シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル episode-15

「ななみ――ちゃん?」
「あの時の――おねえちゃん」

 ……かづなの知り合いなのか?
 治輝は女の子に改めて視線を向けようとして、その途中で佐光の表情が視界に入る。
 佐光は眉をひそめ、不機嫌そうな表情を女の子に向けていた。

「あの子と知り合いなのか?」
「はい、昨日ショップの外でなお君を待ってる間に会ったんですけど……」
「あぁ、あの時に」

 治輝は丁度その時間に、見知らぬ少年と決闘していた事を思い出す。
 決闘の前と後の表情が別人のようだったあの子は、今日もフリースペースに居るのだろうか?

「―――あの人と、知り合いなのですか?」
「……」

 一方、佐光と女の子も似たような会話をしていた。
 女の子は下をじっと見ていて、それに佐光は睨むような視線をぶつけている。
 その視線に耐え切れなかったのか、女の子は顔を上げた。

「わたしの名前は七水って書いて、しちみ。ななみじゃないよ、人違いだと思う」
「そうですか、なら遠慮はいりませんね――決闘!」
ななみちゃん……?!」

 女の子――七水の言葉に満足したのか。笑みを浮かべた佐光は決闘開始の宣言をする。
 いつの間にか下を向いていたはずの七水の顔は、真っ直ぐこちらを向いていた。

「よくわからないが、あっちは容赦無しっぽいな……大丈夫か?」
「……みたいですね。今は決闘に集中します!」

タッグデュエルルール(オリジナル)

□フィールド・墓地はシングルと同じく個別だが、以下の事項は行うことができる。
・パートナーのモンスターをリリース、シンクロ素材にすること。
・「自分フィールド上の~」の記述がある効果を使用する際、パートナーのカードを対象に選ぶこと。
・パートナーの伏せカードは、通常魔法に限り発動する事ができること。
・パートナーへの直接攻撃を、自分のモンスターでかばうこと。
□最初のターンは攻撃ができない。
□ライフは共通で5000。バーンダメージ等は一人を対象にして通常通り処理する。
□召喚条件さえ揃えば、パートナーのEXデッキも使用できる。

「自分の先行ですか、ドローさせて頂きましょう」

 佐光はドローカードを確認し、手札をしばらく眺める。
 その後手馴れた様子で1枚のカードを選出する。

「自分はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
「モンスターを出して来ない……?俺のターン!」

 佐光には何かしらの考えが行動だろうが、不気味ではある。
 だが、敢えてモンスターを出さない事で<サイバードラゴン>や<バイスドラゴン>のような条件を持つカードの召喚を狙っているのかもしれない……油断はできない。

「俺はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド!」
「わたしのターン、ドロー」

 七水にターンが渡り、ドローしたカードをじっと見つめる。
 その瞳の奥で何を考えているのか、俺にはさっぱりわからなかった。

「モンスターをセット、カードを2枚伏せてエンド」
「なら、私のターンです!」

 かづながカードを引いた後、自分の手札をロクに確認せずに七水の方に視線をやる。
 だが当の七水は、かづなと視線を合わそうともしない。
「―――私はモンスター1枚。カードを1枚伏せてターンエンドします!」

「自分のターンですか。これで攻撃は解禁……ですね?」

 ゾワリ、と。
 佐光の一言で、周りの雰囲気が一変するのを感じた。
 間違いない。何か仕掛けてくる――――!

「永続魔法を発動させて頂きましょう……<神の居城-ヴァルハラ>!」

《神(かみ)の居城(きょじょう)-ヴァルハラ/Valhalla, Hall of the Fallen》 †

永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「そしてその効果を発動。自分フィールドにモンスターが存在しない時に、手札から天使を特殊召喚できる。現れろ……<光神機-轟龍>!!」

《光神機(ライトニングギア)-轟龍(ごうりゅう)/Majestic Mech - Goryu》 †

効果モンスター
星8/光属性/天使族/攻2900/守1800
このカードは生け贄1体で召喚する事ができる。
この方法で召喚した場合、
このカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。
また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が越えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 天使デッキ。
 噂には聞いていたが、上級モンスターをこうも簡単にフィールドに呼び出してくるとは。
 そして轟龍の効果は――――。

「バトルフェイズ、<光神機-轟龍>でそちらの伏せカードに攻撃させて頂きます」
 治輝の伏せモンスターである<仮面竜>に轟竜の鋭い尻尾が突き刺さり、その瞬間――ズサリと刺されるような感覚を覚えた。

【治輝&かづなLP】5000→3200

「くッ……!」
「そして轟龍の攻撃を受けたモンスターのコントローラーには、貫通ダメージを受けてもらいまいましょう……!」

 サイコ決闘者との戦い特有の、鈍い痛みが襲い掛かってくる。
 だが、その痛みはすぐに収まった。
 この程度の力なら一般の粋は出ていないし、まして『ペイン』とは比べ物にならない。
 治輝は僅かに口元を吊り上げ、体勢を建て直しながら佐光の方に向き直る。

