シューティングラーヴェ(はてな)

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遊戯王オリジナル episode-11

「<デブリドラゴン>を召喚。効果で墓地の<ガード・オブ・フレムベル>を蘇生」

デブリ・ドラゴン/Debris Dragon》 †

チューナー(効果モンスター)
星4/風属性/ドラゴン族/攻1000/守2000
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する攻撃力500以下のモンスター1体を
攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚した効果モンスターの効果は無効化される。
このカードをシンクロ素材とする場合、
ドラゴン族モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。
また、他のシンクロ素材モンスターはレベル4以外のモンスターでなければならない。

《ガード・オブ・フレムベル/Flamvell Guard》 †

チューナー(通常モンスター)
星1/炎属性/ドラゴン族/攻 100/守2000
炎を自在に操る事ができる、フレムベルの護衛戦士。
灼熱のバリアを作り出して敵の攻撃を跳ね返す。

「チューナーモンスターを2体特殊召喚か。面白い、ワシを超えられるモンスターを呼び出せるというのなら呼び出してみろ!その上で粉砕してくれる!」
「いくぜ、レベル4<デブリドラゴン>にレベル2<ミンゲイドラゴン>をチューニング」

 デブリドラゴンが光の輪になり、その中をミンゲイドラゴン通過する。
 次の瞬間、輪の光は全て漆黒に輝く鎖と変化した。

「自身を縛りし物を開放し、黒金の鎖と成せ!シンクロ召喚――チェーン、ドラゴン!」

《C(チェーン)・ドラゴン/Iron Chain Dragon》 †

シンクロ・効果モンスター
星6/地属性/ドラゴン族/攻2500/守1300
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分の墓地に存在する「C(チェーン)」と名のついたモンスターを
全てゲームから除外する事ができる。
この効果で除外したモンスター1体につき、
このカードの攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで200ポイントアップする。
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与える度に、
相手のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。

「……何かと思えば、ワシの攻撃力には遠く及ばないモンスターを出して何のつもりだ!」
「こういうつもりだ。俺は更に、レベル6<チェーンドラゴン>に、レベル1<ガード・オブ・フレムベル>をチューニング!」

 出てきたばかりのチェーンドラゴンに絡まる鎖が緩められ、その形を変えて強靭な皮膚になっていく。
「絶望を刈り取る爆炎と成せ!シンクロ召喚―――エクスプロード、ウイングドラゴン!」

《エクスプロード・ウィング・ドラゴン/Exploder Dragonwing》 †

シンクロ・効果モンスター
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守1600
チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター1体以上
このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ、フィールド上に表側表示で存在する
モンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊し、
破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える事ができる。

「攻撃力を敢えて下げてきた―――まさか小僧、貴様の狙いは」
「さっきアンタ言ったよな?『同胞を苦しめた上での勝利など何の意味もない』って」
「……」
「だけど、俺がコイツで<スクラップ・ビースト>を攻撃したらどうする?アンタが<スクラップ・ビースト>を破壊しなかったせいで、アンタの同胞は破壊という激痛を味わい、負ける」
「貴様……」
「結局は自己満足だ。アンタが同胞を破壊しないせいで、誰かに同胞を破壊される。結局アンタは、自分で手を下したくなかっただけだ」
「貴様ぁぁぁぁ!!」

 治輝は冷たい目で要塞を睨みながら辛辣な言葉を放ち
 声の主はそれに対してこれ以上ない程激昂する。
 かづなは様子がおかしくなった治輝をじっと見て、その姿から目が離せない。

「バトルフェイズ!<エクスプロード・ウイング・ドラゴン>で<スクラップ・ビースト>を攻撃。―――イグニッションストーム!」
「ぐ……貴様!貴様ァァァ!」
「なお君!」

