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白矢君と蒼菜さん クリスマスの過ごし方(再更新)


 こんにちはおはようこんばんわ! 私蒼菜! 記憶力が異常に低い十六歳の女子高生!
 ひょんな事からクラスの不良に銃弾を放たれた私を助けてくれたのは、カードを実体化させる能力を持つ白矢君のサイコロだった! それ以来白矢君が好きになってしまった私は、彼が不思議な活動をしていることを知ってしまい、それのお手伝いに従事しているのです!

「でもクリスマスぐらい二人で普通にどこかに行きたい気も!」
「今月は凡俗から逸する為の活動ができていない――ん、今なんと言った?」
 私の机の隣にいるこの人こそ意中の人である白矢君。
 彼はとにかく普通の事が嫌いで、有り触れた人間からの脱却を望んでいる意識高い系男子なのです。
 その為の活動を、日々行っているようなのだけれど……。
「なにを……って。 もうすぐクリスマスだね、って」
「クリスマス……その手があったか……!」
「えっ」
「24日正午に駅前に来い。 いいな」
「えっ!?」
 なんということでしょう。
 顔の思い出せないお母さんとお父さん。 蒼菜は明日、大人になるかもしれません。

「クリスマスの日に呼び出し。 これってもしかしなくてもデートだよねうへへへ……どうしよう心の準備が!」
 余りにも心の準備できないので予定の時刻の二時間前に付いてしまった。 そして四時間後。
「待たせたな」
「時間ぴったしだね白矢君! そ、それで今日はどこに行くの?」
「そこにあるカラオケの大型店舗だ。 最近できたばかりらしい」
 クリスマスにカラオケボックスという名の密室で二人きり……これはまずいです。 心の中でガッツポーズです。
「よし、行くぞ蒼菜」
「あ、でもこの時期って凄く混んでるんじゃないかな? いきなり行ってもすぐに入れてもらえないかも」
「安心しろ。 予約はしてある」


 入店音と共に、私のハートは火炙りの刑になる。
「綺麗なお店――ここで白矢君と……」
「いらっしゃいませ。 申し訳ありませんが、当店は現在込み合っておりまして」
「予約した白矢だ」
「ドキドキ」
「失礼しました。 白矢様ですね。 今日は何名様のご利用でしょうか?」
 何もかも白矢君に任せるのも忍びないので、私は自分の心を映した純真な笑顔を店員さんに向ける。
「えっと、二名――」
 そう言おうとした、次の瞬間。

「一名だ」

 えっ、という店員さんの声に被るように、私も心に浮かんだ声をそのまま表に出した。 えっ。
 白矢君は凄まじいドヤ顔をしているが、私は呆気にとられてそれどころではない。
「は、はい一名様のご利用ですね。 503号室までどうぞ」
「えっ」
「ありがとう。 どうした蒼菜。 何か問題でも?」
「問題大有りだよっ!!!」
「安心しろ。 俺にも節度はある。 このままお前を一人で外に放り出したりはしない」
「白矢君! 信じてた!」
 キラキラと星の光がカラオケ店に舞い降り、白矢君を美しく煌めかせる。 
 彼は人と違う事をしつつも、女の子を傷付けたりはしないナイスガイなのだ。
 きっとさっきのは冗談で、二名に変更してくれるのだろう。
 瞳をキラキラと輝かせながらその言葉を今か今かと待っていると、白矢君は自前の白い歯をちら見せしつつ、口を開く。

「大丈夫。 ちゃんとお前の部屋も予約してある たっぷり堪能してくるといい」
「」




 十分後。 白矢が割り振られた部屋。
「クリスマスに男女二人でカラオケに入店してヒトカラ――これは世界中探してもなかなかいないだろう。 また一歩非凡に近付いたな。 二時間走り回った甲斐があった」

 一方。 私が連れてこられた部屋。
 入るなり私は無言でマイクを取り、操作盤を起動。 迷わず検索ワードを入力する。
 言葉にできない。
 いい曲だなっ。






 おわり