シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル episode-74

【治輝LP4000】 手札6枚   
場:スクラップ・ドラゴン

【愛城LP1500】 手札3枚
場:Arcana Force Ex - the Light Ruler
伏せカード一枚 神の居城-ヴァルハラ ヴァイロン・ステラ(対象Light Ruler)

 フィールドに君臨する<スクラップ・ドラゴン>の上から、とことことかづなが降りて来る。
 そのまま治輝のいる台座の上に飛び移ると、満面の笑顔を浮かべて手を上に掲げた。

「ただいま、なお君!」
「ああ、おかえり」

 ぱぁん!と。手と手が弾き合う音が辺りに鳴り響いた。
 治輝は得意気に前に向き直ると、かづなは何処か不満気な顔を浮かべる。
「ん、どうした?」
「――……名前」
 小さい声で唸るかづなだったが、何の事だかサッパリなので治輝は前に向き直る。
 そんな様子を眺めていた愛城は、呆然とした状態から我に帰り、声を上げた。

「なんで、貴方がここにいるの――?」

 佐光はベインの中でも中堅に位置する程の実力者だ。
 その佐光が何の実績も無い奴に、一般人に負けるなんて、有り得ない。
 そう愛城は考えていたのだ。
 そんな愛城をキョトンと見つめたかづなは、得意そうに言った。

「私がここに来れたって事は、答えは一つ。負けたのは――佐光さんの方です」





遊戯王オリジナル episode-74


 愛城は信じられない、といった表情を浮かべ、かづなを睨み付ける。
 そして視線を、目の前の要塞――ドラゴンへと移した。
「スド――とか言ったわね。貴方が加勢して、佐光を倒したのかしら」
 スドはそれを聞き、かつてと同じように辺り全体から聞こえるような声を発する。
 治輝にもかづなにも、それがどの方角から発せられる物なのか、判断ができない。

「ふん、精霊は貴様が思っているような便利な代物ではない。小さいダメージならともかく、サイコ決闘者やダイレクトアタック級の攻撃を何度も受けていたら身は持たん。――現に、小僧から受けた傷はまだ完全には治っていないのだからな」
「な……」
 その言葉に驚いたのは愛城だけではなく、治輝だった。
 普段通りに振舞っていたスドを見て、すっかり無傷なものかと思っていたが……。
「――別に戦闘に支障はない。心配せずとも、役割は果たす」
「そういう事を言ってるんじゃない!そうとも知らずに、俺は――」
「やはり貴様はマスターとは違うな……。安心しろ、先のデュエルではワシは全くの無傷じゃ、つまり――かづなは佐光とかいう男に、文字通り無傷で勝利したのじゃよ」

 えへへ、と照れ笑いを浮かべるかづなに、愛城は驚愕の表情を向ける。
 何の力を持たない人間が、私達ベインに勝てるはずがない、と。
 その驕りは、完全に壊されてしまった。
 呆然自失としている愛城をよそに、かづなの健在に心底安堵を覚えながら、治輝はスドに語りかける。

「でも無理はするなよ。若くないんだからさ」
「散々ワシの召喚を躊躇っていた癖によく言うわい。少しはワシに活躍の場をよこすのが筋じゃろう!」
「――ああ、なら悪いが使わせてもらうぞ。スド!」
「心得た――!」

《スクラップ・ドラゴン/Scrap Dragon》 †

シンクロ・効果モンスター
星8/地属性/ドラゴン族/攻2800/守2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分及び相手フィールド上に存在するカードを
1枚ずつ選択して発動する事ができる。
選択したカードを破壊する。
このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、
シンクロモンスター以外の自分の墓地に存在する
「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 その宣言と共に、眼前の要塞の銃口が全て開いた。
 それと同時に治輝はカードを一枚セットする。
 同時に急上昇を始めた<スクラップ・ドラゴン>は、その砲門をライトルーラーと伏せカードに向ける。
 そして、鉛のような容姿をした、同時に刃物を連想するような鋭い弾丸が、発射された。

「ヴァァァァニシング、ビュレットォォォォォォ!!!」

 治輝が叫びを上げたそれは、スドの――スクラップ・ドラゴンの効果名だった。
 
 今こそ、他のカードを犠牲にするのを嫌ったスドを
 カードを捨てる事で自分の力を発揮する治輝が使役する。
 それには各々の言葉にならない想いが、込められていた。

 そして、直撃。
 効果の直撃を受けたライトルーラーの中心部に、大きな虚空穴が現れ――命中した箇所の周囲一帯をえぐり取るように、虚空へと誘う。
 虚空に力を吸い取られるかのように、治輝の伏せカードはその穴へと吸い込まれていく。
 身体の中心を全て持って行かれたライトルーラーはたまらず膝を付き、そのまま爆散してしまった。

「ライト……ルーラー……?」
 愛城は自らの切り札を存在してはずの空間を、呆然と眺める。
 目の前で起こっている全ての事象が、理解の範疇を超えていたからだ。
 だが治輝はその間にも、次の行動を起こしていく。
「――バトルフェイズ!スド、ダイレクトアタックでトドメだ!」
「承知した!ディセーブル――」
「バーストォォォォ!」

 爆発で上がった煙を全て吹き飛ばすように、青銅色の閃光が愛城へと降り注いでいく。
 それは先程爆散したライトルーラーの欠片までも、粉々にしながら掃射されて行った。
 それを見た愛城は、カッと目を見開く。
 そして忌々しい機械龍――スクラップ・ドラゴンを見上げると、全てを呪うような叫びを上げた。 

「……ふざけないで、そんな物を――認めるわけにはいかないのよ!罠カード発動、ドレイン・シールド!」

《ドレインシールド/Draining Shield》 †

通常罠
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、
そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復する。

 青銅色の閃光を白い膜が受け止める。
 その光は見る見るうちに吸収されていき、愛城のライフへと変換されてしまった。

「な……!?」
「これで終わるとでも思ったの!?私はそこまで甘くはない!」

【愛城LP】1500→4300

 治輝は攻撃が通らなかった事実に対し舌打ちをすると、カードを二枚セットし、ターンを終えた。
 だが、戦況は覆す事ができた。これで――勝機は見えてきた。
 そう、治輝は思っていた。
 だからこそ、愛城の心境の変化には気付く事ができなかった。
 ふつふつと湧き上がる……これ以上無い程の怒りを、察する事ができなかった。

【治輝LP4000】 手札3枚   
場:スクラップ・ドラゴン
伏せカード2枚

【愛城LP4300】 手札3枚
場:神の居城-ヴァルハラ