゲームから除外する。

 消えた<クレアシオン>は消滅したわけでも、破壊されたわけでもない。
 言うならば破壊された身体を修繕する――異次元の格納庫へと移動させたに過ぎない。
 そして同時に、そのカード効果とは別の『歪み』が発生した。それは輝王と創志の後方、治輝の視線の先で渦を巻く。
 それらの事象を見た治輝は息を吐き、砂神を振り返る。
「砂神。あのモンスターを見てどう思った?」
「……忌々しい光だ。見てるだけで吐き気がする」
「……」
「貴様とて同じだろう。時枝治輝。まさか羨望という純粋な感情しか抱かない等と、世迷言は言わないだろうな」
「まさか。俺はそんな聖者にはなれないよ」
 治輝はそう返事をし、夢を見ていた頃の――昔の木咲の事を思い出す。
 あいつは、皆の笑顔を作れる奴だった。
 あいつは、自分の世界を作れる奴だった。
 あの頃夢を嫌っていたのは、それを見るのが辛かったから。
 自分だけの夢を作り出していた奴が、どうしようもなく妬ましかったから。
 そしてそんな嫉妬や憎悪にも似た感情を抱く自分が、誰よりも嫌いだったから。
 可能であればああなりたいと、強く願った。
 何かを作り出せる様な存在になりたいと、切望した。

 ――治輝は目を見開き、目の前の"創造"を見上げる。

 創志のターンが終了し、伝説の機龍が再び場へと舞い戻ってきたのだ。
 その銀の装甲は完全にその色を取り戻し、悠然と輝き続ける。
 自分が進まなかった、進めなかった道の極地。
 このモンスターは正にその象徴であるように、治輝は感じる。
「……お前は、まだペインじゃない。まだ間に合うんじゃないのか?」 
「――殺す予定だと言った人間に問いかける言葉とは思えんな」
 砂神は何かを考えているのか、髪が逆立っていてもその気性は落ち着いている。
 そして睨むように、返す。
「俺様は貴様を知っているが、貴様は俺様を知らない。だから教えてやろう。今更プラスに変わる事が出来ない程の悪行を、俺様はし尽くしてきた。貴様の言葉を借りるなら、確かに俺様は死すべき人間だ。普通の人間にとってはな」
「……」
「貴様も無理に染まろうとするだけ無駄だ。いずれこちらの道に進む事になる。遅かれ早かれな!」
 その言葉に自嘲や憐憫等の感情は浮かんでおらず、淡々と事実を並べるだけの物だ。
 だからこそ、それは嘘偽りの無いモノだと伝わってくる。

【治輝LP】3800 手札3枚
場:
伏せカード3枚 アドバンスド・フォース

【輝王】 手札0枚
場:
エレメント・チェンジ(光属性を指定) ウィキッド・リボーン(使用済) 伏せカード2枚 
【創志】 手札0枚
場:<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>
蘇りし魂(使用済) 幻惑の巻物(対象クレアシオン、光指定) 

【輝王&創志LP】2700 

 治輝は砂神から視線を外し、落ち着いた動作でカードをドローする。
 だがその軌跡は曲がらず、自らの手の中に可能性を導く。
「俺は手札から<ドラグニティ・アキュリス>を召喚」

ドラグニティ-アキュリス/Dragunity Aklys》 †
チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/ドラゴン族/攻1000/守 800
このカードが召喚に成功した時、
手札から「ドラグニティ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚し、
このカードを装備カード扱いとして装備する事ができる。
モンスターに装備されているこのカードが墓地へ送られた時、
フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。

 フィールド上に、矢と見間違えるようにか細い小さな竜が出現する。
 それを確認すると治輝は背中を向けたまま、砂神に口を開く。
 
「悪いが、俺はそうなる気はない。約束もしたからな」
「――元の世界に戻ると言うのか? 害でしかない貴様が、再び災悪を招く可能性を無視して!」
 言われるまでもなく、それは治輝の頭で何度も再生された事項だった。

 やっとの思いで帰った自分に、笑いかけてくれる木咲。
 元に戻った懐かしい声を聞いて、涙を流す自分。
 そんな様子をからかいながら、暖かく見守ってくれるかづな。

 異世界に渡った長い間。それは何度も何度も、夢として治輝の中で再生された。
 それは幸せな夢。治輝の願望であり、もっとも望んでいる1つの結末。
 だが、夢はそこで終わらない。
 
 さっきまで笑っていたはず木咲の声が掠れて行き、近付くと激痛に悲鳴を上げる木咲。
 それを見て平静を失い、ペインとして暴走していく自分。
 それを止めようと必死で駆け寄ってくるかづなを、木咲と同じ様に――
 夢はいつも、ここで止まる。

「……お前なんかに言われるまでも無い。そんなの、自分で何度も考えた事だ」

 揺らがなかった。
 そう言ってしまえば、それは嘘になる。
 だがその答えは
 1度出した答えを、嘘にしない為に。
 
「――俺は、それに負けない!」

 何かを穿つ様な勢いと共に、治輝は1枚のカードを発動する。
 それは自らの願いを託してデッキに投入していた――1枚の罠カードだった。



<異次元からの帰還>
通常罠
ライフポイントを半分払って発動する。
ゲームから除外されている自分のモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
エンドフェイズ時、この効果で特殊召喚した全てのモンスターは
ゲームから除外される。