シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル×stage=19

「行くぞ。レム!」

 治輝の叫びと同時に、曖昧な姿を揺らめかせる<レムナント>は空高く飛翔する。
 その攻撃力は2200
 3300の<クレアシオン>には、届かない数値。
 だが<レムナント>は、自身の効果で己の限界を引き上げる。
 それは創志も輝王も、先の戦いで理解している事だ。
「<クレアシオン>!」
 創志の言葉に<クレアシオン>もブースターを点火させ、空中へと機体を上昇させる。
 だが、先手を打ったのは<レムナント・ドラグーン>だ。
 その見えない翼を羽ばたかせると、曖昧だった姿に蒼白い色が浮かび上がる。
 そして、同時に水晶の気筒が、出現した。

「1枚目! <青氷の白夜龍>!」

 氷霧のような煙を上げた気筒を点火させ<レムナント>は<クレアシオン>へと突撃する。
 これで攻撃力は3200
 <クレアシオン>と同等の力を手に入れた<レムナント>は、その身を<クレアシオン>の心臓部へと矢のように滑り込ませる。
「――まだだ! まだ届かねぇ!」
 創志が叫ぶと<クレアシオン>が有する2つのアームが<レムナント>の突撃を阻む。
 その握力は強力で、レムナントの身体は軋みを上げた。

「……2枚目! <ドラグニティ・ブランディストック>! 3枚目! <ドラグニティアームズ・レヴァテイン>!」

 <レムナント>に2つ目の槍型の気筒が出現し
 ほぼ同時に、漆黒の剣を模した気筒が装着され
 その2つが同時に、点火した。 
 不死鳥のような目は鋭さを増す。その勢いは先程の比ではない。
 
「同時使用かよ!?」
「押し切れええええええ!!」

 白銀のアームが悲鳴を上げ、それを支える間接部が軋みを上げる。
 攻撃力5200となった<レムナント>の突撃を
 <クレアシオン>は、もう抑えきることができない。

 硝子の割れるような、甲高い音がした。
 鉛が転がる、鈍い音がした。

 それは、白銀のアームが砕け散った音。それが眼下の廃墟に転がった音。
 自らのアームが限界だと悟った<クレアシオン>は機体を反らし、不死鳥の突撃を間一髪で回避する。
 しかし、それで終わりではない。
 <レムナント・ドラグーン>が音速にも近い速度で反転し、再びその身を滑り込ませてくる。

「――ッ、翼だ!」

 創志の指示を受けた<クレアシオン>は、自らが有する白銀の翼を折りたたみ、即席の盾として突撃をガードする。
 その翼は強固で、今の<レムナント>の力を抑え込んでいる。
 何とか凌げると思った、次の瞬間。

「4枚目! <デコイ・ドラゴン>!!」

 創志に、冷や汗が浮かぶ。
 攻撃力が6200となった<レムナント>の攻撃を受ければ、2900ポイントのダメージを受け――こちらが敗北する。
 そんな心中を意にも介さず、新たな気筒。橙で構成された小さな気筒が、その大きな不死鳥に力を与えた。

「これで終わりだ! オリジナル――レムナントォ!!」

 蒼白く発光した身体はその勢いを倍化し、その粒子を噴出する。
 白銀の翼に、罅が入る。
 装甲の表面が光に焦がされていく。
 その翼を壊し、心臓部に身を突きたてようと<レムナント>は最後の力を振り絞る。
 
 だが、輝王は静観していた。
 目の前の出来事に動じず、チャンスを待つ為に。

「これで終わりだ、か。それが本当ならば手札のドラゴンは4枚。5枚目は、罠か魔法――!」
 
 次の瞬間。
 輝王は、1枚のカードを具現させた。

<リミッター解除>
速攻魔法
このカード発動時に、自分フィールド上に表側表示で存在する
全ての機械族モンスターの攻撃力を倍にする。
この効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

「2枚目!? だが、遅い!」

 治輝の言葉の通り、レムナントの突撃に耐え切れず、白銀の翼が粉々に砕けた。
 鉄の破片が散らばり、雪のように宙へ漂う。
 それはまるでスローモーションのように流れていき、その心臓部に<レムナント>の一撃が――

「――弾丸だ! <クレアシオン>!」

 届く寸前に、クレアシオンは創志の指示に、その身を動かす。
 純白の光と共に、機龍は言葉通り<弾>へとその形態を急速変形させたのだ。
 変形により、心臓部であった場所は下へと移動。
 結果<レムナント>の突撃は空を切り、切り離された<クレアシオン>の翼部が空を舞う。

「な……!?」
「これで攻撃力は6600!」

 轟音が鳴り、全てのブースターを点火させた<クレアシオン>は機体の向きを反転させ、その身を弾丸と化して<レムナント>へと追いすがる。
 <レムナント>は翼を折りたたみ、その攻撃を受け止めようと試みるが――遅い。

「終わりだああああああああああ!」


 創志の叫びを受け<クレアシオン>は速度を上げ
 <レムナント>は向かってくるその弾に対し、翼で盾を作る間もなく、直撃した。
 白銀の閃光が、蘇生龍を打ち貫き、破壊される。

