シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル prologue-12

「財布、見つかりませんでしたね」
「あぁ……うん、そうだな」

 先日の疲れも取れ、予定通り紛失した財布を公園に探しに来てみたが、結局見つける事は適わなかった。
 隣にいる変な子――かづなという名前らしい――が何度か慰めの言葉をかけてくれているが
 それでも何かを失くした時というのは、気分が重い。

「クーポン券は貧乏人の味方だったのに、アレがなくちゃ俺は……」
「そんなものより、お金の心配をしてください」

 はぁ、と二人ともため息を付くが、その理由は異なる。
 一人は悲しみ、もう一人は呆れから捻り出しているため息だ。

「一つことわざを教えてやろう」
「何です?」

 突然の話に流れに疑問を持ったのか、首を傾げて視線を向けてくる。

「――クーポンを笑う奴は、10円に泣くんだ」
「……泣いても笑ってもいません!」

 予想を超える鋭い突っ込みを受ける。
 俺自身、何を言ってるのかよくわからない。これがナチュラルハイって奴か。

「これからどうするかな、警察に頼るわけにも行かないし」

 そう思考を正常に稼動させようとした矢先、手首の辺りに違和感を感じた。
 着けている鉄製のリストバンドの位置がずれて、今にも外れそうになっている。
 何かに咎められたような感覚に陥り、すぐにその位置を元に戻した。

「昨日も言いましたけど、財布が見つかるまでの間は私の家を使ってください」
「一日だけでも十分助かったよ。だからこれ以上世話になるわけには……」
「その、一日です!」

 その時、かづなは話に割り込むように俺にカードを裏側にし、突きつけて来た。


「……はい?」
「私は昨日、なお君に命を助けてもらいました。英訳すると命の恩人です。」
「最近の英語は発達してるんだな……」

 相変わらずコイツの話を聞いてると、頭が痛くなってくる。
 無茶苦茶な事を言ってるのに本人は至って真面目なのだから、始末に負えない。

「だから、私もなお君が困っていたら助けたいんです」

 それって、いけない事ですか?
 かづなは声のトーンを少し下げて、そう口に出す。
 確かにそれは、こんな状態の俺にとっては嬉しい申し出だ。
 会って間もない間柄ではあるが、不思議と一緒に居ても居心地も悪くない。
 だが……と、尚も否定の言葉を発しようとした、その時。

 ――救えないな、オマエ

 周囲の温度を一気に下げるような言葉が、脳裏に響いてきた。
 口に大量の氷を詰め込んだ時のようにキーンとした感覚が、電流のように脳裏に走っていく。

「……え?」

 かづなもそれに気付いたのか、細かく瞬きをしながら辺りを見渡す。
 シャッターの降りた店が多い商店街。人通りは普段から少ないが、誰も見当たらないのは異常だ。
 前方と後方には誰もいない。となると……

「ホント救えないな、オマエ」

 左を向くと、商店街の路地裏の暗がりに人影が一つ。
 今にも崩れそうなブロックの上に、片膝を立てながら危なげもなく腰かけていた。