遊戯王オリジナル prologue-18
――幻魔の力は、心の闇を増幅させる事が出来るとは聞いていたが、これ程とはなァ
戒斗は生気を失ったかのような様子のかづなを見て、そんな感想を抱いた。
先程の攻撃同様、並の人間に耐えられるものではないだろう。
しかし、戒斗は何か違和感を感じていた。
この力を使ったのは初めてだが、何か既視観のようなものを感じる。
先程の攻撃同様、並の人間に耐えられるものではないだろう。
しかし、戒斗は何か違和感を感じていた。
この力を使ったのは初めてだが、何か既視観のようなものを感じる。
「まァいィ、それより……」
倒れてる治輝の足を一瞥した戒斗は、そこに向かって大きく踵を振り下ろす。
足には先程の衝撃で刺さった氷の断片が軽く刺さっている。それを更に深く減り込ませた。
足には先程の衝撃で刺さった氷の断片が軽く刺さっている。それを更に深く減り込ませた。
「……!?あっ……がッ……!」
「グッモーニンナオキ君、目が覚めたか?」
「グッモーニンナオキ君、目が覚めたか?」
断片が足の肉を抉り、余りの激痛に顔を歪ませながら目を開ける。
ゆっくりと起き上がった治輝は、フラフラしながらも戒斗を睨みつける。
ゆっくりと起き上がった治輝は、フラフラしながらも戒斗を睨みつける。
「戒……斗?……決闘……は……」
「とっくに終わってるさ、お前が手を抜くから、ラビエルの衝撃で強制終了しちまったァ」
「……わかる……か、さすがに……」
「とっくに終わってるさ、お前が手を抜くから、ラビエルの衝撃で強制終了しちまったァ」
「……わかる……か、さすがに……」
先程発動しなかった伏せカードは、<ハーフ・シャット>
《ハーフ・シャット/Half Shut》 † 速攻魔法 フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。 選択したモンスターはこのターン戦闘では破壊されず、 攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで半分になる。
これを発動していれば、あのターンを凌ぐ事は可能だった。
尤もその後、幻魔皇ラビエルを超えられたかと言えば微妙なところだが……
尤もその後、幻魔皇ラビエルを超えられたかと言えば微妙なところだが……
「てめぇが手抜きした理由なんざァ聞きたくもねェ。どうせ腑抜けた理由だろうしなァ」
「……」
「なんで、本気にならざる負えない状況を作ってやッた。後ろを見てみろよ」
「……」
「なんで、本気にならざる負えない状況を作ってやッた。後ろを見てみろよ」
治輝は後ろを振り返る。そこには――すっかり生気を失った、かづなの姿があった。
呆然と、治輝はそれを見つめる。
呆然と、治輝はそれを見つめる。
「……」
「コイツは今、俺の力による心の闇に侵されちまってる。この状態を長く続けたら……どうなッちまうかなァ」
「……」
「この状態を解くのは簡単だァ、俺に決闘で勝てばいい……だがなァ、解けば戻るとは限らねェ、心の闇ってのはそう単純にはできてねェ」
「……ろ」
「『心の闇』ってのは稼動し続ける増幅装置みてェなもんだ。それが止まったところで『一度増幅された闇』はもどらねぇ、肥大化したまんまなんだから当然……」
「コイツは今、俺の力による心の闇に侵されちまってる。この状態を長く続けたら……どうなッちまうかなァ」
「……」
「この状態を解くのは簡単だァ、俺に決闘で勝てばいい……だがなァ、解けば戻るとは限らねェ、心の闇ってのはそう単純にはできてねェ」
「……ろ」
「『心の闇』ってのは稼動し続ける増幅装置みてェなもんだ。それが止まったところで『一度増幅された闇』はもどらねぇ、肥大化したまんまなんだから当然……」
「――1発……殴らせろ!」
突如。
