遊戯王オリジナル prologue-13
治輝は向かい合った人影に懐かしげに、尚且つ警戒を薄めずに視線を向ける。
「……戒斗<かいと>か、何の用だ?」
「言うわきゃねーだろ?大体察しは付いてるだろうしなァ」
「言うわきゃねーだろ?大体察しは付いてるだろうしなァ」
なお君の知り合い……?
かづなは疑問を持ちつつも、異様な雰囲気を持つ戒斗と呼ばれる人影に意を決して向かい合った。
かづなは疑問を持ちつつも、異様な雰囲気を持つ戒斗と呼ばれる人影に意を決して向かい合った。
「救えないって、どういう意味ですか?」
「あァん?どういう意味も何も言葉通りだ。これ以上喋んなよオマエ」
「見ず知らずの人にそんな事言われる筋合いは――!」
「いや、そいつの言う通りだ」
「あァん?どういう意味も何も言葉通りだ。これ以上喋んなよオマエ」
「見ず知らずの人にそんな事言われる筋合いは――!」
「いや、そいつの言う通りだ」
反論を続けようと身を乗り出したかづなを、治輝は手で制して前へ進む。
注意して見ると、かづなの前方には大きな水溜りがある。
躊躇せず前に踏み出した治輝の足が、その大きな水溜りに漬かった。
注意して見ると、かづなの前方には大きな水溜りがある。
躊躇せず前に踏み出した治輝の足が、その大きな水溜りに漬かった。
「もうこいつとは喋らなくていい。喋るだけ時間の無駄だ」
「……サイコーにむかつく台詞だねェ、治輝クン?」
「事実だろ。おまえはまだ『違う』みたいだが、こいつに危害を加えるって言うんなら……!」
「ほぅ、やろうッての?」
「……サイコーにむかつく台詞だねェ、治輝クン?」
「事実だろ。おまえはまだ『違う』みたいだが、こいつに危害を加えるって言うんなら……!」
「ほぅ、やろうッての?」
そう言ってお互いに決闘盤を取り出しデッキをセット。そのまま睨み合う。
「学生時代での模擬決闘は俺の連戦連勝――オマエに勝ち目は無い」
「あの時と同じだとは思わない方がいいぜェ?」
「あの時と同じだとは思わない方がいいぜェ?」
戒斗を尚も睨み付けたまま、治輝はかづなに向かって軽く口を開いた。
「ここは危ない。少し下がってくれ」
「いえ、私も――」
「アイツは『ペイン』としての力を持ってるんだ。頼む」
「……はい、わかりました」
「いえ、私も――」
「アイツは『ペイン』としての力を持ってるんだ。頼む」
「……はい、わかりました」
結局、私は肝心な時に役に立てないんだな……
そう思いつつもかづなは、大人しく後ろに下がる。
そう思いつつもかづなは、大人しく後ろに下がる。
――今は、無理かもしれない。
でも気持ちを切り替えよう。今はなお君の決闘を見て、何かを学ばないと。
【治輝 LP4000】 手札5枚 場:なし 【戒斗 LP4000】 手札5枚 場:なし
「俺の先行か、こりゃもう勝ったも当然だなァ」
「いいからドローしてくれ、さっさとケリを付けたい」
「ハイハイ…ドロー、俺は<終末の騎士>を召喚だぁ!」
「いいからドローしてくれ、さっさとケリを付けたい」
「ハイハイ…ドロー、俺は<終末の騎士>を召喚だぁ!」
《終末(しゅうまつ)の騎士(きし)/Armageddon Knight》 † 効果モンスター 星4/闇属性/戦士族/攻1400/守1200 このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、 自分のデッキから闇属性モンスター1体を選択して墓地に送る事ができる。「効果でデッキから闇属性モンスターを墓地に送るぜェ」
「……デッキを変えたのか?」
以前の戒斗はデッキに悪魔族以外のカードを入れる事を極端に拒んでいたはずだ。
「そういうこッた、俺はカードを3枚セットしてターンエンドォ!」
「ならいくぜ、俺のターン!」
「ならいくぜ、俺のターン!」
治輝はドローカードを確認して、ほんの少し口元が釣り上がった。
