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遊戯王Oカード episode-23


【白矢】LP4000 手札1枚
場:ダイアン(効果破壊)スパークマン(効果破壊)  伏せカード
【黒鷹】LP2000 手札2枚
場:<闇の支配者‐ゾーク>

 破壊されたモンスターが光の破片となり四散する。
 その残り火の向こう側から、邪悪な波動が鳴動し、放出された。
 宣言通りの、直接攻撃。
「……トラップ発動! <ガード・ブロック>!」

《ガード・ブロック/Defense Draw》 

通常罠相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「戦闘ダメージを防ぎ、且つアドバンテージを失わないカード……これでもライフを削れないなんて、さすがは白矢先輩」
 嫌味な言い回しだが、その語調には一切の嫌味を感じさせない。いわば純粋な尊敬や感嘆だ。
 だが、だからこそ白矢は目の前の決闘者への警戒を強める。
 相手を認める事のできる強者は、驕り嬲る強者の数倍厄介なのだから。
「……ですが、ライフなんて脆いものです。いかにノーダメージを気取ろうと、次のターンに防御手段がなければ即死も有り得る。違いますか?」
「……ッ」
 白矢は副委員長との決闘を思い出す。
 あの時1万以上のライフポイントを1ターンで奪い去ったのは、他でもない俺自身だ。
 奴がこのデッキと似たギミックを抱えているとすれば、この4000程度のライフになど全く頼れない。
 黒鷹がカードを伏せ、ターンエンドを宣言する。
 ここで、流れを変えないと……!
「ドロー……!」
 引いたカードを白矢は確認し、笑みが零れる。
「どうやら色ってのは惹かれあう性質があるらしいな――悪いがそのモンスター、超えさせてもらう!」
「……まさか」
「そのまさかさ。俺は引いたモンスターを、このカードで特殊召喚する!」

高等儀式術 こうとうぎしきじゅつ /Advanced Ritual Art》 

儀式魔法手札の儀式モンスター1体を選び、そのカードとレベルの合計が同じになるようにデッキから通常モンスターを墓地へ送る。その後、選んだ儀式モンスター1体を特殊召喚する。
「やはり、先輩も握っていた……! だけど 『対になる儀式モンスター』 は引いていなかったはず!」
「その通り。仮に一式揃っていたとしたら<ダイアン>と同時に召喚する事で、先のターンで勝負は終わっている。だからこそこのターンで 『来ない』 と踏んでいたのかもしれないが……ドローカードまではわからなかったみたいだな」
「……さすがは先輩。ですがゾークの攻撃力を超えられますか?」
「超えられるさ。俺が呼び出すモンスターは、儀式戦士の中でも最強のモンスター――」
 二人の間に青い空間が出現し、次の瞬間――空間そのものに亀裂が入り始める。
 そして硝子が割れるように甲高い音を響かせ、舞い散る断片の中央に、主に向かい跪く甲冑の騎士。
 その名は――

「カオス・ソルジャー……!」

《カオス・ソルジャー/Black Luster Soldier》 

儀式モンスター星8/地属性/戦士族/攻3000/守2500「カオスの儀式」により降臨。
 その攻撃力はゾークを圧倒している。
 ゾークを失えば、白矢は盤面上では再び優位に立てる……が。
(奴はどこか底が知れない……ここで仕留めるべきだろうな)
 その底を見てみたい気持ちもあるが、その好奇心を吹き飛ばす程に、白矢にとって黒鷹は不気味だった。
「更に俺は、沼地の魔神王の効果を手札から発動! 融合を手札に加える」

《 沼地 ぬまち の 魔神王 ましんおう /King of the Swamp》 

効果モンスター星3/水属性/水族/攻 500/守1100このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。また、このカードを手札から墓地へ捨てる事で、デッキから「融合」魔法カード1枚を手札に加える。

《 融合 ゆうごう /Polymerization》 

通常魔法手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。

「また<融合>モンスターですか?」
「その通り――と言いたい所だが、生憎手札が少ないからな。使わせてもらうぞ――白の力を!」
 白矢は意を決して融合を除く最後のカードを、決闘盤に叩き付ける。
「<デブリ・ドラゴン>を、召喚!」


デブリ・ドラゴン/Debris Dragon》 

チューナー(効果モンスター)(準制限カード)星4/風属性/ドラゴン族/攻1000/守2000このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の攻撃力500以下のモンスター1体を選択して表側攻撃表示で特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。このカードをシンクロ素材とする場合、ドラゴン族モンスターのシンクロ召喚にしか使用できず、他のシンクロ素材モンスターはレベル4以外のモンスターでなければならない。
  
 わぎゃぁ!と鳴き声を上げ、光の中からサイズの小さいドラゴンが召喚される。足も凄く短い、手も短い。イラストよりも随分幼生のような印象を受ける。二本足で立てそうな外見をしているのに、召喚されてすぐに四つん這いの格好になったまま、動かない。

「……これ、白矢先輩の趣味ですか?」
「……違う。買った時からこうだったんだ。 見かけはこうでも効果は強力だ――行くぞ」

 少しの気の緩みもすぐに声色で引き締め、高らかに手を上げる。
 いつの間にか<デブリドラゴン>の隣には先程墓地に送ったはずの<沼地の魔神王>が戻ってきていた。
「成程、そのモンスターの効果は蘇生……!」
「――行くぞ。全てを貫く絶氷の槍――シンクロ召喚!」
 一面が白く染まり、氷のようにアスファルトが隆起する。
 掲げた<デブリドラゴン>のカードが白いカードとなり、決闘盤に舞い降りる。

「輝け、氷結界の龍――グングニール!」

 夕闇の雲を散らすような鋭い咆哮を上げ、絶氷の龍がその姿を幻出した。
 その輝きは、最強の儀式戦士である<カオス・ソルジャー>と比べて、勝るとも劣らない。

「悪いが予定変更だ……ここで決着を付けるぞ、黒鷹!」



【白矢】LP4000 手札1枚
場:氷結界の龍グングニール カオス・ソルジャー
【黒鷹】LP2000 手札2枚
場:闇の支配者‐ゾーク 伏せカード