【治輝LP】2300→1900

 それは無数の蛍が光っているかのように幻想的で、誰もが息を呑む風景だった。
 治輝の手札が墓地へと消え、その残滓は光となって宙へと漂い始める。

「――いや、まだだ!」
「……!?」

 だが、勝利の余韻に浸る間も、敗北の悔しさに涙を流す間も与えず、治輝は声を荒げる。
 <-蘇生龍-レムナント・ドラグーン>が敗れ、手札をその効果でゼロにしようとも、その瞳は揺らがない。
 その勢いのまま、1枚のカードを発動する。

<竜の転生>
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する
ドラゴン族モンスター1体を選択してゲームから除外し、
自分の手札・墓地からドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。

 除外されるのはフィールド上に残った最後の竜である<ミンゲイドラゴン>
 だがその効果を確認した輝王は、目を細める。

「蘇生カードか。だが、どんなドラゴンを用いようと<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>は倒せない!」

 <リミッター解除>の効果により攻撃力が倍化している<クレアシオン>の攻撃力は6600
 今まで出現したドラゴンでは、この数値を超えることは適わない。
「承知の上だ。<竜の転生>はそっちを"防ぐ為のカード"であって、倒す為のカードじゃない!」
「蘇生カードで防ぐ……?何を言って……」
 疑問の言葉を発している間に、治輝が新たなカードをチェーン発動する。
 そのカードは、輝王の予想を覆すカードだった。




【治輝LP】1900→900


<闇よりの罠>
通常罠
自分が3000ライフポイント以下の時、
1000ライフポイントを払う事で発動する。
自分の墓地に存在する通常罠カード1枚を選択する。
このカードの効果は、その通常罠カードの効果と同じになる。
その後、選択した通常罠カードをゲームから除外する


「な……?!」
 そのカードの登場に、創志も同時に驚愕する。
 だが輝王はその効果を理解し、困惑した。
「時枝。お前が使った通常罠カードは<トラップスタン>と<異次元からの帰還>であるはず……」
「そうだな。使ったのは2枚だけだ」
「その2枚では<クレアシオン>を倒すことは――」
 そこまで言葉を紡いだところで、輝王は思い出す。
 <-蘇生- レムナント・ドラグーン>の攻防、最後の突撃。
 あの時、自分は何と言った?

「――輝王の言うとおり、俺が最後に引いたのはドラゴン族じゃない。罠カードだ!」

 そう、あの時に手札に存在していた5枚目は魔法か、罠カードのはずだった。
 そのカードは<レムナント・ドラグーン>の効果で

 墓地に、捨てられた。





エレメンタルバースト/Elemental Burst》 †
通常罠
自分フィールド上に存在する風・水・炎・地属性モンスターを
1体ずつ生け贄に捧げて発動する。
相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する。




「<闇よりの罠>は、その発動コストのみを完全に無視し、墓地の罠カードの"効果だけ"を発動する事ができる!」

 治輝の叫びに呼応して<レムナント>が残した光の球が、眩く輝き始める。
 見る者全ての瞳を潰しかねないその強烈な輝きは光の奔流を生み、フィールドの全てを呑み込み始める。
 それは如何に弾丸と化し、音速を超える機動力を持った機龍を以ってしても、回避はできない。

「エレメンタル、レムナント――!」
 
 その爆発は凄まじく、輝王の残りの伏せカード。そして2人の切り札である<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>をも消滅してしまった。
 だが、諦めない。
 <A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>には、最後の効果が残されている。

 このカードがフィールド上から墓地に送られた時、自分の墓地に存在する「ジェネクス」または
 「A・O・J」と名のついたモンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚することができる。

 この効果を以ってすれば、後続のモンスターを呼び出す事が可能だ。

「皆本! 墓地の<AOJカタストル>を――」
「駄目だ! 蘇生できない――! <クレアシオン>の効果が発動しねぇんだ!」
「なんだと……?!」
 
 声が重なる。
 だが戸惑いの暇すら与えず、爆発の中から1体の竜が飛び出してくる。
 黒い魔方陣が意味するのは、蘇生の力。
 その力が大剣を象り、橙色の飛龍を具現させる。

ドラグニティアームズ-レヴァテイン/Dragunity Arma Leyvaten》 †
効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2600/守1200
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する
「ドラグニティ」と名のついたカードを装備したモンスター1体をゲームから除外し、
手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
「ドラグニティアームズ-レヴァテイン」以外の
自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって墓地へ送られた時、
装備カード扱いとしてこのカードに装備されたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

「<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>の効果。それは、墓地のドラゴンを剣として装備する効果。効果名――クロッシング・ドラグーン!」
「な……その名前!?」
「墓地の<ブランディストック>を装備し、2度攻撃する事ができる!」

 駆ける。
 疾風の如く、その身を滑らせて。
 具現する。自らの同胞を刃と変えて。
 その軌跡を大地に示す為に<レヴァテイン>は輝王と創志の間に、全力で切り結ぶ。

「ブランディ――ウィンザーッ!」

 治輝が叫び、衝撃波が輝王と創志を吹き飛ばす。
 その斬り筋は、少し斜めに傾いた、十字だった。



【輝王&創志】LP2700→0