シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

オリジナルstage 【EP-27 サイドN】

「……行き止まり?」
「の、ようじゃな」

 進んだ先には、巨大な壁があった。
 だが、ただの壁ではない。
 蛍の様に鮮やかな光を放つ、神秘的なものだ。
 七水とリソナはその美しさに見惚れてしまう。

「きれいだね……」
「光ってるです!」
「あぁ、怖いくらいにな――」

 神楽屋はその壁を、ジッと睨む。
 見つめているだけで気を持って行かれそうな光。
 それに対して何の警戒も抱かない程、神楽屋は楽天的ではない。

 そんな中、スドが記憶を手繰るかのような素振りを見せた所で



「――これ、見た事あるかも」



 治輝が、そう呟いた。
 全員が一斉に振り向くと、治輝はハッとした表情になり、慌てて手を振る。

「いや、似たようなのを見た事あるってだけなんだ。多分これ、何らかの力で空間を遮断する役目を持ってる」
「遮断……?」
「簡単に言えば、勝手に超えられない柵みたいな物。飛び越えるようとしても弾かれるし、物理的な手段では破壊が不可能って話だ。もし破壊しようとした場合」
「ハッ、不可能――ね」

 神楽屋は壁を睨み、決闘盤を展開させた。
 次の瞬間。
 濃青のマントをはためかせ、真紅の騎士が現れる。

《ジェムナイト・ルビーズ/Gem-Knight Ruby》 †

融合・効果モンスター
星6/地属性/炎族/攻2500/守1300
「ジェムナイト・ガネット」+「ジェムナイト」と名のついたモンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
「ジェム」と名のついたモンスター1体をリリースして発動する事ができる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで
リリースしたモンスターの攻撃力分アップする。
また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

「そう言われると試してみたくなるのが性分でな――!」
「馬鹿テルずるいです! リソナも一緒にやるですー!」
「ちょ、2人とも待っ……」

 リソナは天馬の如き龍――<ライトロード・ドラゴン・グラゴニス>を召喚し、真紅の騎士をその背中に乗せ急上昇させる。
 治輝の静止も聞かず、真紅の騎士は自慢の剛槍を振り下ろし
 グラゴニスの大きく開いた白金の龍の口に、黄金色の光が収束し、発射される。

「クリムゾン・トラインデントォ!」
「ホーリィ・スピアです!」

 重力加速度を利用した、サイコ決闘者2人の同時攻撃。
 本来なら、壁は粉々に四散している所だろう。
 だが

 人間の聞こえる限界に近い程甲高い音が、辺りに鳴り響いた。
 それは、黄金の槍がひしゃげた音。
 真紅の騎士の槍が、砕けた音。

「な……!?」
「です!?」

 2人はその結果に、驚愕を隠せなかった。
 全力では無いとはいえ、力を合わせても傷一つ付かない壁。
 蛍の様なやんわりとした光は、先程と何も変わらない。

 神楽屋とリソナの後ろでそれを見ていた七水は、不思議な違和感を感じた。
 砕けた音そのものは、確かに武器が折れた事による発生したものだろう。
 でも、単純な硬度によって砕かれたとは、何かが違う気がする。

「――みんな、少し下がっててくれ」

 治輝が何やら気取った調子で、一歩前に踏み出した。
 その顔には冷や汗が浮かんでいるが、何かを思いついたような顔付きをしている。

「まさかおまえ――あれ、壊せるのか?」
「……悔しいけど凄いです! どうやって壊すのか、見せて欲しいです!」
「治輝さん……?」
「小僧――」

 治輝はスドと目配せをし、静かに溜め息を吐いた。
 そして、治輝の周りに、光が集まり始める。

「俺も神楽屋さんと同じノリで、試した事があるんだ」

 その色は、壁が放っていた光と同じ色。
 それは治輝の体を包み、その様子は溢れ出る力の象徴を思わせる
 
「そして、わかった事がある」

 ゴクリと、神楽屋は唾を飲み込む。
 自身の攻撃を歯牙にも掛けなかった硬度を、どう突破するのか。
 若干の悔しさを滲ませながら、それを見守る。

 治輝は覚悟を決めたかのように、ゆっくりと目を閉じ――深呼吸した。
 偉そうに腕を組み、そして


「破壊に失敗すると――1番壁の近くにいる奴が 『どっかに落ちる』って事をなあ!」


 次の瞬間
 治輝の真下に、大きな空洞ができた。
 掃除機に吸い込まれるかのような勢いで、腕を組んだままの格好で治輝はそれに吸い込まれる。

「おい、時枝ァ!?」
「治輝さあああああああああん!!」
「ナオキが身を挺して犠牲になってくれたです……リソナ、ナオキの事忘れないです」

 何やら悲痛な叫びを上げ、驚愕の叫びを受けながら、時枝治輝は姿を消した。
 それを見ていたスドは、大きな溜め息を吐く。

「それを最初に説明せい。バカ者――」

 とりあえず命に別状が無い事を、残った者達に説明する必要がある。
 スドはやれやれと肩(?)を竦めながら、また大きな溜め息を吐いた。