シューティングラーヴェ(はてな)

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遊戯王オリジナル episode-44

 ……学校、だと?
 なんて事だ。早く行かないと、取り返しのつかない事になる――!!

「――サレンダーしろ。それで兄貴の治療でもしてやってくれ」
「見逃すのか……追っ手である我等を?」
「勘違いするな。今は急いでる……それだけだ」
「……」
 それを聞くや否や、袖無し弟は治輝を警戒しながら無言で一礼すると、傷を負った兄を軽々と背負い、下の階層へと走り去っていった。




遊戯王オリジナル episode-44





「治輝先輩は、いきなり……空から……振って――来たんだよ……」

 息も絶え絶えの様子で、純也はそう言った。
 七水は軽く流しながら、純也のペースに合わせて走っている。
「そうなんだ。それを見つけて純也君が介抱して、あの病院に?」
「そうそう……そんな――感じ」
 本来なら『人が空から振って来た』というフレーズに、色々と突っ込みを入れるべきかなぁと七水は思ったが、龍に乗って空を飛んでいくような人に常識を求めてもしょうがないかなぁ、と思う。
 ――多分、あの人が向かったのは愛城さんの所だ。
 賛同者達の組織……『ベイン』のリーダーの、愛城さん。
 私を一度は、組織に迎え入れようとしてくれた。愛城さん。
 かづなおねえちゃんからも詳しい話は聞けなかったけれど、あの人と治輝さんは、何やら因縁めいたものがあるらしい。
 組織に誘ってくれた時の事を、七水は走る速度を早めつつ、ゆっくりと思い出す。
 あの人は確かに、妙な迫力めいたものを感じる所があったけれど……

「――貴方の居場所を、私が作ってあげる」

 そう、こんな風に柔らかな声で、私に声を掛けてくれた。
 全ての失った私にとって、その言葉はとても居心地がいいものに感じられて――
 ……って、あれ?

「そう約束したのに、貴方の方から逃げ出すなんて、酷いと思わない?」

 目の前から、少しずつ近付いてくる人影があった。
 覚えのある声と、覚えのある姿をしている女の人が近付いてくる。
 無意識の内に、七水は走るのを止め、その場に立ち尽くす。

 あれは
 あの人は

「お久し振りね。七水ちゃん」

 目の前にいるのは、紛れもなく。
 こんな場所にいるはずのない、ベインのリーダー。
 愛城さん、本人だった――。