シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル prologue-25

「――レヴァテイン!?」

 <レヴァテイン>では幻魔の攻撃に耐え切れず、遂に攻撃がデコイドラゴンと治輝に向かってくる。
 墓地にはもう上級ドラゴンは存在しない。場には瀕死のドラゴン3体にデコイのみ。

「これで……決闘は終わりだ」

 疲れきった顔になった治輝は、後ろにいるかづなに視線をやる。
 たた空虚だった目が、僅かに潤んでいるように見えた。

 ……アイツにも、この状況が見えているのかもしれないな

 だからこそ、治輝は深く息を吸い込む。
 どんな慰めも届かない。想像もできない程深い、心の闇。
 だったら、どうすればいい?
 言葉が届かなくなった程追い詰められた奴に、俺は何をしてやれる?

 その答えを、今から見せる。
 勝ち負けなんてのは二の次だ――!

「速効魔法、発動!」










遊戯王オリジナル prologue-24


 幻魔皇ラビエルの拳が、ついに<デコイ・ドラゴン>に直撃した。
 よく目を凝らすと、あの小さな竜が……<デコイドラゴン>が
 身を盾にするように、ラビエルの拳を受け止めている。

 だが、戒斗は勝利を確信していた。
 仮にアイツの伏せカードが<サイクロン>のような魔法除去カードなら
 <ダイヤモンド・ドラゴン>が破壊される時に既に使っているはず。
 その場凌ぎをするカードでも同じ事だ。この攻撃は、絶対に通る――!

 そんな戒斗の確信を知ってか知らずか。
 攻撃力4000の<幻魔皇ラビエル>と
 守備力200の<デコイドラゴン>との戦いは続いていく。

 本来なら、勝負にならなかっただろう。
 だがしかし、ラビエルの拳は動かない。
 そう、違和感があるとすればこの『状況』そのもの。
 守備力2800の<ダイヤモンド・ドラゴン>すら一撃で粉砕したラビエルの拳を
 天をも凌駕する、神をも粉砕する幻魔皇の拳を

 ――何故、あんなチビが『受け止めて』いる……?!

「どうしたァ?早くやっちまえよォ!!」

 戒斗は念の為ラビエルの攻撃力を再度確認する。
 攻撃力は未だに絶対無比の領域である4000を示していた。

 なんだってんだ、一体……!?
 戒斗の顔に苛立ちが混じり始めた……その時。

 デコイドラゴンが、その体よりも遥かに大きい、眩い程の光を放った。
 その極光は、デコイの周りに刺さっていた<青氷の白夜龍>の翼を覆うように包んでいく。
 氷の片翼は細かい粒子になり、デコイドラゴンの周りを漂い始めた。

 【200→2700】

 同じように<ダイヤモンド・ドラゴン>の角が分解され、その粒子がデコイドラゴンの付近を包み込む。
 体の半分を失った<ダイヤモンド・ドラゴン>は、その様子を確認するや否や
 何かの感情を込めた咆哮を、力一杯天空へと轟かせた。

【2700→5500】

 そして<レヴァテイン>の折れた剣にも、その光が到達する。
 細かく砕けた剣が粒子となり、デコイドラゴンの前方に展開された。
 その剣の断片を見たデコイドラゴンは「きゅい」と小さく鳴くと
 更に辺りを包む光が巨大になっていった。

【5500→6700】

「何が起こっていやがる!守備力6700だとォ……!?」

 戒斗は治輝のフィールドに視線を向け、状況を確認する。
 場のモンスターは瀕死の竜が3体。
 <ドラグニティアームズ・レヴァテイン><ダイヤモンド・ドラゴン><青氷の白夜龍>
 それに守備表示の<デコイドラゴン>が一体。

 そして魔法罠カードは、デコイドラゴンを復活させた<エンジェルリフト>に……!?
 そこまで確認を負え、戒斗は驚愕で目を見張る。
 治輝が今発動しているカード。
 あれは、あのカードは


















《結束(けっそく) UNITY/Unity》 †

速攻魔法
自分のフィールド上のモンスター1体を選択する。
選択したモンスターの守備力はエンドフェイズまで
自分のフィールド上に表側表示で存在する
モンスター全ての元々の守備力を合計した数値になる。













 ――光が辺りを包んでいく。
 ――全ての竜の守備力が、一つになっていく。
 幻魔の拳は破壊され、ラビエルの体は大きく吹き飛ばされ……その閃光はそのまま戒斗を包み込む。
 目が眩みそうな光に仰け反りながら、戒斗の耳に誰かの声が聞こえて来た。

「こういうの見てると、確かに信じたくなるよな」

 その言葉は、治輝の後ろにいた誰かの心にも、確かに響いていく。
 自分に言い聞かせる為に作った言葉が、自分とは違う人が届かせてくれる。

「どんなに小さな奴だって、大きい脅威を乗り越えられる――――って」

 閃光。
 今度こそ辺りは真っ白になり、戒斗の体は大きく吹き飛ばされる。
 その時、戒斗は揺らぐ視界の中、治輝のリストバンドの一部が砕ける様子を見た。
 その砕けたリストバンドに、視界が固定される。
 うっすらと光るその装着部分である手首から、戒斗は目が離せない。

 壮絶と言っても大げさでは無い程の光の粒子の奔流は
 球体から大きく形を変え、二つとなって天空へと昇っていく。

 デコイドラゴンはその目をキリッとさせながら
 今までで一番嬉しそうな、それでもまだまだ小さい咆哮を轟かせた。

【戒斗LP1600→0】