シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

X1フルクロスvsダブルオークアンタを小説っぽく







 まるで陽炎のようだ。
 揺らめく視界に映る相手は、そう感じる程に 『鉄』 を感じさせない。
 本当に同じ重力に縛られているのか――それすら疑問に思う程の疾さを伴っている。
 
 四方向から繰り出される斬撃。
 
 そんな現実では有り得ない現象を、敵の機体は引き起こしている。
 TRANS-AM System
 あの非現実的な機動を成し遂げているシステムの名前だ。その詳しい内容まではわからないが、とにかく目で追える速さではない。
 そう考えている間にも機体の彼方此方が悲鳴を上げている。
 これ以上の攻撃を受ければ、如何にこの機体といえど大破は免れない。
 そしてあの速度の機体から逃げる事も、当然叶わない。
 
「なら――ッ!」

 だが、次の瞬間。
 嬲られていたはずの機体の体勢を、ブースターを全開にする事で半ば無理やり立て直した。
 同時に真紅の斬撃が紙一重の所で機体を掠めていく。
「何……!?」
「避けたわけじゃない……でも、せいぜいそう思っていてくれよッ!」
 確かに事実としてこの機体――<フルクロス>は避けられないはずの攻撃を避けた。
 だが、こちらの動きが速いわけでは決してない。むしろ事実は――その逆。

 ―― 『遅かった』 からこそ、避ける事ができた。

 あちらが100の機動性を持続しているとしたら、こちらが先程発揮した機動性は70がいい所だ。
 だが常に100を発揮していたあちらの機体と違い <フルクロス>はほぼ0に近い無起動状態だった。機動性で劣っていたとしても、その速度の大幅な 『差違』 が相手の攻撃を外させたのだ。
 恐らく二度は通用しないだろうが、相手の警戒心を強めてくれさえすれば――
「その一瞬の間に、こちらの手札を……」
「避けたか。だが……」
「整えられるッ!」
「これで――!」
 敵の機体がユラリと大剣を振り被る。
 ――加速反応速度、限界値。
 ――バイオコンピューター強制冷却。
 当たれば確実に撃墜は免れないであろう死の一撃が、目の前まで迫る。
 先程と同じモーション。こちらは前回と同じ無起動状態。だが、こちらには切り札がある――!
「セーフティ、解除ッ!」
 急激に速度を上げ、先程と同じ――いや、それを遥かに上回る速度で斬撃を回避――!?
 そう思った瞬間。高速で流れる視界の先に、相手の機体の不可思議なモノを見た。
 振りかぶりながら、大剣が変形している――!?
「例え満身創痍であろうと、先程と同じ攻撃は通じない――それは先程の動きを見て確信していた」
「……ッ」
「ならば――!」 
 斬撃のモーションを寸断し、流れるように片手持ちから両手持ちに切り替える。瞬時に移動したはずのこちらの機体に寸分違わず突き付ける。
「狙い撃つッ!」
 次の瞬間、極光が視界を覆った。
 もはや大剣というよりは 『大砲』 だ。凄まじい熱量を持った極太のビーム――それが敵の機体 <ダブルオー・クアンタ>のラストウェポン。
 避けようがないタイミングな上に、狙いも隙がない。一度動きを見ただけでこの対応力、相手はやはりただ者ではない。

 そう。
 やはり、ただ者ではなかったのだ。
 
「Iフィールド、全っ開ッ!」
 視界が光に包まれる直前、左右4基のIフィールドジェネレーターを全開で起動させる。
 光が明滅し、ダブルオークアンタの放った極光を左右に散らす。
「……ッ!?」
 本来なら、このようなタイミングですぐ様使える兵装ではない。
 下準備が必要なこの武装を発動可能な状態にロックしていた場合、そのまま続けて斬撃で攻められたら、使う暇もなく撃墜されてしまうからだ。
「よかったよ……アンタがただ者じゃなくって! アンタならやってくれるって、アンタを買い被って、本当によかった……!」
「……ッ、ここまで見越していたというのか」
 ここで相手の機体――ダブルオークアンタの発光現象<TRANS-AM>が終了し、元の色である鮮やかな青色へとその姿を戻す。極光を弾き、フルクロスを大きく旋回させ、背中を向けつつ急接近。
「この瞬間を――!」
「……だが、そこは俺の距離だッ!」