「攻撃を受けたというのに余裕ですね。貴方もしかして……Mですか?」
「って、なんでそうなる!?その思考はおかしくないか?!」
「え、なお君ってそうだったんですか!」
「そっちはそっちで何で嬉しそうな声出してるんだ!?」

 頭が痛い、とはこういった状況を指すのだろうか……先程の攻撃よりある意味痛い。心とか。
「……<仮面竜>の効果!デッキから攻撃力1500以下のドラゴンを特殊召喚する!」

《仮面竜(マスクド・ドラゴン)/Masked Dragon》 †

効果モンスター
星3/炎属性/ドラゴン族/攻1400/守1100
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

「来い!<ドラグニティ・パルチザン>ッ!」

《ドラグニティ-パルチザン》 †

チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/ドラゴン族/攻1200/守 800
このカードが召喚に成功した時、
手札から「ドラグニティ」と名のついた鳥獣族モンスター1体を特殊召喚し、
このカードを装備カード扱いとして装備する事ができる。
このカードがカードの効果によって装備カード扱いとして装備されている場合、
装備モンスターをチューナーとして扱う。

 佐光はそれを見て、見下すような表情をこちらに向けてくる。
 同時に決闘盤を操作し、ターンエンドの意思を表明した。

「チューナーモンスター……シンクロ召喚ですか。そのような低ベルモンスターから<光神機-轟龍>に勝てる攻撃力を誇るモンスターを呼び出せるとは思えませんが?」
「見てりゃわかるさ、俺のターン!手札から<調和の宝札>を発動!」

《調和(ちょうわ)の宝札(ほうさつ)/Cards of Consonance》 †

通常魔法
手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 ドラゴンチューナーをコストに、流れるようにカードを2枚ドローする。
「そして更に、手札から<ドラグニティ・ファランクス>を召喚!」

《ドラグニティ-ファランクス/Dragunity Phalanx》 †

チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/ドラゴン族/攻 500/守1100
このカードがカードの効果によって
装備カード扱いとして装備されている場合に発動する事ができる。
装備されているこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「でもってその二体をリリースして<ドラゴニック・タクティクス>を発動するぜ!」

《ドラゴニック・タクティクス》 †

通常魔法
自分フィールド上に存在するドラゴン族モンスター2体をリリースして発動する。
自分のデッキからレベル8のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。

「来い<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>!」

 次の瞬間、工場の地下から出てきた無数の枝が辺り一面を覆い尽くした。
 枝が侵食していく勢いで、辺りにある柱が小刻みに震え出す。
 次第に細かい枝は一つになる事で大きくなり、その中心から閃光が零れ出る。
 その輝きは剣の形を象り、輝きの中から出現した巨大な竜がそれを握った。

《ドラグニティアームズ-レヴァテイン》 †

効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2600/守1200
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する
「ドラグニティ」と名のついたカードを装備したモンスター1体をゲームから除外し、
手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
「ドラグニティアームズ-レヴァテイン」以外の
自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって墓地へ送られた時、
装備カード扱いとしてこのカードに装備されたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

「レヴァテインの効果発動――!墓地の<ドラグニティ・ファランクス>を装備し、装備カードとなったファランクスはフィールド上に特殊召喚する事ができる!」
「なお君凄い、2ターン目なのにここまで展開できるなんて……」
「珍しく手札が良いからな、一気に勝負に行かせてもらうぜ!」

 佐光のサイコ決闘者の力が微弱な物だという事はさっきの<光神機-轟龍>の攻撃で確認できた。
 だが、それでも油断はできない。
 かづなに被害が及ぶまでに、さっさと勝負を終わらせる――――!

「レベル8<ドラグニティアームズ・レヴァテイン>にレベル2<ドラグニティ・ファランクス>をチューニング。轟炎の粉塵を纏いし暴君と成せ!シンクロ召喚……<トライデント・ドラギオン>!!」

 光の輪に包まれた巨大な剣が二つに分かれ、生き物のように脈動を始めた。
 次の瞬間、剣は爆炎と共に粉々に砕け散る。
 大仰な3つの頭を持つ龍が猛々しく光の中から現れ、鋭い咆哮を上げた。

【治輝&かづなLP3200】

『治輝』 手札2枚
場:伏せカード2枚 トライデント・ドラギオン(効果発動直前)

『かづな』 手札4枚
場:伏せカード1枚 裏守備モンスター1枚

【佐光&七水LP5000】

『佐光』 手札4枚
場:伏せカード1枚 神の居城-ヴァルハラ 光神機-轟龍

『七水』 手札3枚
場:伏せカード2枚 裏守備モンスター1枚