シューティングラーヴェ(はてな)

シューティングラーヴェの移行先

遊戯王オリジナル epilogue-07

【治輝LP2600】 手札4枚   
場:なし
伏せカード2枚

【戒斗LP4000】 手札1枚
場:終末の騎士(守備表示) 幻魔皇ラビエル(守備表示)
伏せカード2枚

「――俺のターン!」
 治輝は焦りをどうにか抑え込みながら、カードを一枚ドローする。
 そのカードを見た治輝は、自然と顔を綻ばせた。
「何笑ってやがる。幻魔皇攻略に失敗したからっておかしくなりやがったかァ?」
「笑いもするさ。ソイツの攻略は、まだ終わらない!」
 治輝がそう言った直後。
 スタンバイフェイズに、墓地から一体のモンスターが特殊召喚される。
 置物のような容姿を持ったそのドラゴンの名前は――

《ミンゲイドラゴン/Totem Dragon》 †

効果モンスター
星2/地属性/ドラゴン族/攻 400/守 200
ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、
このモンスター1体で2体分のリリースとする事ができる。
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。
この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 声を上げる置物のドラゴンの事を、治輝が静止に駆け寄ろうとした一瞬の隙を付き<ミンゲイドラゴン>は、この世の物としか思えない、ドラゴンに相応しい獰猛な咆哮を上げてしまった。

「――みーんみんみんみん!!」

 ――静寂。
 今度こそ、辺りは気まずい静寂に包まれた。
 戒斗はその声を聞くと、心底つまらそうな顔を治輝に向ける。
 治輝はその声を聞くと『やってしまった』と言わんばかりに手で顔を覆った。
 かづなはその声を聞くと『かわいいです!』と思わず口に出し、目をキラキラと輝かせた。

「緊張感も何もありゃしねぇ。てめェがボロボロの癖に前回ソイツの口を塞いだ理由がそれか――」
「どう見ても昆虫だよな。ドラゴンじゃないよな……」
「決闘するまでは6年近く埋まってたのかなぁ」

 三者三様の反応をし、出てきた<ミンゲイドラゴン>を上から見下ろす三人。
 その視線に気付いたのか<ミンゲイドラゴン>は「み?」と声を出しながらその視線に振り向いた。
 治輝はかぶりを振って気を取り直すと、手札から一枚のカードを選び取る。

「……続けるぜ。俺は<調和の宝札>を発動!」

《調和(ちょうわ)の宝札(ほうさつ)/Cards of Consonance》 †

通常魔法
手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨てて発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「<ガードオブ・フレムベル>を捨て、カードを二枚ドローする。そして<死者蘇生>を発動!」

《死者蘇生(ししゃそせい)/Monster Reborn》 †

通常魔法(制限カード)
自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。


「墓地から<ガードオブ・フレムベル>を特殊召喚!」
「低レベルモンスターを二体……何考えてがる?」
「――二体じゃない。俺は手札から<ドラグニティ・ブランディストック>を召喚!」

《ドラグニティ-ブランディストック/Dragunity Brandistock》 †

チューナー(効果モンスター)
星1/風属性/ドラゴン族/攻 600/守 400
このカードがカードの効果によって装備カード扱いとして装備されている場合、 
装備モンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

「――読めたぜ、てめェの作戦!」
 戒斗は最後に治輝が召喚したカードを見ると、口元を大きく釣り上げた。
 狂気を滲ませた笑い顔を浮かばせながら、戒斗は治輝のモンスター達を指差していく。

「<ミンゲイドラゴン>は地!<ガードオブフレムベル>は炎!そして最後に召喚した奴は風ェ!」
「……」
「てめェ属性を揃えて何か企んでやがるな?そしてその条件を必要とするカードは二枚!」

《エレメンタルバースト/Elemental Burst》 †

通常罠
自分フィールド上に存在する風・水・炎・地属性モンスターを
1体ずつ生け贄に捧げて発動する。
相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する。

風林火山(ふうりんかざん)/Fuh-Rin-Ka-Zan》 †

通常罠
風・水・炎・地属性モンスターが全てフィールド上に
表側表示で存在する時に発動する事ができる。
次の効果から1つを選択して適用する。
●相手フィールド上モンスターを全て破壊する。
●相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。
●相手の手札を2枚ランダムに捨てる。
●カードを2枚ドローする。

「確かに発動に成功さえすりゃァ幻魔を倒す事が可能なカードかもしれねェが、てめェのフィールドには欠けてるもんがある!」
 治輝が戒斗が何を言わんとしているが気付いた。
 今治輝の場に存在しているのは地、風、炎の三種類のみ。

「てめェのフィールドには『水』が足りねぇ、潤いがねェその場じゃ、てめェの狙いは果たせねぇ!」
 治輝は「確かにな」と小さく呟いた。
 顔を下に向け、前髪が影を作り、表情が見えなくなる。
「確かに今の俺に、自分の力で水属性を特殊召喚できるカードは、無い」
「図星かよ。ならてめェはここで――」
「だけどな」