 GNソードVとビームザンバーが交差し、火花を散らす。
 相手の発光現象はそれなりのリスクを伴うのだろう。動きも先程より鈍くなっている。だが。
 右方からザンバーでの斬撃。剣撃で受け止め、弾かれる。
 弾かれた衝撃を利用した左撃。盾で辛うじて反らされる。
 機体を上下反転しながらのサマーソルト。相手の兵装、GNソードビットが障壁を作り、直撃寸前に弾かれる。
 弾かれた一瞬の隙を突きクアンタが肉薄。押し出される。
「か……たい!? どこにそんな力が?」
「今、落とされるわけにはいかない!」
 押し出されながら、機体のあらゆる場所が悲鳴を上げている事を実感する。
 けたたましいアラーム音。軋む金属音。
 もう長くは、この状態を維持できない。
「……ッ、ビーコック……」
「遅いッ!」
 ボウガンのような形状の手持ちのビーム銃<ビーコック・スマッシャー>を構えるが、発射直前で破壊され爆発。視界が噴煙に包まれる。
「近接戦闘では射撃に切り替える余裕を与えてくれない? だけど……」
 相手の武装である<GNソードビット>は自由自在にこちらを仕掛けてくる物理射撃の様なモノに等しい。剣撃で押し勝てたとしても、それでは正面からのビット攻撃にやられてしまう。
「いや……? 違う。それでいいんだ!」
「来るか……最後の攻撃に!」
 再びビームザンバーでGNソードVと切り結び、連撃。
 だが、やはり近接戦闘の連撃勝負では決着がつかない。
 ダブルオークアンタは嵐のようなX1フルクロスのすべての攻撃を捌き、弾き、しのぎ続ける。
 そして、決着の時が来た。
「……そこだ!」
 肩のユニットにソードが直撃し、外部装甲が剥ぎ取られる。
 ニ撃目を反らして避けようと機動するが、間に合わない。ビームザンバーを持っていた片腕ごと吹き飛ばされる。
「……いや、ここだ――!!」
 だがこちらはそれが狙いだった。左手に鞭武装である<スクリュー・ウェッブ>を構え、宙に放り出されたビームザンバーを掴む。
「な……!」
 そのまま振り回し、ダブルオークアンタのGNソードVを叩き落とす。
 だが瞬時に平静を取戻し、ソードビットによる精密攻撃でスクリュー・ウェッブを切断。
 ザンバーは完全に失われ、クアンタのソードも弾き飛ばされた。
 だが、クアンタにはGNソードビットが残されている。
 それでもフルクロスは機体に残る全てを振り絞るように、クアンタに突進した。
「う――おおおおおおお!」
「……武器も無しに特攻だと? だが!」
 引導を渡そうと、正面からソードビットが襲い掛かってくる。
 この先行する中央のビットを迂回して避けて時間をかければ、他のビットが避けた先に追いすがり、機体は今度こそ撃墜されるだろう。
 だが、フルクロスは左手を引き絞る。
 その手に持つのは、Iフィールド発生装置でもある――スカルヘッドユニット。
「な――!?」
「でいああああああああああああああああああ!」 
 驚愕と同時に、Iフィールドの力を伴った左手がソードビットと――その先にいた機体の心臓部を貫いた。
 機体と機体が重なり、ノイズと共に接触回線が聞こえてくる。
「……見事な腕だ。全て、そちらの思惑通りだったのか……?」
「まさか。途中からは無我夢中でしたよ。ただ感じて――動いただけです」
「そう……か……」
 心なしか満足そうな声が聞こえ、目の前の機体のツインアイが明滅し、ゆっくりと消えた。
 手強い相手だった。もう一度勝てと言われても遠慮したい――そう本気で思える程に。
 敵は一人ではない。すぐにでも味方の所に救援に行かなくてはいけないが……
「少しだけ休んでいくか……少しだけ……」
 瞼をゆっくりを閉じ、視界が黒に満たされる。
 ほんの数秒の充足感を、その身にたっぷりと染み込ませるように。


























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 あとがき

 あるフルクロ使いの友人の誕生日用に書いたSSです。エクバ関係のSS書くぞーと思ったので細かい機体設定に突っ込みを入れるとうp主が泣きます。だがそれがいい
 しかし途中までエクバ準拠にやろうと思っていたのに書いてみたら別物になってしまったという罠。
 どこらへんが別物かというと

※覚醒技を虹ステして格闘迎撃してるクアンタ
※ギルティみたく相殺しまくってるお互いの格闘
※ビーコックスマッシャーは遅くない
※唐突に引き起こる部位破壊
※クアンタム状態のソードビットを脱がずに使い出すクアンタ
※疑似タイに勝ったら寝落ちするフルクロス

 ここらへんが別物です。ホントどうしてこうなった。
 小説書く能力が低下してたのでリハビリ的な意味もあります。所々稚拙ですがどうかご容赦お願いします。
 パイロットが誰かも一応明記してないので、そこは想像して頂くということで。クアンタがフルクロに負けるとかスペック的におかしい、という方もいるかもしれませんが、とりあえずエクバの世界ということで。
 では、ここまでお読み頂き全力でありがとうございました! カルマさんは誕生日おめでとー!