シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル prologue-0

「痛みが世界を覆い尽くした」

 こんなフレーズを言っている人を見たら
 大抵の人は無駄に格好付けてるとか、はたまた詩人気取りの痛い子とか
 とにかく、そんな印象を抱くと思う。

でもそれは、本当に言葉通りなんだ。
3年前、大量に自然発生したサイコ決闘者の力の発現。
それにより世界の1割以上の人がサイコ決闘者としての力を手に入れ……
多少の混乱こそあれ、浮かれる人も多かった。

だが力が発現した者には、ある時変化が訪れる。
―――それが、『痛み』だ。

その変化が訪れてしまった人間は、人を無差別に襲うようになり、二度と元の状態には戻れない。
それはやがて『ペイン』と呼称されるようになり、人々に忌み嫌われる存在となっていった…。











(…私の命運もここまでかなぁ)
何を隠そう
現在進行形で私は、その『ペイン』に追われているのだ。
「幾ら外出が危ないご時世だからって、ずっと引きこもってるわけにも行かないよね…」
なんて、少し油断したのが運の尽き。こうして追われる事になってしまったというわけだ。

「…待テ!待テ!」
ペインが、声を発しながら私の元に近付いてくる。
容姿こそ人の形をしているけれど、肌の色や目の色が少し赤黒い…というのが、ペインの特徴らしい。
ニュースで見た事は何度もあったが、実際に見たのは初めてだ。

(もう…走れない…)
全力で50mを走りきり、私の体が限界に達した。
なんとか辿り着いたはずの公園には、人の気配が全くしない。
どうやら「公園に人がいるかもしれない&助けてくれるかもしれない作戦」は失敗に終わったらしい。

「追いついタ!―――さァ、決闘してもらおうカ!」

公園に追いついたペインが決闘盤(デュエルディスク)を構え、そう宣言する。
これを断れば私は殺されるだろうし、決闘を受けても同じ事だ。

何故なら『ペイン』はサイコ決闘者の、言わば進化した形。
彼らと決闘をしてダメージを受けた場合、一般人では到底耐える事が出来ないらしい。

「万事休す……かな」
足も動かない、決闘でも助からない。
まだやりたい事は沢山あったけど……これで終わるのも、きっと運命なのかもしれない。
これは、やっぱり罰なのかな、と。
そう思ったその時

―――瞬間、轟音が鳴り響いた。
余りの衝撃に目を瞑り、ペタンと座り込んでしまう。
(な、なに……?)
おそるおそる目を開けると、そこには

「―――久しぶりだな、助けに来たぜ。」

ペインと私の間、この公園のど真ん中に
こちらに背を向けた青年が、凛然と立っていた―――。