シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル episode-56

「どうして、お前がここにいる……?」

 目の前の少女に対して、動揺も押し隠して
 時枝治輝は、ようやく声を振り絞った。

「どうして、敵になるなんて言い出すんだ」

 かづなに問いを投げかけながら、治輝は自身に問いかける。

 ――俺の知らない間に『ベイン』に接触され、精神操作でも受けたか?
 いや違う。そういった類のモノを受けた人間は、こんなに澄んだ目をしない。

「あなたは愛城さんを倒したら、どうするんですか?」
「……」

 その瞳に治輝の姿を鏡のように映し、かづなは治輝に確認する
 それはもう、わかっているはずの事だ。
 それはもう、伝わってしまったはずの事だ。

「……木咲の為に、ここからいなくなるよ。スドからも聞いたろ?」

 表現をぼかしながら、そう言い放つ。
 それを聞いたかづなは左手を硬く握り、視線を真っ直ぐに治輝に向ける。
 決意を再確認したような、そんな目だった。
 そんな瞳を治輝に向けながら、かづなはハッキリと言い放つ

「なら、やっぱり私は――あなたの敵です」









遊戯王オリジナル episode-56


 治輝が乗り出していた体を一旦部屋に戻すと、かづなは名残り惜しそうに右手を離した。
 そのまま治輝と数歩距離を離すと、地面にある決闘盤を拾い、装着する。
 ――先程倒した。サングラス眼鏡男の決闘盤、か。
 治輝が手元を見ると、決闘盤に付着した手錠は、未だ繋がれたままだった。
 かづなは決闘盤にデッキを装着し、展開する。
 それを見て、治輝は一つ深呼吸ともため息とも見える息を吐き、思考を落ち着かせた。
「……俺は今急いでるんだ。今から愛城を止めないと、取り返しのつかない事になる」
「……」
「おまえと決闘してる暇も、手加減する暇もない。だから――」
 かづなは目を瞑って、その言葉を聞く。
 わかってくれたのか……?と、治輝は自らの願望を呟くと

「それでも、行かせるわけにはいきません」

 目の前の少女は再び目を開き、そう口にした。
 それを聞いた治輝は、目元を鋭くする。
 これ以上時間を取られれば、愛城より先に『学校』に着く事はできない。
 そうなれば、犠牲者が出るかもしれないんだ。
 それなのにコイツは――

「――どうしても、邪魔するんだな」
「……はい、絶対に通しません」

 その返事に、治輝は歯軋りする。
 確かに七水から『元気がなくなってしまった』と聞いていたかづなが、元気になってくれたのは嬉しい。
 だが、それとこれとは話が別だ。
 俺をここに縫い付ける事は、誰かの命を危険に晒すという事でもある。

「忠告はしたぞ。悪いが、俺はあれから強くなった……今回は速攻で終わらせる!」

 治輝の決闘盤が勢いよく展開して、ビープ音を鳴らした。
 デッキが高速でシャッフルされ、デッキの上から五枚のカードが宙に舞う。
 そのカードを左から右に手を振るように加えると、かづなを睨み付けた。

「私だって、あなたに勝てるなんて思ってません……」

 かづなは目を伏せながら、手札を束ねてドローする。
 昔のような、自信なさげな顔をして、手札にあるカード達を見つめる。
 だがそんな表情も一瞬。すぐにキッと治輝を正面から見つめた。

「でも、今日だけはあなたと同じに――いえ」

 その表情には、もはや一点の曇りもなかった。
 出会った時には想像もできない。迷いのない表情。
 凛とした瞳を向けながら、かづなは大きく宣言する。

「今日だけはあなたを……越えてみせます!」

 決闘!!

 叫びと同時に、かつてお互いを救い合った――
 二人の決闘が、始まった。