『リクルーター』とは、モンスターをデッキから特殊召喚できるモンスターの事を指すが……
大部分のプレイヤーは<キラー・トマト>や<グリズリー・マザー>等の戦闘破壊をトリガーとした、他のモンスターをデッキから呼び出すモンスターとして呼称する事が多い。
同じ1400の攻撃力を持つモンスターがこの手のモンスターに相打ちされると、片方はモンスターを失い、リクルーターを使役する側は新たなモンスターを呼び出す事が出来るのだ。
大部分のプレイヤーは<キラー・トマト>や<グリズリー・マザー>等の戦闘破壊をトリガーとした、他のモンスターをデッキから呼び出すモンスターとして呼称する事が多い。
同じ1400の攻撃力を持つモンスターがこの手のモンスターに相打ちされると、片方はモンスターを失い、リクルーターを使役する側は新たなモンスターを呼び出す事が出来るのだ。
「なるほどなァ、その口振りから<仮面竜>でも握ってるみてーだが……」
「……」
「……」
確かに<仮面竜>の攻撃が通れば俺的には大損失だがナァ―――と、呟きつつ
戒斗は治輝を見据え、挑発するように顔を大きく歪めて笑う。
戒斗は治輝を見据え、挑発するように顔を大きく歪めて笑う。
「俺の伏せカードは3枚。もし罠に掛かればテメェはモンスターを失い、待ってるのは<終末の騎士>+αのダイレクトアタックだ。……安直過ぎるんじゃネーの?」
「確かにな、だが今の台詞を聞いて確信したよ」
「あァ?」
「昔からおまえが不自然な忠告をする時は大抵、攻撃して欲しくない時だ」
「確かにな、だが今の台詞を聞いて確信したよ」
「あァ?」
「昔からおまえが不自然な忠告をする時は大抵、攻撃して欲しくない時だ」
だってそうだろ?と、戒斗の睨みを受け流しつつ治輝は薄く笑う。
「本当に罠に掛けたいのなら、わざわざ口に出して相手に伝える必要は何処にも無い。……違うか?」
「……」
「いくぜ、俺は<仮面竜>を召喚!」
「……」
「いくぜ、俺は<仮面竜>を召喚!」
《仮面竜(マスクド・ドラゴン)/Masked Dragon》 † 効果モンスター 星3/炎属性/ドラゴン族/攻1400/守1100 このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、 自分のデッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を 自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
「やっぱ握ってやがったか、<リクルータ>ァ!!」
「今引いたんだよ。……<仮面竜>で<終末の騎士>を攻撃。<マスクド・バイト>ォ!」
「今引いたんだよ。……<仮面竜>で<終末の騎士>を攻撃。<マスクド・バイト>ォ!」
上手い!……と、かづなは決闘を見ながら感嘆していた。
リクルーターを使った戦術は勿論だが、その後の戒斗の口車に乗らず、過去の経験を生かした的確な読み。
これならなお君は、手強そうな今回の相手……戒斗にだって負けない。そう思った。
リクルーターを使った戦術は勿論だが、その後の戒斗の口車に乗らず、過去の経験を生かした的確な読み。
これならなお君は、手強そうな今回の相手……戒斗にだって負けない。そう思った。
「……確かに、学生時代の俺はワンパターンだッたよなァ」
目を閉じ、頭を掻き毟りながら戒斗は心底うんざりした表情をした。
学生時代はそのワンパターンのせいで動きを逆に誘導され、負ける事も多かったのかもしれない。
学生時代はそのワンパターンのせいで動きを逆に誘導され、負ける事も多かったのかもしれない。
「今考えると本当にワンパターン馬鹿だッた。オオバカだよ……だがなァ」
戒斗は髪を掻き毟る動作を繰り返しながら、目を薄目で開き治輝の方に向き直る。