治輝は渾身の力でリストバンドの付いた右腕を振りかぶり、戒斗の顔面を狙い打った。
戒斗はまさか疲弊しきっている治輝にそんな力が残っているとは思わず、不意打ち気味に食らってしまう。
治輝が作った血だまりの中に倒れた戒斗は、その中に血の混じった唾を吐いた。
治輝は渾身の力でリストバンドの付いた右腕を振りかぶり、戒斗の顔面を狙い打った。
戒斗はまさか疲弊しきっている治輝にそんな力が残っているとは思わず、不意打ち気味に食らってしまう。
治輝が作った血だまりの中に倒れた戒斗は、その中に血の混じった唾を吐いた。
「――テメェ、まだそんな力が……」
「そいつの顔をよく見てみろ!何にも思わないのか?」
「はァ……?」
「そいつの顔をよく見てみろ!何にも思わないのか?」
「はァ……?」
改めて戒斗は、かづなの顔をまじまじと見る。
確かに先程からの違和感はあるが、何も感じない。
確かに先程からの違和感はあるが、何も感じない。
「……なんだッてんだ、時間稼ぎなら―――」
「――昔のおまえにソックリなんだよ、馬鹿野郎」
「――昔のおまえにソックリなんだよ、馬鹿野郎」
別に、戒斗と特別親しかったわけでは無い。
現に俺は、戒斗の周りを取り巻く『いじめ』の存在に全く気付けなかった。
だが、時折空虚な顔で、何かを抱えているような表情を見せていたのは覚えている。
その表情に、今のかづなは―――
現に俺は、戒斗の周りを取り巻く『いじめ』の存在に全く気付けなかった。
だが、時折空虚な顔で、何かを抱えているような表情を見せていたのは覚えている。
その表情に、今のかづなは―――
「――なるほどなァ、違和感の正体はそれかァ」
「あの時のおまえの表情、何を見ているかわからないような目付き……全部、いじめのせいだったんだな」
「……」
「あの顔になるまで、さぞかし地獄を見て来たんだろうな」
「あァ、だから俺は天から力を授かった。弱者を嬲る奴に復讐する力をなァ」
「あの時のおまえの表情、何を見ているかわからないような目付き……全部、いじめのせいだったんだな」
「……」
「あの顔になるまで、さぞかし地獄を見て来たんだろうな」
「あァ、だから俺は天から力を授かった。弱者を嬲る奴に復讐する力をなァ」
「――おまえはコイツに、それと同じ事をやったんだ」
静寂。
戒斗は視線をかづなに向け、その顔に釘付けになる。
そんな戒斗を気にもせず、治輝は更に言葉を続ける。
戒斗は視線をかづなに向け、その顔に釘付けになる。
そんな戒斗を気にもせず、治輝は更に言葉を続ける。
「何が復讐だ。弱者を嬲る奴に復讐する力だ」
その言葉は、目の前の男だけに言っているわけではなかった。
「そいつは頑張ってきたんだ。俺達と違って努力して、過去の自分より強くなろうって」
だからこそわかる、戒斗が一番言われたくない言葉が、手に取るように。
「おまえは同じだ。あの時、おまえを虐げていた―――クソッタレな連中と同じだ!」
「――」
「――」
かづなに向けた戒斗の目が、こちらを見据えてくる。
先程の決闘で感じた、影を残したような目だ。だけど、もう躊躇わない。
先程の決闘で感じた、影を残したような目だ。だけど、もう躊躇わない。
「オマエに何がわかる?―――なんて使い古された事は言わねェ……が」
戒斗は自分の影を振り払い、決闘盤を差した方の手を、逆手にして握り締める。
「俺の痛みは俺のモンだ。俺だけの痛みだ!他人に否定される謂れはねェ!!」
治輝が今にも割れそうなリストバンドのボタンを押すと、新たな決闘盤が現れる。
「『読み合い』が好きなんだろ?―――だったら、他人の痛みも読み合ってみせろよ!!」
――――決闘!!
一人は虚ろな目の少女を背負い
一人は虚ろな目の少女を見据えながら
一人は虚ろな目の少女を見据えながら
二人の声が、夕闇の染まる空に大きく木霊した。