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遊戯王Oカード episode-02

「俺の名前は恋路(レンジ)ってんだ。よろしくな!」
「レンジ……」

 その名を聞いた白矢が反応する。
 普段人に興味を持たない白矢の食指を動かす程の人物。
 もしかすると、相当な実力者なのかもしれない。
 友人Aはそう警戒しているのを知ってか知らずか、白矢カードケースをポケットから取り出し――
 その中にある一枚のカードを、恋路と名乗る男に突き出した。






《手札抹殺/Card Destruction》 †
通常魔法(制限カード)
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから
捨てた枚数分のカードをドローする。


「え、くれんの?」
「やろう。お前の知人によろしくな」

 白矢は無表情のままそう言ったが、友人Aにはその言葉の意味がさっぱりわからない。
 恋路は無邪気に喜び、それを見た白矢は満足気に頷いていた。







遊戯王Oカード episode-02




「つまり、俺はリア充である白矢に恋愛の手ほどきをしてもらいたいんだ!」
「恋愛……コイツに?」
 恋路の発言に、友人Aは目を丸くする。
 人間関係のノの字も知らない限定品オタクにその相談をするのは、些か不適当ではないだろうか。

「ほ、他の人にした方がいいんじゃないか? もっとそういうのが得意な奴に――」
「それじゃ駄目なんだ。俺はナチュラルな恋をしたい。それにはナチュナルな巻き込まれ方男子の意見が必要なんだよ!」
 どうやら 『先程の話』 というのは、教室での話も含まれているらしい。
 蒼菜と白矢に何があったのかを知った上で、話を持ち掛けに来たのだろう。

「――この俺を凡俗な男共を差し置いて選んだ観察眼は評価しよう。で、対戦相手は誰だ?」
「対戦相手って……お前な」
 それを言うなら想い人とかガールフレンドとかだろう――と友人Aは思うが、心の中に留めておく。
 白矢にいちいち突っ込んでいたらキリが無い。それはこの学校での最初の教訓である。

「相手は――メグちゃんだ。二人も知ってるだろう?」
「……知らん」
「……誰だっけ?」
「クラスの委員長の名前ぐらい覚えとけよおおおおおおおお」

 それは名前じゃなくて愛称じゃないか、と友人Aは心中で呟きつつ、委員長の姿を思い浮かべる。
 成る程確かに美人に分類されて人気も高い女子だろうが、友人Aはどうにも委員長が苦手だった。
 何故そう思うのか。理由はわからないが、興味があるわけでもないので、そこからは深く考えないようにしている。

「だけどあの人に近付こうとすると、副委員長が凄い顔で迫ってくるんだ……」
「ふぅん。威嚇してくるって事は、委員長の彼氏なんじゃ?」
「やっぱお前もそう思う? 悔しいが、彼氏持ちなら諦めるしか――」
 
 恋路がしょんぼりとそう言った時、無言で白矢はポケットに手を突っ込み始めた。
 そこから再びカードケースを取り出し、その中から一枚のカードを取り出し、恋路に突き出す。



《強奪/Snatch Steal》 †
装備魔法(禁止カード)
このカードを装備した相手モンスター1体のコントロールを得る。
相手のスタンバイフェイズ毎に相手は1000ライフポイント回復する。 


「……」
「……」

 沈黙。
 片や呆れから来る沈黙。
 もう片方は、そのカードを見てごくりと唾を飲み込む。

「――いいかレンジ。お前が守りを固めれば確かに破れる者はいないかもしれない。お前の心は、傷つかないかもしれない」
「……」
「だが、欲しければ攻めろ。そして勝って奪い取れ。それが決闘に勝利するという事だ」
 何言ってんのお前。と友人Aは思うが、心中に留めておく。
「で、でも副委員長はイケメンだし――俺なんかが攻めた所で」
「当然だ。決闘とはモンスターだけでは勝てない。ならば――」
 白矢は言いつつも、胸ポケットの中からスッと何かを取り出した。



《しびれ薬/Paralyzing Potion》 †
装備魔法
機械族以外のモンスターのみ装備可能。 
装備モンスターは攻撃宣言をする事ができない。
 

 それを見て唖然とする恋路に、更に白矢は言葉を続ける。
「魔法や罠を巧みに使えばいいだけの話だ。後はお前の好きにしろ」
「……わかったよ白矢。決闘も恋も戦いだって言いたいんだな」
「そういうことだ。思う存分やってこい」

 ドヤ顔で<しびれ薬>を渡す白矢。
 決意の篭った瞳で、それを頷いて受け取る恋路。
 そんな二人を、何かを堪える様に見ていた友人Aは

「決闘も恋も、ルールを守って楽しくやれええええ!」

 白矢に向かって
 ついぞ心中に留めておいた想いを、拳で表現した。