 三者三様の叫びが、嵐のように辺りに木霊する。
 治輝の操るドラゴンの攻撃が<スクラップ・ビースト>に直撃――

































遊戯王オリジナル episode-11


 直撃、しなかった。
 エクスプロードの攻撃は、ギリギリの所で急激に色を失い、四散していく。

「……?」

 声の主は、何が起こったのかが把握できない。
 状況を確認しようと、忌々しい治輝とかいう人間に目を向けると

 ――目を瞑ったまま、デッキの上に、静かに手を置いていた。

「な……に?」
 デッキの上に手を置く事とは、サレンダーを意味する。
 そしてサレンダーとは
 自ら負けを認め、その時点でデュエルを終了させることを指す行為だ。

「なぜ、勝利の直前でそんな馬鹿な事をした?」
「……」
「答えろ小僧、貴様は――」

 治輝は目をゆっくり開くと、手を後頭部にやり、ポリポリと頭を掻いた。
 ああ、いつものなお君だ――と、かづなは何処か安堵の表情を浮かべる。
 そして、ゆっくりと治輝は口を開き……

「いや、伏せカードが魔法の筒だと読んだんだ。サレンダーしなかったら即死だったぜ……」
「……」
「……」

 謎の沈黙が辺りを支配する。というか主に治輝以外の他2名を支配する。
 心の中で「だったら攻撃するな」「そもそもライフ2600あっただろ」等の突込みを入れたくなるが、それを表に出す事すら億劫に感じる。
 とりあえず妙にむかついたかづなは、何も言わずにてくてくと治輝の後ろに近付くと、思いっきり後頭部を雪平鍋で叩いた。どぽかーん。

「いてぇ!?なにすんだ!」
「痛いじゃないですもっとマシな嘘付いてくれれば格好良かったのに!」
「……」

 状況についていけない声の主は、ただそのやり取りを見つめて呆然としていた。
 何故、何故わざわざサレンダーを……。

「小僧、ワシの意思はどうあれ、勝てば契約通りワシの力を存分に使えたはずだ。なのに何故負けを認めるような真似をした?貴様は力が欲しいのではなかったのか?」

 その声を聞き、治輝はふざけた調子をやめて、今尚姿を現している要塞に向かって顔を上げる。
 先程辛辣な言葉を放っていた人間と同一人物とは、とても思えなかった。
 あれは、単なる芝居だったんだろうか?

「単にアンタに伝えたくなっただけだ。例え破壊されたって、結果的に何かを成せれば悪くない。アンタを恨んでるとも限らないって」
「――相変わらずの知ったかぶりか」
「かもな。でも、少なくとも俺はそう思うぜ」
「ふん、それを信じれるわけが……」

 声の主は、そこで言葉を切ってしまった。
 ふざけた調子に振舞っている治輝の表情が、どこか力なく笑っているような顔に一瞬見えたのだ。

「……」
「まぁそれだけだ。敗者は大人しく退散するぜ」
「なお君、一体ここに何しに来たんですか……」

 最後だけ格好よく決めながら(つもりになっている)後を向いて歩き始めた治輝に続いて、ドっと疲れたようなポーズを取りながら、かづなもその後ろに付いて行く。

「――待て」

 その言葉を紡いだ瞬間。要塞の姿が見る見るうちに小さくなっていく。
 最終的には手に乗るような姿にまでその姿を縮めてしまったが、二人は気付かない。

「なんだ?」
「面白い、ワシの負けだ。特別に貴様等に手を貸そう」
「……いいのか?俺は前の主みたいに、アンタの力を使いまくるかもしれないぜ」

 そう言いながら、治輝とかづなは要塞の方に振り返る。
 目の前にいたのは、そこにはミニチュアサイズになった声の主。
 小さい小さい<スクラップ・ドラゴン>が、目の前でふよふよと浮いていた。

「……」
「……」
「……なんだ?」

「ぶはははは!なんだそれ!小さ!すっげぇちいさ!無駄に造形こまか!」
「あはははは!なんですかそれ、威厳台無しじゃないですか!あと無駄に線多いです!」
「……」

 ……ワシは、こんな奴等をマスターに選んで大丈夫なんだろうか
 決心して早々若干の後悔が滲むが、小僧の先程の言葉を思い出す。
 小僧は前の主とは何かが違う。これならワシにも、違う未来が見えてくるかもしれない。

「じゃあ、名前は『スクドラ』とかにするか。小さいし、全国共通だし」
「いえ、もっと小さくして『スドちゃん』とかでどうでしょう!っていうか決定です!」

 ……これならワシにも、違う未来が見えてくるかもしれない。
 スドは自分の行く先を大いに案じながら、目の前の空を見る。
 行き先に広がる黒い雲の色が、少し薄い色に変わっていくように、今は感じることができた。