「オマエ、狼少年が勝ち組だとしたら、どうする?」
「は?いきなり何を……」
「狼少年は嘘を繰り返して、誰からも信用されなくなッちまッた。何故だ?」
「は?いきなり何を……」
「狼少年は嘘を繰り返して、誰からも信用されなくなッちまッた。何故だ?」
その童謡には覚えがあったので、かづなもおずおずとした様子で口を挟む。
「嘘ばっかり付くから、その子の言う事は全部嘘だと周りから思うようになったから……ですよね?」
――そう、そのとーりだ。
戒斗は大げさな動作でかづなに拍手をすると、口元をより大きく吊り上げる。
その様子を見て治輝は不機嫌顔になったが、話の続きを促す。
戒斗は大げさな動作でかづなに拍手をすると、口元をより大きく吊り上げる。
その様子を見て治輝は不機嫌顔になったが、話の続きを促す。
「……その後狼少年は、本当に来てしまった狼の脅威を村に伝える事ができず、村が大事にしていた羊は狼に全て食われてしまった。―――だったか?」
「あァ、だがあれは結果的に、狼少年の勝ちなんだと思わねーか?」
「……は?」
「あァ、だがあれは結果的に、狼少年の勝ちなんだと思わねーか?」
「……は?」
治輝は決闘中にも関わらず、余りに突拍子の無い発言にキョトンとしてしまう。
後ろを見ると、かづなも似たような表情をしていた。
後ろを見ると、かづなも似たような表情をしていた。
「狼少年は嘘を言い続けた。だからこそ『アイツはどうせ嘘を言う』という思考を、村人に強制する事が出来た。だからこそ、本当の事を言ッても『どうせ嘘だ』ッていう『トビキリの嘘』を信じ込ませる事が出来たんじゃねーか?」
「……何が言いたいんだよ」
「……何が言いたいんだよ」
わかんねー奴だなァ……と誰に言うでもなく愚痴った後、髪を掻き毟る動作を止め、閉じていた目をカッと見開く。
「―――つまり、読み合いの上では狼少年の『勝ち』ッて事だよ。嘘つき続けたという土台があるからこそ、アイツは勝つ事が出来たんだ」
「……!?<仮面竜>攻撃を止―――」
「おせェ!罠カード発動!!<マジカルシルクハット>!!」
「……!?<仮面竜>攻撃を止―――」
「おせェ!罠カード発動!!<マジカルシルクハット>!!」
《マジカルシルクハット/Magical Hats》 † 通常罠 デッキからモンスター以外のカード2枚と フィールド上の自分のモンスターを1体選択し、デッキをシャッフルする。 選択したカードをシャッフルし、フィールド上に裏側守備表示でセットする。 デッキから選択した2枚のカードはモンスター扱い(攻・守0)となり バトルフェイズ終了時に破壊される。 この効果は相手バトルフェイズにしか使えない。
「オマエが不自然な忠告をする時は大抵、攻撃して欲しくない時だ……だっけか?」
「くっ……」
「ワンパターンだと思ってくれてありがとうナオキ君!お陰ですぐにでも揃いそうだァ!」
「くっ……」
「ワンパターンだと思ってくれてありがとうナオキ君!お陰ですぐにでも揃いそうだァ!」
ケタケタ笑う戒斗を見て、治輝は二つの理由で唇を強く噛む。
一つ目は戒斗の不快な言動、二つ目は相手を見切れると驕っていた自分への悔しさから
……しかし、相手の発動したカードはシルクハット。
終末の騎士を裏返し、魔法カードを二つ選択。
それを裏側表示のトークンとして特殊召喚するカードだが……別に、仮面竜が破壊されるわけではない。
一つ目は戒斗の不快な言動、二つ目は相手を見切れると驕っていた自分への悔しさから
……しかし、相手の発動したカードはシルクハット。
終末の騎士を裏返し、魔法カードを二つ選択。
それを裏側表示のトークンとして特殊召喚するカードだが……別に、仮面竜が破壊されるわけではない。
「俺は<手札抹殺>と<ダーク・バースト>を裏表示で場に出すぜェ」
「優秀なカードを墓地に送る……?正気か戒斗」
