シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル episode-72

【治輝LP4000】 手札6枚   
場:伏せカード一枚

【愛城LP2000】 手札5枚
場:堕天使アスモディウス
伏せカード一枚 神の居城-ヴァルハラ 虚無を呼ぶ呪文<発動中>
 

「虚無を呼ぶ呪文……確かに強力な罠だな。だが手札を一枚使ってまで、ライフを磨り減らしてまで、今の状況で使う必要はあったのか?」

 治輝のフィールドは結果的に空にされたが、それでも<虚無の呪文>を発動する理由としては、弱い。
 確かに発動機会の少ないカードだが、ここで無理に使う事は得策では無いんじゃないかと、治輝は感じた。
 そんな治輝の問いに対し、愛城は高笑いをあげた。
「あはははは、確かにアドバンテージ的な意味では今の戦法は得策でもないかもしれないわね。だけど――」

 愛城がそう語った、次の瞬間。
 治輝は目の前の空間が、どんよりと歪むような感覚を覚えた。
 その歪な景色の中央から、黒い影がフィールドへと降り立った。
 その姿を確認し、治輝は驚愕の余り絶句してしまう。

「……!?」
「要はこのターンで貴方を葬れば、何の問題も無い!天使だけが私の脳だとでも思った?ドラゴン族が貴方の特権だとでも思った?反吐が出るわね、そういう考え方は!」

 そう、そのモンスターは治輝が好んで使う種族――ドラゴン族だった。
 しかしその風貌はドラゴンというよりも、何処か悪魔に近い邪悪さを放っている。

《冥王竜(めいおうりゅう)ヴァンダルギオン/Van'Dalgyon the Dark Dragon Lord》 †

効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2500
相手がコントロールするカードの発動をカウンター罠で無効にした場合、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、
無効にしたカードの種類により以下の効果を発動する。
●魔法:相手ライフに1500ポイントダメージを与える。
●罠:相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
●効果モンスター:自分の墓地からモンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。

「ヴァンダルギオンカウンター罠を引き金に特殊召喚でき、無効にしたカードの種類によって、その効果を変えていくカード。本来では一つの効果しか使用できないのだけれど」
「……」
「今回は<虚無を呼ぶ呪文>で複数の効果を無効にしている。無効にしたのはニ種類――」

 罠カードである<立ちはだかる強敵>
 効果モンスターである<デコイ・ドラゴン>と<ハネワタ>
 つまり二種類の効果を、目の前の冥王竜は備えているという事になる。
 それを象徴するかのように、冥王竜の右手には紫色の
 左手には焦げ茶色の妖しい光が、それぞれ瞬いていた。

「まずは蘇生効果を発動させるわ。私は<冥王竜ヴァンダルギオン>の効果で、墓地からモンスターを特殊召喚。来なさい――<ヴァイロン・テトラ>」

《ヴァイロン・ステラ》 †

チューナー(効果モンスター)
星3/光属性/天使族/攻1400/守 200
このカードがモンスターカードゾーン上から墓地へ送られた場合、
500ライフポイントを払う事で、このカードを装備カード扱いとして
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体に装備する。
このカードの装備モンスターと戦闘を行った相手モンスターを、
そのダメージステップ終了時に破壊する。

「続けて破壊効果を発動。貴方の唯一の希望であるその伏せカードを破壊するわ」
「な……!?」

 現在治輝のフィールド上に残ってる一枚の伏せカード。
 そして相手の場には2体の上級モンスターがいる。
 ダイクレトアタックをまともに受ければ、そのまま敗北に直結するのは明らかだ。

「――そうは行くか!俺はチェーンして伏せカードを発動。威嚇する、咆哮ッ!!」

《威嚇(いかく)する咆哮(ほうこう)/Threatening Roar》 †

通常罠
このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。

 「フリーチェーンの罠カード……やるわね」
 愛城はそのカードを確認し、小さく舌打ちを打つ。
 例え破壊カードを使われようが、フリーチェーンが可能なカードならば、その効力を殺される事はない。
 「こっちの台詞だ。もっと温存させてくれてもバチは当たらないだろ……!」
 だが、数少ない防御カードをここで使ってしまった代償は大きい。
 治輝の心中は、余裕とはかけ離れていた物だった。
 何故なら

 「――なら、貴方に更なる絶望を与えてあげるわ」
 
 何故なら愛城は、まだ『切り札』を召喚していないからだ。
 自らの最も得意とするカードを操っていない状態で、少しでも優位を保っておきたかった。
 治輝は目を閉じると、冷や汗を一つ流しながら、自らの呼吸を落ち着ける。
 瞼の上からでも感じる事ができる眩しい光と、圧倒的な威圧感が生まれ出るのを肌で感じながら、精神を集中させる。


【愛城LP】2000→1500

《アルカナフォースEX(エクストラ)-THE LIGHT RULER(ザ・ライト・ルーラー)/Arcana Force Ex - the Light Ruler》 †

効果モンスター
星10/光属性/天使族/攻4000/守4000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に存在するモンスター3体を
墓地へ送った場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い以下の効果を得る。
●表:相手モンスターを戦闘によって破壊し墓地へ送った時、
自分の墓地からカード1枚を選択して手札に加える事ができる。
●裏:このカードを対象にする効果モンスターの効果・魔法・罠カードの
発動を無効にし破壊する。
この効果でカードの発動を無効にする度に、
このカードの攻撃力は1000ポイントダウンする。

 目を開けると、目の前には巨大な上級天使が君臨していた。
 相手フィールドに存在するモンスターは全て消えている。恐らくこのカードの召喚に利用されたのだろう。
 その証拠に愛城のライフは1500になり、ライトルーラーには<ヴァイロン・ステラ>が装備されている。
 治輝はため息を一つ吐くと、それを使役するモンスターにぼやくような声を放った。

「――ソイツが召喚される前に倒せたら、話は楽だったんだろうけどな」
「私に時間をあれだけ与えておいて、それで済むとでも?」
「済まないだろうな、やっぱり」

 攻撃力――4000。
 それは治輝のデッキでは越えられない、一つのボーダーラインだ。
 だからこそ、コイツを突破できるかできないかで、今後の状況は変わってくる。

「私はこのままターンエンド。――さぁ、無様にもがく様を見せて頂戴」

 そう言った直後に、一枚のカードが上空からフィールドへとぱさりと落ちた。
 そのカードは当然<アルカナフォースEX-THE LIGHT RULER>だ。
 カードの頭は、真っ直ぐ治輝の方を向いている。
 つまり効果は――『正位置』だ。
 これで、その場凌ぎの戦略を続ける事は不可能。
 そんな事をすれば、モンスターを倒される度に墓地のカードを回収され続ける事になる。
 戦況的には、かなり厳しい状態だった。


【治輝LP4000】 手札6枚   
場:なし

【愛城LP1500】 手札3枚
場:Arcana Force Ex - the Light Ruler(正位置)
伏せカード一枚 神の居城-ヴァルハラ ヴァイロン・ステラ(対象Light Ruler)