 治輝を俯いていた顔を、大きく上に上げた。
 髪が縦に揺れ、その表情が明らかになる。
 いたずらッ子のように生き生きとしている目をして、目の前の<幻魔皇ラビエル>を見据え、言い放った。

「おまえの力を利用すれば、話は別だ!」
 
 治輝がそう高々に宣言した、次の瞬間。
 戒斗の場に、一体のモンスタートークンが出現した。
「……!?」
「おまえの最強の切り札、幻魔皇ラビエル!その効果は確かに強力だ――だが!」
 戒斗の場に出現したトークン。
 それは治輝が手札から<ドラグニティブランディ・ストック>を通常召喚した事で<幻魔皇ラビエル>自身が特殊召喚したモンスターだ。

相手がモンスターを召喚する度に自分フィールド上に「幻魔トークン」
(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を1体特殊召喚する。

「俺は今、ソイツの効果を利用する!<幻魔トークン>の特殊召喚時、手札からドラゴン族を墓地に捨て……」
 治輝が流れるような手の動きで手札のカードを一枚墓地に送ると
 場の地面に一気に霜が張り巡る。
 そのエフェクトからモンスターの正体を察した戒斗は、歯を噛み締め、忌々しそうに治輝を睨み付ける。

「てめェ、まさか……!」
「ご名答!俺は<ドラゴン・アイス>を、墓地から特殊召喚する!」

《ドラゴン・アイス/Dragon Ice》 †

効果モンスター
星5/水属性/ドラゴン族/攻1800/守2200
相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、
自分の手札を1枚捨てる事で、このカードを手札または墓地から特殊召喚する。
「ドラゴン・アイス」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

 悪魔の力を借りる事で、悪魔のような形相をしたドラゴンがフィールドへと君臨する。
 それにより、ついに治輝の場には四つの属性のモンスター達が揃った。

「――てめェ!」
「これが俺の切り札の一つだ。受けてみろ戒斗!」

 治輝の言葉を引き金にして、四体のモンスターから光が伸びていく
 
 <ドラゴンアイス>
 <ガードオブ・フレムベル>
 <ドラグニティ・ブランディストック>
 <ミンゲイドラゴン>

 四体のドラゴンがそれぞれ色の異なる柱を作り、それぞれの柱の光に飲み込まれていく。
 次の瞬間、四つの柱は一つに重なり、巨大な光の奔流を生み出した。
 常軌を逸した現象。最強の破壊効果を持つ、治輝の切り札の一枚。
 そのカードの名前は――

《エレメンタルバースト/Elemental Burst》 †

通常罠
自分フィールド上に存在する風・水・炎・地属性モンスターを
1体ずつ生け贄に捧げて発動する。
相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する。

「エレメンタル――バーストォォォォォ!!」

 治輝の叫びと共に、色の重なり合った光の奔流が戒斗のフィールドを飲み込んでいく。
 それぞれ違った個性を持ったドラゴン達が、最強の闇を従える戒斗の場を包み込んでいく。
 何者にも耐える事のできない、最強の破壊の力。
 それは幻魔と言えども、例え伝説幻神であろうと凌ぐことはできないはずの力。
 
 ――爆発。
 強大な力が戒斗の場を消滅させ、白煙が派手に天空へと舞い上がった。
 視界は見えないが、あの爆発は、確かに戒斗のフィールドを跡形もなく消し去ったはずだ。 

「やったか……!」

 遂に倒した、と。
 治輝は無意識に拳を握り直した。
 白煙が収まり、視界が徐々にクリアになっていく。
 そして、なんとか戒斗の場を見渡せるようになった治輝は
 勝ちを確信し、空笑いの表情を浮かべていた治輝は
 目を、大きく見開いた。

「何度も言わせるんじゃねェよ。同級生」

 戒斗の口元が僅かに見えた。
 ニヤリと笑い、余裕の笑みを浮かべるその表情は、幻魔を召喚した時から変わっていない。
 すなわち、それは

「そんな手で俺と、この幻魔皇を!止められるわけがねェだろうがァァァァ!!」

 戒斗の場を包んでいた白煙が、一気に天空へと吹き飛ばされた。
 それを成したのは、戒斗自身ではない。

 ソレは、強靭な手を前にかざし、光の奔流を耐え切っていたのだ。
 ソレは、その奔流の一部を、自らの力で押さえ込んでいたのだ。

 未だにソレの手の中に残る光の奔流の一部は、必死にソレを破壊しようと輝きを強めている。
 だが

「攻撃力奪うだの、チンケな力を束にした破壊効果だの――そんなモンは俺には通用しねェ」
 
 戒斗が拳を一気に握り締めると、それと連動するように。
 <幻魔皇ラビエル>は手に残っていた輝きを力強く、握り締めた。
 四つの光は四散し、無残にも辺りへと飛び散っていく。
 戒斗は右拳を自らの左頬に軽く当て、治輝を睨み付けながら、言った。

「男ならこっちで来いよ――大将ォ!!」