「正気かどうかはわかんねェな。更に罠はつどォ!500ライフを払い<血の代償>!!」
「優秀なカードを墓地に送る……?正気か戒斗」
「正気かどうかはわかんねェな。更に罠はつどォ!500ライフを払い<血の代償>!!」
《血(ち)の代償(だいしょう)/Ultimate Offering》 † 永続罠(準制限カード) 500ライフポイントを払う事で、モンスター1体を通常召喚する。 この効果は自分のメインフェイズ時及び 相手のバトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。
「相手ターンに通常召喚だと!?」
「そういうこッた。終末の騎士を生贄にして……来いよォ!<バイサー・ショック>!!」
「そういうこッた。終末の騎士を生贄にして……来いよォ!<バイサー・ショック>!!」
《バイサー・ショック/Byser Shock》 † 効果モンスター 星5/闇属性/悪魔族/攻 800/守 600 このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、 フィールド上の全てのセットされたカードを持ち主の手札に戻す。
「この効果によりフィールド上にセットされたカードを全て手札に戻す!」
「セットカード……って、まさか!」
「セットカード……って、まさか!」
驚く治輝を見て、様子を見ていたかづなは首を傾げる。
なお君のセットカードは一枚も無いわけだし、何か意味があるとは思えないけど……。
なお君のセットカードは一枚も無いわけだし、何か意味があるとは思えないけど……。
「俺は先程<シルクハット>の中に隠した<手札抹殺>と<ダークバースト>を回収させてもらうぜェ!」
「確かにそのカードはセットモンスター扱いだからな……迂闊だった」
「確かにそのカードはセットモンスター扱いだからな……迂闊だった」
かづなは状況に付いて行けず、再び焦りを覚える。
とにかく、戒斗という人はデッキから魔法カードを2枚手札に加えた……という事らしい。
モンスターカードならともかく、魔法カードをデッキから手札に加える事は難しい。
使いやすいものでも<タイム・カプセル>や<封印の黄金櫃>等といったタイムラグがあるカードが殆どなのだ。
それを簡単にやってのけるあの人……凄いのかもしれない。
とにかく、戒斗という人はデッキから魔法カードを2枚手札に加えた……という事らしい。
モンスターカードならともかく、魔法カードをデッキから手札に加える事は難しい。
使いやすいものでも<タイム・カプセル>や<封印の黄金櫃>等といったタイムラグがあるカードが殆どなのだ。
それを簡単にやってのけるあの人……凄いのかもしれない。
「そして更にライフを500払い<血の代償>を発動。俺はバイサー・ショックを生贄に……」
変わった容姿をした拷問器具のようなモンスターがその役目を終え、墓地へとゆっくりと沈んでいく。
「……来いよォ!<軍神ガープ>!!」
治輝はその存在感を目の前に、息を飲み込んだ。
《軍神(ぐんしん)ガープ/Gaap the Divine Soldier》 † 効果モンスター 星6/闇属性/悪魔族/攻2200/守2000 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、 フィールド上に存在するモンスターは全て表側攻撃表示となり、 表示形式は変更できない。(この時、リバース効果モンスターの効果は発動しない。) また、1ターンに1度だけ手札の悪魔族モンスターを 相手に見せる事で、このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで 見せたカードの枚数×300ポイントアップする。――攻撃力2200の上級悪魔!?
治輝はその存在感を目の前に、息を飲み込んだ。