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遊戯王Oカード episode-20

「白矢先輩――ボクと決闘してください」
「わかった。だが、一つ条件がある」
「なんでしょう?」
「俺が勝ったら、お前が何で俺のことを知っているのか。その全てを教えろ」
「元々教える気ではいたんですが……わかりました」
 黒鷹は困ったように笑った後、含みのある顔で頷いた。
「そういうのもまた面白い、ですしね」





 その後の授業は、頭に入らなかった。
 黒鷹君は丁度正反対の席になり、少し安堵してしまう自分がいる。
 先程言われた言葉――それは、私がここの所遠ざけていたキーワードそのものだったのだ。
 白矢君は凄い。普通の人には無いものを沢山持っている。私は白矢君が大好きだし、同時に憧れている。あんな風に生きたいなって、いつも思ってる。
 ……でも、私はどうだろう。
 今の私は、あの人に相応しい 『本物』 になれているだろうか。
 答えは否だ。ただ憧れて、真似事をしているだけの今の自分は本物じゃない。
 白矢君には相応しくない『偽物』 なのかもしれない。
 ――黒鷹君から見ても、そう見えたのかもしれないな。 
 そう考えるだけで、重石が乗ったように気分が重くなる。
 ……放課後の二人の決闘、見たい気もするけど。
 今日は嫌な感情を通して見てしまう気がして、どうしても行く気にはなれなかった。


「一人ですか。白矢先輩」
「ああ一人だ。蒼菜も友人Aも用事があるらしくてな」

 ――放課後。
 転校生である黒鷹との約束通り、屋上に来た白矢はバツが悪そうに言った。
「皆さん忙しい時期なんでしょう。それに、先輩と決闘することができればボクはそれでいい」
 その含みのある言い草に警戒心を強め、白矢は意識を切り替える。
「先輩――か。だが、お前は」
「同学年のはずだ、ですか? 駄目ですよ先輩。そんな決まりきった凡俗なやり取り、貴方には……ボク達には相応しくない。本当に全く相応しくない。失望させないでくださいよ」
「……凡俗だと?」
「そうですね。強いて答えを言わずに答えを言うのなら、ソレが答えです。……さぁ始めましょう先輩?」
 柔和な笑いを浮かべ、黒鷹は決闘盤を最小限の動きで展開させる。
 それに応じる前に白矢は一言問いかける。

「なら簡略化しよう。お前は 『何』 に対しての後輩だ?」
「決まっているでしょう。 『心』 に対しての後輩ですよ」

 返事と共に決闘盤の展開音が屋上に響き渡る。
 空に近い分眩しかったはずの夕焼けを隠すように、強い風が雲を運んでくる。
 二人は違う制服をはためかせながら、デッキ上から五枚のカードを抜き取った。


【白矢】LP4000 手札5枚
場:なし

【黒鷹】LP4000 手札5枚
場:なし