シューティングラーヴェ(はてな)

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遊戯王Oカード episode-21


【白矢】LP4000 手札5枚
場:なし

【黒鷹】LP4000 手札5枚
場:なし

              シン
「心後輩――さしずめ心の後輩と言った所でしょうか。いい響きでしょう?」
「付いていけん。先行は俺がもらう……ドロー!」
「付いていけない? ダメですよぉ先輩。これぐらいついてこれなきゃ、それこそ凡俗じゃないですか!」

 白矢は考える。
 凡俗と連呼する目の前の自称後輩は――間違いなく俺の事を知っている。
 それ自体は不思議でもなんでもない事だ。俺自身が少しばかり有名である事の自覚はある。あれだけ目立った行動を重ねているのだ。凡俗という口癖も、俺自身の事も、他校の誰かに知られていたとしても不自然ではない。
 だが、黒鷹の様子を見ている限り、噂を聞き及んだだけの一般学生とはとても思えない。
 まるで、常時俺を監視でもしていたような……。

「……なんにせよ仕掛けてみればわかるか。俺は手札の沼地の魔神王の効果を発動。融合を手札に加える!」

《 沼地 ぬまち の 魔神王 ましんおう /King of the Swamp》 

効果モンスター星3/水属性/水族/攻 500/守1100このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。また、このカードを手札から墓地へ捨てる事で、デッキから「融合」魔法カード1枚を手札に加える。


《 融合 ゆうごう /Polymerization》 

通常魔法手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。

「そして二枚の<E・HEROクレイマン>に融合を発動!」

《 E・HERO エレメンタルヒーロー  クレイマン/Elemental HERO Clayman》 

通常モンスター星4/地属性/戦士族/攻 800/守2000粘土でできた頑丈な体を持つE・HERO。体をはって、仲間のE・HEROを守り抜く。

「初ターンで攻撃もできないのに融合――? 未知の相手にいきなり無意味に手の内を晒す事はしないんじゃないんですか?」
「――融合召喚 <EHERO・ガイア>!」

 黒鷹の忠告を無視し、紫色の空間の中から屈強な黒鉄のHEROが召喚される。
 効果こそ不発するが、その守備力は並大抵のモンスターの攻撃を寄せ付けない。

《 E・HERO エレメンタルヒーロー  ガイア/Elemental HERO Gaia》 

融合・効果モンスター星6/地属性/戦士族/攻2200/守2600「E・HERO」と名のついたモンスター+地属性モンスターこのカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードが融合召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスター1体の攻撃力を半分にし、このカードの攻撃力はその数値分アップする。
「……俺はカードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
「失望しそうですよ白矢先輩……貴方が貴方が言った事を破るなんて……」
 ため息を吐くと、黒鷹はカードをドローし、白矢を睨み付ける。
「……貴方が腐っていないかどうか、敵意を持って確かめさせてもらいます。ボクは手札の二体の<E・HERO>を……」
 白矢は視線を上げて、少なからず驚愕を覚える。
 エレメンタルヒーロー使い? あちらも<融合>を使うのか?
 そんな思考を見透かしたのか。黒鷹は妖しく、小さく笑う。
「<ダーク・フュージョン>」
「……ッ!?」

《ダーク・フュージョン/Dark Fusion》 

通常魔法手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、悪魔族のその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン相手のカードの効果の対象にならない。

「そのHEROは名に<大地>を冠してる癖に随分と人工物臭い光沢を放っているんですね。まるで金属のようで――さぞかし<電気>を通すのでしょう? <大地>の癖に」
「何を――」
「――効果発動」

 黒鷹が小さく呟くと、ガイアの周囲に電磁フィールドが形成され、電撃が地表から迸った。
 呻くガイアの低い声が、痛々しく屋上に響き渡る。
                 イービル
「ボクが呼び出したのは<E-HERO>ライトニング このカードは代償を支払わず、相手のモンスターを破壊する能力がある」

《 E-HERO イービルヒーロー  ライトニング・ゴーレム/Evil HERO Lightning Golem》 

融合・効果モンスター星6/光属性/悪魔族/攻2400/守1500「E・HERO スパークマン」+「E・HERO クレイマン」このカードは「ダーク・フュージョン」の効果でのみ特殊召喚できる。1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを破壊する。
 そのモンスターを見上げ、白矢はようやく現状を把握した。
 だが既に<E・HEROガイア>の崩壊は始まっている。 

「ガイアを破壊したら次は貴方へのダイレクトアタックだ。あれほどの手札を初手から使い、その上2400ものダメージを食らってしまえば――先輩の負けは確定したも同然」
「……」
「さぁ、先輩への道を開けろ、ガイア!」
 その声が響くと同時に<ライトニングゴーレム>の破壊の力がガイアを襲い、凄まじい威力の爆発が巻き起こった。
 ガイアの居た筈の場所の地面が割れ、その中から噴煙が立ち上る。
「未知の敵に対し最初から手の内を明かさない――貴方が言ってた言葉を守らないから、こういう事になるんです。さぁ、ダイレクトアタックを――」
「ああ、俺もそこが気になっていた」
「……?」
 噴煙でお互いの姿は見えない。だが白矢はハッキリとした声で、黒鷹に問いかける。
「確かにお互いが未知の敵の場合、自分から手を晒すべきではないと俺は色々な決闘で言ってきた。だがな――お前の場合は違うだろう」
「……と言うと?」
「今自分で言っただろう。お前は俺のことを知り過ぎている。ただ見知っただけの人間が、そんな有り触れた決闘論を 『俺の言葉』 として記憶してるはずがない。つまり――お前にとって俺は未知でもなんでもないんだ。恐らく……デッキに関しても」
 言いながら白矢は伏せカードに手をかける。
「なら、デッキ内容を伏せる必要はない。敢えて公開し、行動を誘導する――それが、凡俗と俺との違いだ!」
 次の瞬間。
 噴煙の中央を、一筋の閃光が突き抜けた。
 海のような青いマントをはためかせるそのモンスターは、銀色のレイピアを振りかざし、周りの煙を一掃する。

《 M・HERO マスクドヒーロー  ダイアン/Masked HERO Dian》 

融合・効果モンスター星8/地属性/戦士族/攻2800/守3000このカードは「マスク・チェンジ」の効果でのみ特殊召喚できる。このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、デッキからレベル4以下の「HERO」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

「まさか――<マスクチェンジ>で避けた!? イービル-ライトニングの破壊効果を?」
「同時に攻撃力2800の<ダイアン>の召喚。さて――ご自慢の電気とやらはこの銀の鎧に通りそうか? 黒鷹……!」


【白矢】LP4000 手札2枚
場:<M・HERO ダイアン>

【黒鷹】LP4000 手札3枚
場:<E-HERO ライトニングゴーレム>